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NOACのリアル・ワールドにおける消化管出血リスク:BMJ誌

BMJにNOACの出血リスクに関する2つのコホート研究が発表されています。

まず1つ目。
Comparative risk of gastrointestinal bleeding with dabigatran, rivaroxaban, and warfarin: population based cohort study
BMJ 2015; 350 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h1857


目的:ダビガトランとリバーロキサバンのワルファリンと比較したリアルワールドの消化管出血リスクを探索する

デザイン:後ろ向き、プロペンシティースコアマッチ、コホート

セッティング:メディケアデータに基づく大規模データベース

対象:2010年11月〜2013年9月に新たにダビガトランあるいはリバーロキサバンを処方された患者92,816人(ダビガトラン8,578人、リバーロキサバン16,253人、ワルファリン67,985人) 

主要評価項目:プロペンシティースコアマッチ下Cox比例ハザードモデル使用。心房細動、非心房細動別に全消化管出血、上部消化管出血、下部消化管出血をダビガトラン、リバーロキサバン(対ワルファリン)ごとに評価

結果:
1)心房細動患者:
全消化管出血:ダビガトラン2.29 (1.88-2.79)、対ダビガトランPSマッチ後ワルファリン2.87 (2.41-3.41)
全消化管出血:リバーロキサバン2.84 (2.30-3.52)。対リバーロキサバンPSマッチ後ワルファリン3.06 (2.49-3.77)

2)非心房細動患者:
全消化管出血:ダビガトラン4.10 (2.47-6.80)、対ダビガトランPSマッチ後ワルファリン3.71 (2.16-6.40)
全消化管出血:リバーロキサバン1/66 (1.23-2/24)。対リバーロキサバンPSマッチ後ワルファリン1.57 (1/25-1.99)

3)ハザード比:NOACとワルファリンのリスクはほぼ同等
心房細動:ダビガトラン 0.79 (0.61 to 1.03)、リバーロキサバン0.93 (0.69 to 1.25)
非心房細動:ダビガトラン1.14 (0.54 to 2.39) 、リバーロキサバン0.89 (0.60 to 1.32)

4)76歳以上のハザード比:
心房細動:ダビガトラン2.49 (1.61 to 3.83)、リバーロキサバン2.91 (1.65 to 4.81)
非心房細動:リバーロキサバン4.58 (2.40 to 8.72)
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結論:NOACの消化管出血リスクはワルファリンと同等。高齢者、特に75歳超の患者には注意が必要


Risk of gastrointestinal bleeding associated with oral anticoagulants: population based retrospective cohort study
BMJ 2015; 350 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h1585

目的:消化管出血に関しダビガトランとリバーロキサバンのリアルワールドにおける安全性を検討

デザイン:後ろ向きコホート

セッティング:民間保険のデータベース。2010年10月〜2012年3月

対象:ワルファリン、ダビガトランおよびリバーロキサバン処方患者。18歳以上。46,163人(ダビガトラン4907人、リバーロキサバン1649人、ワルファリン39607人)

主要評価項目:消化管出血までの時間、Cox比例ハザードモデルプロペンシティースコアマッチによるハザード比。

結果:
1)ダビガトラン使用者はより高齢:ダビ62.0、リバーロ57.6、ワルファリン57.4歳

2)ダビガトラン使用者は男性に多い:ダビ69%、リバーロ49%、ワルファリン53%

3)(粗)消化管出血(/100人年):ダビ9.01、リバーロ3.41、ワルファリン7.02

4)補正後ハザード比(対ワルファリン):
ダビガトラン1.21 (0.96-1.53)
リバーロキサバン0.98 (0.36-2.69)

結論:この民間保険ベースのデータでは消化管出血リスクはNOACとワルファリンで同等だったが、ダビガトランでワルファリンの50%、リバーロキサバンで2倍上のリスク増加があることを除外できない。

### 結果は微妙に違いますが、オーバーオールではNOACとワルファリンで消化管出血に差はないとの結論です。

試験の概要を概観すると、はじめのコホートはメディケア患者約9万人対象、平均年齢67歳、CHADS2スコア2点以上54% 、PPI服用者22%です。2番めのコホートは民間の保険会社データ約46,000人対象、平均57.6歳、PPI使用19.4%(CHADS2スコア不明)です。

また消化管出血は、どちらもカルテベースでISD-9CMに従っています。

従来の試験をおさらいすると、まずRELYではダビガトラン150mgx2のハザード比は1.48(1.18〜1.85)(110x2は有意差なし)。ROCKET-AFでは1.46でした。

これまでのおおよそのリアルワールドデータはこちらのブログにまとめましたが、ダビガトランでは有意に多いというコホートとそうでないコホートがあります。最近のFDAからのメディケアデータではハザード比1.28で有意に多かったとのことです。

こうしたアウトカムの違いは、対象のプロフィール、消化管出血の定義等によると思われますが、今回の2つの試験の特徴はどちらもかなり年齢層の低いコホートであることかと思われます。

RELYもROCKET-AFも75歳未満のみを見ると消化管出血は同等でした。個人的見解としてはこれまでの試験を総括すると、75歳以上を目安とする高齢者においては、ダビガトラン、リバーロキサバンを処方する場合消化管出血に特に注意を要する、ということだと思います。これまでの報告を見ても、頭蓋内出血は年齢に比例しないが、消化管出血は年齢(厳密には腎機能)に比例することがわかってきています。

では高齢者ならアピキサバン、エドキサバンかというと、結論は上記のような大規模コホートがでてからじっくり考えるべきで、それまではまだワルファリンですね。私の場合。

$$$ 端午の節句ですが、仙台の老舗菓子屋(熊谷屋さん)で鯉のぼりならぬ「サメ」が本日限りで売られているのをツイッターで発見しました。急いで行ったところ行列ができていて、なんとかゲットしました。なんとなく食べるのが惜しいです。
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by dobashinaika | 2015-05-05 19:55 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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