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慢性心不全を再入院させないための多職種包括的疾病管理は有効か?

今回辺りから、ブログのスタイルを症例に基づいたエビデンス検索とその適応について書くという感じにしようと思います。

心房細動に関する論文のブラウジング(ネットサーフィン)は、やはり楽しいので、今までどおり趣味としてやりますが、NOACフィーバーが落ち着きを見せ、最近心房細動関連の論文自体やや少なくなっています。

私が毎朝やっています、前の日の診療中に疑問に感じてメモしたことを、ネット媒体で調べてEvernoteに放り込むという作業をブログ上で行うことにします。

今日は、70台男性、陳旧性心筋梗塞に慢性心不全を合併し、すでに3回、急性増悪のため総合病院に入退院を繰り返している患者さんです(プラバシー保護のため、実際とは改変しています)

β遮断薬、ACE阻害薬など型通りの薬物療法を行っても入退院を繰り返す心不全にたいし、最近クローズアップされている多職種による包括的な心不全疾病管理なら良いのか、具体的にプライマリ・ケア医としてどんな管理をすればよいのかという疑問がわき、調べました。

疑問:入退院を繰り返す慢性心不全患者に対し、多職種による包括的疾病管理は有効か、有効だとしたら何が特に有効か

リソース:
1)DynaMed:"Heart failure structured management and education(心不全の構造的管理と教育)"

オーバービュー
・心不全退院後の疾病特異的な教育とフォローアップは再入院率を減らすが死亡率は減らさない(レベル1)
・包括的退院プランは再入院率を減らし、QOLを改善する(レベル2)
・自己管理:再入院率を減らす(2)。軽症〜中等症心不全は教育単独より自己管理+再入院のほうが再入院を減らす(2)
・ナースべーストの患者管理はエビデンスが一定しない
・多角的(多職種)疾病管理プログラムは死亡率、入院率を減らすかもしれない(2)
・NT-pro BNPガイドの管理+多職種ケアは死亡率、入院率を減らすかもしれない(2)
・薬剤師を交えての多職種ケア(薬剤師の直接ケアなし)は全死亡と入院を減らすかもしれない(2)
・電話による管理は死亡率、入院率を減らすかもしれない(2)
・ナースの訪問看護は再入院を減らすかもしれない(2)

患者教育
・以下の教育は有効(クラスI,エビレベルA:ACCF/AHAガイドライン)
・症状と体重のモニター
・塩分制限
・服薬アドヒアランス
・身体活動の維持
Circulation 2013 Oct 15;128(16):e240 PDF

自己管理
・システマティックレビューでは3〜12ヶ月のフォローで死亡オッズ比0.59(0.44〜0.8)、再入院オッズ比0.44(0.27〜0.710:NNT5-15
BMC Cardiovasc Disord 2006 Nov 2;6:43 full-text


多職種疾病管理プログラム
・再入院高リスク患者に対して勸められる(クラスI,エビレベルB:ACCF/AHAガイドライン)
・ガイドラインに基づく治療の推進
・行動変容を妨げる因子への気遣い
・再入院リスクの除去
Circulation 2013 Oct 15;128(16):e240 PDF

2)循環器病の診断と治療に関するガイドライン:慢性心不全治療ガイドライン(2010 年改訂版)(2015年4月閲覧)

<多職種による包括的疾病管理プログ ラム>

クラスI:多職種による自己管理能力を高めるための教育,相談支援:患者および家族,介護者に対して
・体重測定と増悪症状のモニタリング
・薬物治療の継続および副作用のモニタリング
・禁煙
・症状安定時の適度な運動

クラスII
・ 1 日 7 g 程度のナトリウム制限食
・節酒
・ 感染症予防のためのワクチン接種
・精神症状のモニタリングと専門的治療:抑うつ,不安等に対して
・ 心不全増悪のハイリスク患者への支援と社会資源の活用:独居者,高齢者,認知症合併者等に対して

クラスIII
・大量の飲酒
・ED治療としてのPDE5阻害薬と亜硝酸薬の併用: 重症心不全患者に対して

3)Primary Results of the Patient-Centered Disease Management (PCDM) for Heart Failure Study:A Randomized Clinical Trial
David B. Bekelman et al
JAMA Intern Med. Published online March 30, 2015.


・米国の退役軍人関連4医療施設の392人を対象としたRCT
・患者中心の疾病管理(=ナースコーディネーター、循環器医、薬剤師、プライマリ・ケア医の多職種介入、家庭での遠隔モニタリング、患者自己管理、うつ病のスクリーニングと治療)と通常治療との比較
・アウトカム:患者アンケートスコア、死亡率、入院率、うつ症状スコア
・結果:
・アンケートスコア=有意差なし。
・死亡率、入院率は介入群で少ない4.3%vs.9.6%。
・うつ病患者の改善は介入群で有意に大きい
・1年間の再入院率に差はない
・結論:多面的な心不全疾病管理は、通常管理に比べて患者の健康状態を改善しなかった

### 多職種が介入する患者管理は、心不全では概ね効果があるが、ないとする報告もあります。この違いは介入内容によるものおよびアウトカムの設定にあると思われます。

当院としては、まず今までやっている、毎日の体重、血圧測定とその記録、減塩、禁煙、運動の推奨(パンフ作成)に加え、もう少し多職種で関われないか、例えば、ナースによる待ち時間での教育、薬剤師のアドヒアランスへの介入などを、今後スタッフと検討してみようと思います。

さらに、やはり今後は基幹病院の主治医や看護チームとの連携、退院時カンファ、在宅診療が必要な場合の引き継ぎなどを進めていければと思います。まさに病診巻き込んでの包括的ケアが必要だと、改めて思います。

今回のEBM、行動変容への寄与度としては5段階のうち3くらいです。具体的にどんな介入をしたら良いかが、今ひとつわからなかったから。そういうのは、先進的な施設などの経験知のほうが良いのかも。

$$$ 医院向かいの桜。ほぼ満開となりました。
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by dobashinaika | 2015-04-07 22:41 | 循環器疾患その他 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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