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健診で見つかった上室期外収縮は心房細動の予測因子:EHJ

Prognostic impact of supraventricular premature complexes in community-based health checkups: The Ibaraki Prefectural Health Study
Nobuyuki Murakoshi et al
Eur Heart J. 2015 Jan 14;36(3):170-178.


目的:一般住民に上室期外収縮が見つかった場合の長期予後を明らかにする

方法:
・茨城県の健康診断に参加した63197例:平均年齢58.8歳、女性67.6%、1993〜2008年
・主要エンドポイント:脳卒中死、心血管死、全死亡
・副次エンドポイント:心疾患(自己申告)、心房細動の既往のない例の心房細動新規発症

結果:
1)主要エンドポイント:上室期外収縮あり群(vs.なし群)ハザード比:男1,24(0.98〜1.56)、女1,63 (1.30-2.05)

2)心房細動新規発症:上室期外収縮あり群(vs.なし群)ハザード比:男4.87(3.61〜6.57)、女3.87(2.69-5.57)

3)心房細動新規発症:386人、1.05/1000人年

4)傾向スコアマッチ後:上室期外収縮は心房細動および心血管死リスク増加に明らかに関連あり

結論:12誘導心電図の上室期外収縮は心房細動新規発症の強力な予測因子であり、一般住民での心血管死のリスク増加に関連した。

### 筑波大学の青沼先生の教室からの発信です。オンライン版出来時にもアップしましたが、大切な論文なのでもう一度取り上げます。

上室期外収縮の定義が問題となりますが、あくまで健診の15秒間の心電図で1発でも期外収縮は記録されれば、「上室期外収縮群」となっているようです。

期外収縮群ありの方がなし群より有意に高齢で、高血圧を有する割合が大きく、BMI、総コレステロール値、中性脂肪濃度およびeGFRが低く、喫煙および飲酒者の割合は多かったとのことです。

1枚の心電図で予測できるのかという危惧もありますが、逆に健診の15秒間でさえ記録できるほどの上室期外収縮頻発例が含まれているケースが多いのではと推測されます。

また複数回出現は総死亡には関連なしでしたが、心房細動新規発症に有意に関連していたとのことです。

同様の研究は、心臓血管研究所からも出てきますね。
http://dobashin.exblog.jp/17497124/
デンマークのコホートでは脳梗塞も増加するという結果もあります。
http://dobashin.exblog.jp/10498069/

健診データのため多数のリミテーションはあります。わたしとしては上室期外収縮を見て、他のリスク因子を持ち合わせていれば要注意というふうに理解しています。

$$$本日のモーニングムーンは下弦の月(本当の下弦は明後日)
健診で見つかった上室期外収縮は心房細動の予測因子:EHJ_a0119856_2248329.jpg

by dobashinaika | 2015-02-10 22:50 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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