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共病記(10)〜医者が患者になった時〜:若手医師に教えられたこと

今回の入院では、1ヶ月半近くに渡り診療を休んだことになります。その間は、幸いにも出身大学の教室から若手の先生の代診をお願いすることが出来ました。診療の穴をほとんど開けずにすんだことには、出身教室にどんなに感謝してもしきれません。しかし感謝しなければならないのは診療だけではありませんでした。

今現在、患者さんを診るとき、入院中に若い先生方の書かれたカルテを当然見返すわけですが、非常に多くの発見があります。もちろん当院での診療は初めての医師ばかりですので、戸惑いのあとや慣れない感じは言葉のはしから汲み取れはしますが、お世辞ではなくどの医師もSOAPをベースに大変詳しく的確にカルテを記載しているのです。当院はカルテ記載も全部キーボード入力ですが、若い医師ですのでお手のものとはいえ、私の書く分量より明らかに多くの内容が短時間で記載されています。また、診断推論、検査適応なども私の目から見て、的確だなあと思う記載が多いのです。

何より、患者さんの声やスタッフの反応がとても良好でした。もちろん、先輩医師の医院の応援ですので気を使っていたとは思いますが、それにしても今どきの若手の医師は、もちろん多様ではあろうかと思いますが、臨床能力、接遇態度に私たちベテランが見習うべきものを多く持っているように思います。改めて、自分の出身教室(循環器内科)を誇らしく、また大変頼もしく感じました。

今さら言うべきことでもありませんが医学教育は、私たちの時代と比べてだいぶ系統的になっています。CBTはあるOCSEはあるし、また卒後は、教授や(医療機関に依りはしますが)多くの他の医師からピアレビューを常に受ける環境にあります。

翻って、診療所診療の場合、現在多くのいわゆる「開業医医師」は当院も含めて一人診療=ソロプラクティスです。そこに系統的教育システムがない、ピアレビューのシステムがない、この2点は非常に大きな問題であると今更ながら再認識させてもらった、これが今回若手の先生に診療を応援して頂いて一番感謝したいポイントです。

自分としては、学習することは好きなほうで、毎朝、前日に受診した患者さんのカルテを通覧して疑問に思ったことを医学系サイトや文献で調べEvernoteに貼っつけるという作業をここ数年つづけているのと、夜寝る前にひとつの文献を読んでブログにアップしたりはしています。

しかしいずれも一人で行う孤独な作業なんですね。それを検証したり、批判したりするシステムは持ちあわせません。
現在、特に診療所医師の生涯教育という視点で顧みた場合、多くの開業医は同様の状況下に置かれているものと思われます。医学部を卒業して後期研修を終えるまでの数年は非常に系統的組織的な学習ができていたのが、40代、50代で開業した後の2〜30年に渡る非常に長い期間の生涯学習は、そのように行われているとは言いがたい、というのが現状かと思われます。本来は最も系統的継続的なカリキュラムを考えなければならない年代なのに。。

自己流で学習し、新しい知識は製薬企業等の関わる講演会などから取り入れる・・・もちろん主体的に多人数で学習している医師も多くおられるとは思いますが、こういう状況が多少ならずあるように思います。

PBL (Problem Based Learning=問題解決型学習)という方法論があります。言うまでもなく少人数で患者さんの持つ課題に立脚して自ら学習を進めていく方式です。すでに多くの医学教育に取り入れられていますが、将来的に開業医もPBLをベースにした生涯学習ができないものかと思うのです。例えば、私のクリニックの1日の診療の中でも、シンプルな問題の患者さんもおられますが、ご家族、仕事その他の面も含め非常にコンプレックスな問題を抱えた方も多数来られます。開業医の外来はコンプレックスケースの宝の山と言っても過言ではありません。そうしたケースを一人でしまっておかないで開業医仲間で共有できないものだろうか、と開業当初から考えていました。
そのためにメーリングリストなども作ったり、各種勉強会も行ってきましたが、これまでの講演会形式などで果たして良いのだろうかという危機感が、今回の若手の先生とコラボしたことによって急速に芽生えてきました。

モチベーションを共有できる仲間と、それからチュートリアルが必要ですが、色々画策していきたいと思っています。こういう画策は楽しいですね。

$$$今日の散歩道から
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by dobashinaika | 2015-01-25 22:18 | 医者が患者になった時 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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