健康アスリートの心電図とタイプ2ブルガダ型心電図を鑑別する新しいクライテリア:Europace誌
New electrocardiographic criteria to differentiate the Type-2 Brugada pattern from electrocardiogram of healthy athletes with r′-wave in leads V1/V2
Guillem Serra et al
Europace 1月7日
疑問:健康なアスリートの心電図からType-2 Brugada波形を同定するクライテリアは何か?
方法:
・Brugada症候群でタイプ2Burugada波形を呈する患者50人とV1-2誘導でr'波を認める健康なアスリーと58人の解析
・V1、2誘導のr'波の上行脚と下行脚が作る三角形の特徴に基づくクライテリアを比較
結果
1)「r'波の頂点から0.5mV (5mm)での三角形の底辺の間隔が160ms (4mm)以上」の特異度95.6%、感度85%、陽性的中率94.4%、陰性的中率87.9%
2)「等電位線での三角形の底辺の間隔が60ms (1.5mm)以上」の特異度94.8%、感度94.8%、陽性的中率79.3%、陰性的中率93.5%
3)「等電位線でのr’波の底辺の間隔と等電位線から頂点までの高さの比」の特異度92.1%、感度82%、陽性的中率90.1%、陰性的中率83.3%
結論:3つの新しいクライテリアは健康なアスリートに見られる心電図のr'波とタイプ2Brugada波形を正確に見分ける。r'波の頂点から0.5mVでの三角形の底辺の間隔が、臨床上最も簡便で有用
### まずおさらい。Brugada症候群は突然死を来す疾患として有名ですが、心電図からタイプが1〜3まであります。タイプ1は従来からCobedタイプ(弓状型)と言われるもので、タイプ2と3はSaddle back型(馬鞍型)です。

(wikipediaより)
薬物負荷無しでタイプ1を呈する例は予後が良くないとされ、タイプ2,3は比較的良好と言われています。ただしタイプ2,3でも時間帯や日によってはタイプ1を呈することや、他の疾患(ARVCなど)や健康なアスリートでも認められることから、本当に予後が良いのか、それとも良くないものなのかを見極めることが難しいとされてきました。
今回の心電図のクライテリアは3つありますが、大雑把に言えばV1-2誘導の右脚ブロック波形のうち、r'波(3つの成分の3番目)の幅が広いほうが心電図としては問題があることが示されています。
特に下の図のCのAですが,r'波の頂点から下に5mm下がったところで水平線を引き、r'波の上行脚と下行脚とで三角形を作ってその底辺の長さが4mm以上なら要注意とのことです。これは簡便ですね。

実際の有用性は今後の前向きな研究などで検証されると思われますが、今後一応は計測してみたいと思います。
$$$ 今日は近所の隠れ家で秘密の作戦会議(いえ、次回の健康カフェの打ち合わせ)でした^^。キウイのソルベです。

Guillem Serra et al
Europace 1月7日
疑問:健康なアスリートの心電図からType-2 Brugada波形を同定するクライテリアは何か?
方法:
・Brugada症候群でタイプ2Burugada波形を呈する患者50人とV1-2誘導でr'波を認める健康なアスリーと58人の解析
・V1、2誘導のr'波の上行脚と下行脚が作る三角形の特徴に基づくクライテリアを比較
結果
1)「r'波の頂点から0.5mV (5mm)での三角形の底辺の間隔が160ms (4mm)以上」の特異度95.6%、感度85%、陽性的中率94.4%、陰性的中率87.9%
2)「等電位線での三角形の底辺の間隔が60ms (1.5mm)以上」の特異度94.8%、感度94.8%、陽性的中率79.3%、陰性的中率93.5%
3)「等電位線でのr’波の底辺の間隔と等電位線から頂点までの高さの比」の特異度92.1%、感度82%、陽性的中率90.1%、陰性的中率83.3%
結論:3つの新しいクライテリアは健康なアスリートに見られる心電図のr'波とタイプ2Brugada波形を正確に見分ける。r'波の頂点から0.5mVでの三角形の底辺の間隔が、臨床上最も簡便で有用
### まずおさらい。Brugada症候群は突然死を来す疾患として有名ですが、心電図からタイプが1〜3まであります。タイプ1は従来からCobedタイプ(弓状型)と言われるもので、タイプ2と3はSaddle back型(馬鞍型)です。

(wikipediaより)
薬物負荷無しでタイプ1を呈する例は予後が良くないとされ、タイプ2,3は比較的良好と言われています。ただしタイプ2,3でも時間帯や日によってはタイプ1を呈することや、他の疾患(ARVCなど)や健康なアスリートでも認められることから、本当に予後が良いのか、それとも良くないものなのかを見極めることが難しいとされてきました。
今回の心電図のクライテリアは3つありますが、大雑把に言えばV1-2誘導の右脚ブロック波形のうち、r'波(3つの成分の3番目)の幅が広いほうが心電図としては問題があることが示されています。
特に下の図のCのAですが,r'波の頂点から下に5mm下がったところで水平線を引き、r'波の上行脚と下行脚とで三角形を作ってその底辺の長さが4mm以上なら要注意とのことです。これは簡便ですね。

実際の有用性は今後の前向きな研究などで検証されると思われますが、今後一応は計測してみたいと思います。
$$$ 今日は近所の隠れ家で秘密の作戦会議(いえ、次回の健康カフェの打ち合わせ)でした^^。キウイのソルベです。

by dobashinaika
| 2015-01-08 23:27
| 心臓突然死
|
Comments(0)
土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
S | M | T | W | T | F | S |
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
31 |
筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
カテゴリ
全体インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
Covid-19
未分類
タグ
日本人(44)ケアネット(40)
どばし健康カフェ(35)
高齢者(31)
リバーロキサバン(28)
リアルワールド(28)
新規抗凝固薬(25)
ダビガトラン(24)
ガイドライン(24)
アドヒアランス(23)
ワルファリン(21)
CHA2DS2-VAScスコア(21)
共病記(20)
ESC(19)
カテーテルアブレーション(18)
心不全(18)
認知症(14)
無症候性心房細動(14)
頭蓋内出血(13)
消化管出血(13)
ブログパーツ
ライフログ
著作
プライマリ・ケア医のための心房細動入門 全面改訂版
編集
最近読んだ本
最新の記事
ライフスタイルを重視した新し.. |
at 2023-11-06 21:31 |
入院中に心房細動が初めて記録.. |
at 2023-11-05 11:14 |
フレイル高齢心房細動患者では.. |
at 2023-08-30 22:39 |
左心耳閉鎖術に関するコンセン.. |
at 2023-06-10 07:29 |
患者ー医療者間の「心房細動体.. |
at 2023-04-26 07:27 |
心房細動における認知症の評価.. |
at 2023-04-20 07:29 |
AIによる心房細動の診断と発.. |
at 2023-04-14 07:30 |
心房細動診療の新しい"ABC.. |
at 2023-04-10 05:00 |
心房細動早期発見の現状と課題.. |
at 2023-04-09 10:58 |
高齢者へのDOAC。本当に減.. |
at 2023-03-23 19:12 |
検索
記事ランキング
最新のコメント
血栓の生成過程が理解でき.. |
by 河田 at 10:08 |
コメントありがとうござい.. |
by dobashinaika at 06:41 |
突然のコメント失礼致しま.. |
by シマダ at 21:13 |
小田倉先生、はじめまして.. |
by 出口 智基 at 17:11 |
ワーファリンについてのブ.. |
by さすけ at 23:46 |
いつもブログ拝見しており.. |
by さすらい at 16:25 |
いつもブログ拝見しており.. |
by さすらい at 16:25 |
取り上げていただきありが.. |
by 大塚俊哉 at 09:53 |
> 11さん ありがと.. |
by dobashinaika at 03:12 |
「とつぜんし」が・・・・.. |
by 11 at 07:29 |
以前の記事
2023年 11月2023年 08月
2023年 06月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月