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European Heart Journalの「2014年の心房細動まとめ」

今年最初は、まずEuropean Heart Journalの”The year in cardiology 2014: arrhythmias and device therapy”から”Atiral Fibrillation”の章

<疫学とリスク因子>
#スポーツと心房細動の関係
・スウェーデンの90kmクロスカントリー参加者52,755人の検討では、レース参加回数上位者の心房細動リスクは1.20倍、徐脈リスクは2.10倍。走行タイムとリスクも相関あり。
・低〜中等度の運動は心房細動リスクを低める一方、より上級運動者の心臓リモデリングは徐脈を惹起させる可能性あり
・運動の減少が心房細動を増やすかどうかは未証明
Risk of arrhythmias in 52 755 long-distance cross-country skiers: a cohort study

#ACEI,ARBと心房細動
・GISSI-AF、 ANTIPAFでRAS阻害薬のアップストリーム治療は確定されなかったが、デンマークの登録研究で再び見直されてきている
・マッチングしたリスクのない心房細動において、ACE阻害薬とARBはβ遮断薬、利尿薬に比べて心房細動リスクを減らした。カルシウム拮抗薬とは同等だった。
・このことは、RAS系の抑制、カルシウムチャネルへの介入が心房細動リスク減少と関連があることを示唆し、早期のアップストリーム治療を再認識させるかもしれない
Antihypertensive treatment and risk of atrial fibrillation: a nationwide study

#左房の機能
・ENGAGE AF-TIMI48のサブ解析では、正常洞調律下での左房の機能不全も心房細動リスクに関連があることを示唆している。今後の研究がまたれる
Effective aNticoaGulation with factor x AnGiAFTIMIESI. Left atrial structure and function in atrial fibrillation: ENGAGE AF-TIMI 48.

<脳卒中予防>
#ENGAGE AF
・5つのNOAC関連第3相試験であるENGAGE AFの結果は医療者などの頭を悩ませた
・低用量では心血管イベントや死亡率を減らしたが、虚血性あるいは全脳卒中は増やした(統計的有意ではない)
Edoxaban versus Warfarin in Patients with Atrial Fibrillation

#NOAC関連サブ解析
・RE-ALIGN試験はダビガトランがワルファリンに比べ人工弁患者の血栓塞栓リスク及び出血リスクを増やすことを示した。
Dabigatran versus Warfarin in Patients with Mechanical Heart Valves

・低塞栓、低出血というベストなアウトカムを得るにはダビガトランの(おそらく全てのNOACも)適切は血中濃度があることが示唆された
・このコンセプトは血中濃度をめぐる様々な論議(BMJ誌上)を巻き起こしたが、適切な用量は、年齢、体重、腎機能、薬剤相互作用(EHRAプラクティスガイドラインで記述されているような)といった個別の臨床的因子を考慮して決められるべきということが主要メッセージである。また血中濃度に影響を与える因子(主に腎機能)のフォローが大切である患者ごとに管理されるべきである
The Effect of Dabigatran Plasma Concentrations and Patient Characteristics on the Frequency of Ischemic Stroke and Major Bleeding in Atrial Fibrillation Patients : The RE-LY Trial (Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulation Therapy)

#ヘパリンブリッジ
・NOACの中和薬は急務だが、ARISTOTLE試験では出血は少なく死亡率も低かった。ドイツの大規模レジストリーではリバーロキサバン関連大出血は少なく、ワルファリンと同等またはそれ以下であった。
・一方この研究では手術でのヘパリンブリッジの心血管イベントを減らさず、大出血を著明に増やした。
・NOACにおいては継続か短期の中止が安全と思われる
Peri-interventional management of novel oral anticoagulants in daily care: results from the prospective Dresden NOAC registry.

#待機的除細動
・48時間以上続く心房細動の待機的除細動時における、NOACとVKAの初の比較試験=X-VERT試験
・経食道エコー下で抗凝固薬1〜5日以内の除細動は、リバーロキサバンとVKAでかわりなし(統計的パワー不足)
・リバーロキサバンは除細動までの時間短縮可能
Rivaroxaban vs. vitamin K antagonists for cardioversion in atrial fibrillation

#抗凝固薬ー抗血小板薬併用
・ESCのコンセンサスが出た
・トリプリはできるだけ短縮し、2剤にし、1年後安定狭心症で特にリスク発生ないなら抗凝固単独
・VKAとNACは今のところ同じ扱い
Management of antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients presenting with acute coronary syndrome and/or undergoing percutaneous coronary or valve interventions:

#左房閉鎖術
・新たなコンセンサスステートメントが出た
EHRA/EAPCI expert consensus statement on catheter-based left atrial appendage occlusion.

#心房細動診断
・”より長期の心電図記録はより心房細動を多く見つける”
CRYSTAL AF 試験:植えこみ型記録器で発見率7倍。コストが問題
IMPACT試験:ICD遠隔モニタリングは有用でない
ASSERT試験サブ解析:心房細動の診断例は脳卒中/全身性塞栓症リスクが2.5倍だが、イベント前30日の心房細動エピソード記録は8%のみ


### 当ブログの年間ベストとはやや違いますね^^。こちらはやっぱりアカデミックな論文が多い感じです。
一方、アップし忘れていたものもありました(X〜VERT試験など)。またダビガトランの血中濃度問題は、私の病気の時期と重なってしまい、なかなか検討できなくて昨年はコメントしておりません。でも概ねこのエディターの趣旨に賛同したいと思います(そのうち書きます)。ヘパリンブリッジは、今後やはり少なくなるでしょうね。

$$$ 八幡神社への通リに飾らせていただいた当院の提灯です
European Heart Journalの「2014年の心房細動まとめ」_a0119856_2342894.jpg

そしてきょうはなぜかスリッパのおとしもの^^
European Heart Journalの「2014年の心房細動まとめ」_a0119856_2344865.jpg

by dobashinaika | 2015-01-03 23:07 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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