循環器の全国学会中の心不全、心停止例死亡率は学会期間中以外よりも低い:JAMAIM誌
Mortality and Treatment Patterns Among Patients Hospitalized With Acute Cardiovascular Conditions During Dates of National Cardiology Meetings
Anupam B. Jena et al
JAMA Intern Med. Published online December 22, 2014. doi:10.1001/jamainternmed.2014.6781
重要性:多くの医師が毎年学術会議に出席する。病院医師の人員や構成に影響があると思われるが、学会期間中の患者アウトカムと治療法については知られていない。
目的;(米国の)全国的な学会期間中に急性心疾患で入院した患者の死亡率と治療法を非学会期と比較する
デザイン、セッティング、対象:
・メディケアデータから、急性心筋梗塞、心不全、心停止で2002〜2011年の2つの全国的循環器学会中に入院した患者の30日間死亡率を、非学会期間(学会前後3週間での学会と同じ日数)のと比較する。
・発症数は急性心筋梗塞8570(学会期間82日で8570例、非学会期間492日で57471例)、心不全(学会期間19282例、非学会期間114591例)、心停止
(学会期間1546例、非学会期間9580例)
・教育病院=非教育病院、低リスク=高リスク別に多変量解析
・治療法の違いを解析
介入:循環器学会機関の入院
主要アウトカム:30日間死亡率、手技率、費用、在院日数
結果:
1)患者背景同じ
2)教育病院:心不全、心停止の補正後死亡率は高リスク例では、学会期間中のほうが非学会期間中より低い
心不全:7.5% [95% CI, 13.7%-21.2%] vs 24.8% [95% CI, 22.9%-26.6%]; P < .001 心停止:59.1% [95% CI, 51.4%-66.8%] vs 69.4% [95% CI, 66.2%-72.6%];P = .01)
3)心筋梗塞は同等:39.2% [95% CI, 31.8%-46.6%] vs 38.5% [95% CI, 35.0%-42.0%]; P = .86
4)PCI施行率は学会期間中のほうが少ない:20.8% vs 28.2%; P = .02
5)教育病院での低リスク例、及び非教育病院での低/高リスク例では死亡率、施行率の差はなし
6)感度分析では心死亡率はがん学会、消化器学会、整形外科学会期間においても差はなく、循環器系学会中の消化管出血、骨盤骨折の死亡率も変化なし
結論:教育病院での高リスク患者の心不全あるいは心停止入院患者の30日間死亡率は、循環器学会期間中のほうが、非学会期間中より低かった。教育病院においては学会期間中の心筋梗塞の高リスク患者は、死亡率には差がないが、PCI施行率は非学会期間により少なくなる
###これは驚きというか、面白い論文です。研修医がいるような教育病院では、心不全と心停止の死亡率が学会期間中のほうが低かったという、ある意味想定外の結果です。また心筋梗塞へのPCIの施行率はまあ当然少なくなりはしますが、それでも死亡率に差がなかったというのも、興味深い点です。心臓病になるなら大きな学会期間中に教育病院に入院するのが良い?とまで極論したくなるかもしれません。
理由は何でしょうか。教育病院なので、学会期間中は指導医は学会に行くでしょうからスタッフ的には手薄になると思いがちですが。たしかに教授や部長クラスは期間中べったり行くのかもしれませんが、その下の実働部隊は日替わりで帰ってきたり、また留守番組にも中堅の先生が配されたするかもしれません。
またスタッフが手薄ということで、心不全や心停止回復例のような非侵襲的治療では残された医師が返って一生懸命献身的にやるからなどが推測されますかね。
まあ、後ろ向き研究であり、メディケアのデータですのでリスクの定義、教育病院への入院患者背景の違いなど様々なバイアスは想定されます。
心不全死亡率など7.5%と24.8%とかなり違うのにもびっくりします。症例数の桁が違うとはいえ。
2つの学会はAHAとACCですが、日本最大級の学会である日本循環器学会はどうなのか、ぜひとも知りたいですね。
$$$クリスマスだったんですね。今気が付きました(笑)。ふさわしい写真がないので雪の柿の木でお茶濁し。

Anupam B. Jena et al
JAMA Intern Med. Published online December 22, 2014. doi:10.1001/jamainternmed.2014.6781
重要性:多くの医師が毎年学術会議に出席する。病院医師の人員や構成に影響があると思われるが、学会期間中の患者アウトカムと治療法については知られていない。
目的;(米国の)全国的な学会期間中に急性心疾患で入院した患者の死亡率と治療法を非学会期と比較する
デザイン、セッティング、対象:
・メディケアデータから、急性心筋梗塞、心不全、心停止で2002〜2011年の2つの全国的循環器学会中に入院した患者の30日間死亡率を、非学会期間(学会前後3週間での学会と同じ日数)のと比較する。
・発症数は急性心筋梗塞8570(学会期間82日で8570例、非学会期間492日で57471例)、心不全(学会期間19282例、非学会期間114591例)、心停止
(学会期間1546例、非学会期間9580例)
・教育病院=非教育病院、低リスク=高リスク別に多変量解析
・治療法の違いを解析
介入:循環器学会機関の入院
主要アウトカム:30日間死亡率、手技率、費用、在院日数
結果:
1)患者背景同じ
2)教育病院:心不全、心停止の補正後死亡率は高リスク例では、学会期間中のほうが非学会期間中より低い
心不全:7.5% [95% CI, 13.7%-21.2%] vs 24.8% [95% CI, 22.9%-26.6%]; P < .001 心停止:59.1% [95% CI, 51.4%-66.8%] vs 69.4% [95% CI, 66.2%-72.6%];P = .01)
3)心筋梗塞は同等:39.2% [95% CI, 31.8%-46.6%] vs 38.5% [95% CI, 35.0%-42.0%]; P = .86
4)PCI施行率は学会期間中のほうが少ない:20.8% vs 28.2%; P = .02
5)教育病院での低リスク例、及び非教育病院での低/高リスク例では死亡率、施行率の差はなし
6)感度分析では心死亡率はがん学会、消化器学会、整形外科学会期間においても差はなく、循環器系学会中の消化管出血、骨盤骨折の死亡率も変化なし
結論:教育病院での高リスク患者の心不全あるいは心停止入院患者の30日間死亡率は、循環器学会期間中のほうが、非学会期間中より低かった。教育病院においては学会期間中の心筋梗塞の高リスク患者は、死亡率には差がないが、PCI施行率は非学会期間により少なくなる
###これは驚きというか、面白い論文です。研修医がいるような教育病院では、心不全と心停止の死亡率が学会期間中のほうが低かったという、ある意味想定外の結果です。また心筋梗塞へのPCIの施行率はまあ当然少なくなりはしますが、それでも死亡率に差がなかったというのも、興味深い点です。心臓病になるなら大きな学会期間中に教育病院に入院するのが良い?とまで極論したくなるかもしれません。
理由は何でしょうか。教育病院なので、学会期間中は指導医は学会に行くでしょうからスタッフ的には手薄になると思いがちですが。たしかに教授や部長クラスは期間中べったり行くのかもしれませんが、その下の実働部隊は日替わりで帰ってきたり、また留守番組にも中堅の先生が配されたするかもしれません。
またスタッフが手薄ということで、心不全や心停止回復例のような非侵襲的治療では残された医師が返って一生懸命献身的にやるからなどが推測されますかね。
まあ、後ろ向き研究であり、メディケアのデータですのでリスクの定義、教育病院への入院患者背景の違いなど様々なバイアスは想定されます。
心不全死亡率など7.5%と24.8%とかなり違うのにもびっくりします。症例数の桁が違うとはいえ。
2つの学会はAHAとACCですが、日本最大級の学会である日本循環器学会はどうなのか、ぜひとも知りたいですね。
$$$クリスマスだったんですね。今気が付きました(笑)。ふさわしい写真がないので雪の柿の木でお茶濁し。

by dobashinaika
| 2014-12-24 22:23
| 虚血性心疾患
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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