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日本の代表的心房細動登録研究では未治療時の年間脳梗塞は1.3%と低い:CJ誌

Incidence of Ischemic Stroke in Japanese Patients With Atrial Fibrillation Not Receiving Anticoagulation Therapy.
Suzuki S et al
Circ J. 2014 Dec 11


疑問:日本人の心房細動で抗凝固療法なしの場合の脳梗塞発症率は?

方法:
・Shinken Database (n=1,099), J-RHYTHM Registry (n=1,002), and Fushimi AF Registry (n=1,487) の3登録研究のうち、抗凝固療法を受けていない人の虚血性脳卒中の発症率を検討

結果:
1)全3588例、平均68.1歳、平均追跡1.4年

2)虚血性脳卒中:13.3/1000人年 (10.5-16.8)

3)CHADS2スコア別:5.4(0点), 9.3(1点),24.7(2点以上)

4)CHA2DS2-VAScスコア別:5.3(0点), 5.5 (1点), 18.4 (2点以上)

5)虚血性脳卒中/全身性塞栓症の既往(ハザード比3.25)、75歳以上(2.31)、高血圧(1.69)は虚血性脳卒中の独立した予測因子

結果:CHADS2スコア2点以上以外の日本の非弁膜症性心房細動患者では、虚血性脳卒中の発症率は低い。このプール解析では、虚血性脳卒中/全身性塞栓症、高齢、高血圧が虚血性脳卒中の独立した予測因子

### 日本を代表する3つの心房細動登録研究のプール解析で、極めて貴重なデータです。
3つのコホートは年齢や危険因子が異なっており、年齢はShinkenで68歳、Fushimiは73歳でした。

やはり日本人は虚血性脳卒中リスクが低いのです。
例えばCHA2DS2-VAScスコア1点の65〜74歳の発症率は9.8/1000人年、約1%です。
有名なデンマークのコホート研究では65〜74歳の発症率は2.88%ですのでだいぶ違います。
http://www.bmj.com/content/342/bmj.d124.full

年間1%だと、ワルファリンで70%相対危険が減ってもワルファリンで助かるひとは年間0.7人で、これだと頭蓋内出血とトントンかもしれません。

今回データでの高血圧例の発症率は1.83%、糖尿病例は1.89%ですので、出血リスクが低ければまあまあ抗凝固療法のベネフィットが上回るかくらいですね。

CHADS2スコア別のイベント(虚血性脳卒中)率も出ていて、
0点:0.54%、1点:0.93%、2点1.54%、3点2.66%、4点6.05%、5点3.89%、6点7.24%でした。

CHADS2スコアのもとになったJAMAの元論文では
0点:1.9%、1点:2.8%、2点4.0%、3点5.9%、4点8.5%、5点12.5%、6点18,2%で点数の2倍と覚えろと言われていましたので、これより半分〜2/3以上少ない感じですね。この論文のコホートは2点以上が66%と高リスク集団ではあります。

また糖尿病、女性、心不全、虚血性心疾患、抗血小板薬使用は統計上は独立した予測因子ではありませんでした。

こうした違いが何に由来するのか。以前の論文よりも血圧管理その他の脳梗塞予防治療が行き届いてきている可能性などが推測されますが、検討すべき余地は大いにあると思われます。

もちろんこの3つのコホートはそれぞれ背景がかなり違いますし、抗凝固療法を施行していない患者は、血圧も糖尿病も管理良好な例にほど多いという選択バイアスなど考える必要はあります。

まず利用できるメッセージとしては、あらためてCHADS2スコア2点以上なら抗凝固療法をしっかりすること、1点では高血圧、75歳以上を特に重視すること、ですね。反対に「65歳〜74歳」は、ややゆっくり考えても良いのかもしれません。

まだまだ読み解きがいのあるペーパーです。

$$$ 最近は日の出が6時40分ころなので、ちょうど散歩中に日の出を見られたりします。平日の朝、街なかから登ってくる太陽を見るのはちょっと感動しますよ。
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夜は、雪のページェントでした。
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by dobashinaika | 2014-12-17 23:33 | 抗凝固療法:適応、スコア評価 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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