周術期のヘパリンブリッジにより大出血は増え血栓塞栓症は変わらない:TH誌
Perioperative bridging anticoagulation during dabigatran or warfarin interruption among patients with an elective surgery or procedureSubstudy of the RE-LY trial
J. D. Douketis et al
Thrombosis and Haemostasis 12月4日
疑問:ヘパリンブリッジは、NOACでも有効か?
方法:
・対象:RELY試験参加者のうち待機的手術/手技のために抗凝固薬を一時中断(1回め)した人
・ダビガトラン群、ワルファリン群でヘパリンブリッジした人としない人を比較
・脳卒中/全身性塞栓症、大出血、血栓塞栓症
・評価期間:術前7日間〜術後30日
・Cox regression
結果:
1)ブリッジ施行例:ワルファリン中断時のほうがダビガトラン中断時より多い:27.5% vs. 15.4%; p<0.001
2)ダビガトラン群の大出血:ブリッジ施行例で大出血多い:6.5% vs. 1.8%; p<0.001
3)ダビガトラン群の脳卒中/全身性塞栓症、血栓塞栓症:ブリッジ、非ブリッジで同じ:0.5% vs.0.3%;p=0.46
4)ワルファリン群の大出血:ブリッジ施行例で大出血多い:6.8% vs. 1.6%; p<0.001
5)ワルファリン群の血栓塞栓症;ブリッジ施行例で多い:1.8% vs. 0.3%; p=0.007
6)ワルファリン群の脳卒中/全身性塞栓症:ブリッジ、非ブリッジで同じ:0.5% vs. 0.2%;p=0.32
結論:RE-LY試験では、ダビガトラン、ワルファリンとも周術期のヘパリンブリッジにより大出血が増えた。
### 非常に興味深いデータです。
ヘパリンブリッジのプロトコールは、ダビガトランの場合、低出血リスク手術では24時間前に中止し高出血リスク手術では2〜5日中止(腎機能にもよる)。ワーファリンは主治医任せです。
このデータからは、一言で言えば「ヘパリンブリッジはワルファリンでもダビガトランでも、出血ばかりふやして、脳卒中/全身性塞栓症は予防しない」ということです。
まずもって、周術期に抗凝固薬を中断しても、脳卒中/全身性塞栓症発症リスクは大変低いのですね0.2〜0.3%しかありません。そこにブリッジした場合、むしろイベントが増えるような数字になっていますね(統計的有意差はありません)。
それに対し、ヘパリンブリッジした時の大出血リスクはワルファリン、ダビガトランとも6%台と高率です。
あたかも抗凝固薬をやめるとすぐにも脳塞栓を起こすような印象がありますが、実際は0.2〜0.3%と低値です。それでもインパクトは絶大なので、とにかくヘパリンでつないでという発想になりますが、やっても塞栓症は減らないし、むしろやや増やすかもしれない、それよりも結構出血を増やしてしまう。ということで従来からの治療法に再考を迫る結果になっています。
もちろん無作為割付でないので、ヘパリンブリッジをした例は塞栓症のリスクの高い既往例とかが多く、そういう例では出血リスクも大きいでしょう。また腎機能ほかも偏りがある可能性があります。また大出血の中身が記されていません。肝腎の頭蓋内出血はどうだったのか。
とにかく近頃ヘパリンブリッジは何かと論議を読んでいるところで、この際バッチリRCTして欲しいものです。
RE-LY試験の周術期サブ解析自体は以下
http://dobashin.exblog.jp/15598618/
ヘパリンブリッジへの疑義論文は以下
http://dobashin.exblog.jp/19307831/
$$$ 今日で、大きな病気をしてからちょうど4ヶ月になります。まだ4ヶ月しか経っていないのかという驚きにも似た時間間隔があります。これまでの同じ4ヶ月の何倍もの濃密な時間を経験したように思います。
先日、虹の儚さをつぶやきましたが、これはちょうど2ヶ月前に当院から西の空を見上げた時に見つけた虹です。この虹はいつまでも消えずにずっと残っていました。これまさにブリッジですね。
J. D. Douketis et al
Thrombosis and Haemostasis 12月4日
疑問:ヘパリンブリッジは、NOACでも有効か?
方法:
・対象:RELY試験参加者のうち待機的手術/手技のために抗凝固薬を一時中断(1回め)した人
・ダビガトラン群、ワルファリン群でヘパリンブリッジした人としない人を比較
・脳卒中/全身性塞栓症、大出血、血栓塞栓症
・評価期間:術前7日間〜術後30日
・Cox regression
結果:
1)ブリッジ施行例:ワルファリン中断時のほうがダビガトラン中断時より多い:27.5% vs. 15.4%; p<0.001
2)ダビガトラン群の大出血:ブリッジ施行例で大出血多い:6.5% vs. 1.8%; p<0.001
3)ダビガトラン群の脳卒中/全身性塞栓症、血栓塞栓症:ブリッジ、非ブリッジで同じ:0.5% vs.0.3%;p=0.46
4)ワルファリン群の大出血:ブリッジ施行例で大出血多い:6.8% vs. 1.6%; p<0.001
5)ワルファリン群の血栓塞栓症;ブリッジ施行例で多い:1.8% vs. 0.3%; p=0.007
6)ワルファリン群の脳卒中/全身性塞栓症:ブリッジ、非ブリッジで同じ:0.5% vs. 0.2%;p=0.32
結論:RE-LY試験では、ダビガトラン、ワルファリンとも周術期のヘパリンブリッジにより大出血が増えた。
### 非常に興味深いデータです。
ヘパリンブリッジのプロトコールは、ダビガトランの場合、低出血リスク手術では24時間前に中止し高出血リスク手術では2〜5日中止(腎機能にもよる)。ワーファリンは主治医任せです。
このデータからは、一言で言えば「ヘパリンブリッジはワルファリンでもダビガトランでも、出血ばかりふやして、脳卒中/全身性塞栓症は予防しない」ということです。
まずもって、周術期に抗凝固薬を中断しても、脳卒中/全身性塞栓症発症リスクは大変低いのですね0.2〜0.3%しかありません。そこにブリッジした場合、むしろイベントが増えるような数字になっていますね(統計的有意差はありません)。
それに対し、ヘパリンブリッジした時の大出血リスクはワルファリン、ダビガトランとも6%台と高率です。
あたかも抗凝固薬をやめるとすぐにも脳塞栓を起こすような印象がありますが、実際は0.2〜0.3%と低値です。それでもインパクトは絶大なので、とにかくヘパリンでつないでという発想になりますが、やっても塞栓症は減らないし、むしろやや増やすかもしれない、それよりも結構出血を増やしてしまう。ということで従来からの治療法に再考を迫る結果になっています。
もちろん無作為割付でないので、ヘパリンブリッジをした例は塞栓症のリスクの高い既往例とかが多く、そういう例では出血リスクも大きいでしょう。また腎機能ほかも偏りがある可能性があります。また大出血の中身が記されていません。肝腎の頭蓋内出血はどうだったのか。
とにかく近頃ヘパリンブリッジは何かと論議を読んでいるところで、この際バッチリRCTして欲しいものです。
RE-LY試験の周術期サブ解析自体は以下
http://dobashin.exblog.jp/15598618/
ヘパリンブリッジへの疑義論文は以下
http://dobashin.exblog.jp/19307831/
$$$ 今日で、大きな病気をしてからちょうど4ヶ月になります。まだ4ヶ月しか経っていないのかという驚きにも似た時間間隔があります。これまでの同じ4ヶ月の何倍もの濃密な時間を経験したように思います。
先日、虹の儚さをつぶやきましたが、これはちょうど2ヶ月前に当院から西の空を見上げた時に見つけた虹です。この虹はいつまでも消えずにずっと残っていました。これまさにブリッジですね。
by dobashinaika
| 2014-12-08 22:36
| 抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
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