日本人の至適ワーファリン管理強度はどのくらいか:J-RHYTHMレジストリーから:JC誌
Warfarin anticoagulation intensity in Japanese nonvalvular atrial fibrillation patients: A J-RHYTHM Registry analysis
Takeshi Yamashita et al
J Cardiol (2014), http://dx.doi.org/10.1016/j.jjcc.2014.07.013
疑問:日本人の至適PT-INRレベルはどのくらいか
方法:
・J-RHYTHMレジストリーのワルファリン服用患者
・2年間追跡
・虚血性脳卒中/全身性塞栓症あるいは頭蓋内出血発症時または直近のINRを比較
結果:
1)虚血性脳卒中/全身性塞栓症97例、頭蓋内出血49例
2)虚血性脳卒中/全身性塞栓症とINRの関係は西洋の報告と同じ傾向
3)頭蓋内出血はINR0.5分だけ左に移動(=より0.5低いレベルで出血が少ない)
結論:適正な抗凝固強度を確立するための基本的データ。日本の非弁膜症性心房細動患者の治療域は西洋よりも狭い可能性有り。
### 山下先生の論文。
いちおうログインが必要な論文なのでグラフは出せないのですが、大変興味深い傾向が認められます。
塞栓症の方はINR2.1くらいが最低値です。INR1.8~2.0を1とすると2.0〜2.2のオッズ比が0.383で最低で、次が2.2〜2.4で0.546とこのあたりが最も塞栓が低いことが示されています。1.6〜1.8だとオッズ比1.038でやや増加します。
1.4くらいになると3〜6倍とかなり危険になりますが、2.4以上でも減り続けることはなく、オッズ比1前後かやや高いくらいとなっています。つまりINRが3以上でも2.1くらいよりは塞栓症リスクが減ることはないようです。
一方出血の方はINRが低ければ低いほど頻度が少ないことが示されており、やはり従来言われているようにINRが主に出血のリスクであり、塞栓症のリスク予測としては捉えられないことがわかるかと思います。
塞栓症のほうでは2.0〜2.2くらいが最低のようで、これは年齢によらないという解析ですので、高齢者で1.6〜1.8くらいでよしとしているのは甘いのかもしれません。
また出血はINR2.2くらいから急速に増えますので、ベストは2.0〜2.2くらいということになるでしょう。このデータからは。やはり2.0を目指すことが良いように思えます。
限界は観察研究、年齢、CHADS2スコアなど、プライマリ・ケアセッティングよりやや若く軽症例、追跡2年程度などですね。
写真はいつもの散歩道。赤いアスファルト敷なので赤道と呼ばれています。ちょうど良い歩行者専用道路で散歩の常連の方とよく出会います。
今日の野良猫。野良猫は、家飼いの猫より、みな精悍な顔つきですね。やせているせいもありますが。
Takeshi Yamashita et al
J Cardiol (2014), http://dx.doi.org/10.1016/j.jjcc.2014.07.013
疑問:日本人の至適PT-INRレベルはどのくらいか
方法:
・J-RHYTHMレジストリーのワルファリン服用患者
・2年間追跡
・虚血性脳卒中/全身性塞栓症あるいは頭蓋内出血発症時または直近のINRを比較
結果:
1)虚血性脳卒中/全身性塞栓症97例、頭蓋内出血49例
2)虚血性脳卒中/全身性塞栓症とINRの関係は西洋の報告と同じ傾向
3)頭蓋内出血はINR0.5分だけ左に移動(=より0.5低いレベルで出血が少ない)
結論:適正な抗凝固強度を確立するための基本的データ。日本の非弁膜症性心房細動患者の治療域は西洋よりも狭い可能性有り。
### 山下先生の論文。
いちおうログインが必要な論文なのでグラフは出せないのですが、大変興味深い傾向が認められます。
塞栓症の方はINR2.1くらいが最低値です。INR1.8~2.0を1とすると2.0〜2.2のオッズ比が0.383で最低で、次が2.2〜2.4で0.546とこのあたりが最も塞栓が低いことが示されています。1.6〜1.8だとオッズ比1.038でやや増加します。
1.4くらいになると3〜6倍とかなり危険になりますが、2.4以上でも減り続けることはなく、オッズ比1前後かやや高いくらいとなっています。つまりINRが3以上でも2.1くらいよりは塞栓症リスクが減ることはないようです。
一方出血の方はINRが低ければ低いほど頻度が少ないことが示されており、やはり従来言われているようにINRが主に出血のリスクであり、塞栓症のリスク予測としては捉えられないことがわかるかと思います。
塞栓症のほうでは2.0〜2.2くらいが最低のようで、これは年齢によらないという解析ですので、高齢者で1.6〜1.8くらいでよしとしているのは甘いのかもしれません。
また出血はINR2.2くらいから急速に増えますので、ベストは2.0〜2.2くらいということになるでしょう。このデータからは。やはり2.0を目指すことが良いように思えます。
限界は観察研究、年齢、CHADS2スコアなど、プライマリ・ケアセッティングよりやや若く軽症例、追跡2年程度などですね。
写真はいつもの散歩道。赤いアスファルト敷なので赤道と呼ばれています。ちょうど良い歩行者専用道路で散歩の常連の方とよく出会います。
今日の野良猫。野良猫は、家飼いの猫より、みな精悍な顔つきですね。やせているせいもありますが。
by dobashinaika
| 2014-10-15 21:50
| 抗凝固療法:ワーファリン
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
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