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心臓以外の手術時における心電図や心機能評価に関するガイドライン(米国):Circulation誌

米国の心臓関係の学会(ACC/AHA)から、心臓手術以外の手術時に心臓をどの程度評価すべきかについてのガイドラインが発表されました。

2014 ACC/AHA Guideline on Perioperative Cardiovascular Evaluation and Management of Patients Undergoing Noncardiac Surgery: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines

とかく小さな手術であれ、心電図や場合によっては心エコーなどを施行されることがよくありますが、どこまでが必要なのか迷うこともよくあります。そうした場合の指針として読みたいと思います。
とりあえずエッセンスの表を紹介します。

<前提>
・推奨度:クラスI=「すべき」、クラスIIa=「推奨」、クラスIIb=「考慮してよい」、クラスIII=「利益なし、または害」
・エビレンスレベル:A=多数の対象での評価(多数のRCTまたはメタ解析)、B=限定的な対象での評価(一つのRCTまたは非無作為化試験)、C=非常な対象での評価(専門会の意見、ケーススタディ、標準的ケア)
・「低リスク手術」:心イベントあるいは死亡リスクが1%未満、例として白内障手術、形成術
「上昇リスク=中〜高リスク」:上記リスク1%以上、上記以外の手術

<12誘導心電図>
・既知の冠動脈疾患あるいは器質的心疾患のある人。ただし低リスク手術をのぞく:推奨度 IIa、エビデンスレベルB
・無症候性患者。ただし低リスク手術をのぞく:推奨度 IIb、レベルB
・低リスク手術における常習的な12誘導心電図:推奨度 III(利益なし)、レベルB

<左室機能評価(心エコーなど)>
・原因不明の息切れ。推奨度IIa、レベルC
・悪化する呼吸困難あるいは臨床状態の変化する心不全を有する患者:推奨度IIa、レベルC
・臨床的に安定している患者の再評価:推奨度IIb、レベルC
・常習的な左室機能評価:推奨度III(利益なし)、レベルB

<運動負荷心電図>
・高リスクで心機能のよい患者:推奨度IIa、レベルB
・高リスクで心機能不明患者(管理法が変わる場合):推奨度IIb、レベルB
・高リスクで心機能中〜良:推奨度IIb、レベルB
・高リスクで心機能低下または不明(心筋虚血評価のための画像診断);推奨度IIb、レベルC
・低リスク手術への常習的な運動負荷心電図:推奨度III(利益なし)、レベルB

<心肺負荷試験>
・高リスク患者:推奨度IIb、レベルB

<非侵襲的薬物負荷試験>
・高リスクで低心機能(ドブタミン負荷、心筋シンチ):推奨度Iia、レベルB
・低リスク手術での常習的は薬物負荷:推奨度III(利益なし)、レベルB

<冠動脈造影>
・常習的冠動脈造影:推奨度III(利益なし)、レベルC

### 昨今話題の”Choosing Wisely"に通じるガイドラインですね。特に白内障や皮膚形成術のような低リスク手術では心電図を取らない。画一的に心エコーや運動負荷をしない、ということが一番注目したい点だと思います。

しかしながら日本の現場では、こうした「念のため」あるいは「何かあったときのため」あるいは「昔からやっているから」などなどの理由から、まさに常習的画一的に、手術前に心電図や心エコーなどを施行してるケースは莫大かと思われます。こうした検査を省くことによるコスト減も結構莫大ではないでしょうか。

低リスク手術時に相談をする医師、あるいはそれを受ける開業医も含めたすべての医師に、再考を促すものかと思います。

(サマリーの図がいいのですがPDFのため、後日アップします)
by dobashinaika | 2014-08-25 15:46 | 虚血性心疾患 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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