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アピキサバンの費用対効果のまとめ

ある事情で、このところブログを長期に休んでおりました。
大変申し訳ありません。
休む前に書きかけていた記事を掲載します。
今後とも更新をつづけますので、よろしくお願いいたします。

さて、最近アピキサバンの費用対効果に関する論文を多く見かけますので、ざっとご紹介します。

オランダからの報告
Economic evaluation of apixaban for the prevention of stroke in non-valvular atrial fibrillation in the Netherlands.
PLoS One. 2014; 9(8):e103974. PMID:25093723
Stevanović J et al

・ワルファリンに比べたアピキサバンのICER(増分費用対効果:1QALY延長するために必要な追加費用)は10576ユーロ(=約143,834円)
・ワルファリンに比べてアピキサバンの脳卒中と出血数が少ないことに起因
・多変量感度分析ではアピキサバンの絶対リスクとアピキサバンとビタミンK阻害薬を中止した時のモデル感度が明らかとなっている
・支払い意思閾値を20000ユーロ/QALYとした場合のアピキサバンの蓋然性は68%
・オランダでは、非弁膜症性心房細動患者では、アピキサバンの費用対効果はVKAに変わりうるかもしれない。


日本からの報告
非弁膜症性心房細動患者に対するアピキサバン投与によるイベント費用削減額の推計
医薬ジャーナル 2014年3月号(Vol.50 No.3) P113(993)~123(1003)


・シミュレーションモデル
・日本の急性期のDPCデータで費用を設定
・NVAF患者の生涯にわたる脳卒中発生回数は,1,000人当たり17回(虚血性脳卒中で3回,出血性脳卒中で14回減少),出血性脳卒中以外の出血は72回減少
・これらのイベントの減少により,虚血性脳卒中で100,716円,出血性脳卒中で45,336円,出血性脳卒中以外の出血で47,110円の費用が減少
・NVAF患者1人当たりの全イベントに対する総削減額は195,188円と推計
・わが国のNVAF患者数を約100万人とすると,脳卒中および出血性脳卒中以外の出血の発生回数はそれぞれ17,000回,45,000回減少することとなり,全国的な医療費の削減額は約2,000億円になると推定


その他、以下の論文も公表されています。
http://www.deepdyve.com/lp/springer-journals/estimation-of-the-impact-of-warfarin-s-time-in-therapeutic-range-on-30q2yrDFDX
この新シミュレーションだと、ワルファリン管理がたとえ90%であって、アピキサバンの方が優れるとしています

### 上記のような費用対効果分析は、もちろシミュレーションのデータですので、脳卒中発症時の医療コスト、抗凝固薬を飲んだ人数、等々の変数設定によって結論は変化することは当然頭に入れておかねばなりません。

上記のうち日本の論文がやはり興味深いですが、服用患者の範囲はおそらくARISTOTLEをもとにしているので、CHADS2スコア1点以上の人だろうと思われます。何十万人も飲むと言う試算になるので、実際そうなったら薬価も下がるかもしれないし、また急性期DPCだけのデータなので、慢性期リハのコストまで考えるとワルファリンはもっとかかるのかもしれません。

NOAC薬価はとにかく莫大ですので、直感的には大変なコストになると思われますが、脳卒中を来した場合のの生涯にわたる医療費もこれまだ莫大ですので、それとの差し引きで考えた場合、総じて他のコスパ計算でもペーパー上はNOAC有利との結果が多いようです。

ただ見落とされる視点として、NOAC上梓後日本でも、かなり抗凝固薬の処方数が増加しているとの情報がありますが、このままNOACの処方数がふえつづけたとして、不適切使用等の負の面が全面に出てこないか。またCHADS2スコア0〜1点のようなNOACといえども、ネットクリニカルベネフィットの利幅が少ない層への処方が急増した場合、ほんとにワルファリン(あるいは何もしないこと)よりいいのかは、まだ不明な点かと思います。
さらに、低リスク例で、ワルファリンより脳梗塞、脳卒中ともエビデンス上明らかに優れているNOACとなると限られますし.何よりもとデータはRCTなので、日本の実情とINR低値管理下の実情だとどうなのかも十分考えなければなりません。

他のNOACの医療経済に関する文献はこちら
http://dobashin.exblog.jp/12662617/
by dobashinaika | 2014-08-22 09:48 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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