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日本の現場での心房細動抗凝固薬使用状況とアウトカム:伏見AFレジストリー1年後の結果:CJ誌

Inappropriate Use of Oral Anticoagulants for Patients With Atrial Fibrillation
– 1-Year Outcomes of the Fushimi AF Registry –
Masaharu Akao et al
http://dx.doi.org/10.1253/circj.CJ-14-0344


疑問:日本のコミュニティーにおける抗凝固療法の現状はどうか?

方法:
1)FUSHIMI AF Registry登録患者3282人(伏見区人口283,000人)を1年間追跡
2)アウトカム;抗凝固薬の服用状況、脳卒中、大出血

結果:
1)2,914人追跡:追跡率88.8%

2)抗凝固薬の使用:1546人53.1%:大多数がワルファリン
日本の現場での心房細動抗凝固薬使用状況とアウトカム:伏見AFレジストリー1年後の結果:CJ誌_a0119856_2313985.jpg


3)PT-INRの至適範囲内患者:54.4%(日本のガイドライン基準に基づく)

4)脳卒中;抗凝固薬内服者2.7%vs. 非内服者2.8%:有意差なし

5)虚血性脳卒中:内服者2.1% vs. 非内服者2.0%:有意差なし

6)大出血:内服者1.4% vs. 非内服者1.5% :有意差なし
日本の現場での心房細動抗凝固薬使用状況とアウトカム:伏見AFレジストリー1年後の結果:CJ誌_a0119856_23141352.jpg

結論:FUSHIMI AF Registryは、日本の都市のコミュニティーにおける心房細動管理の現在をユニークに切り取っている。本研究では、心房細動患者に対する抗凝固薬の不適切な使用が明らかになり、ガイドラインとリアルワールドの不一致が示された。

### 国立病院機構京都医療センターの赤尾先生のグループから伏見AFの1年後フォローアップデータが発表されています。既に今年の日本循環器学会で発表され、本ブログでも取り上げさせていただきました。

確認事項ですが、抗凝固療法施行率は登録時は53.1%、1年後は54.6%でした。使用薬剤の50%がワルファリンで、ダビガトランとリバーロキサバンは数%でした。のこり30%程度は抗血小板薬でした。またPT-INRのデータは登録時のワンポイントのものとのことです。

本文をさらに読みますと、CHADS2スコア2点以上の患者では使用率がやや増えますが、それでも3点以上で68%、代わりに0点でも40%弱の人に抗凝固薬が処方されていました。

ワルファリンからNOACへの切り替えは約5%の患者にしか見られず、ダビガトラン開始者の23%が何らかの理由で内服を中止しました。また10%の人がNOACを新規で処方されましたが、やはり新規も大部分はワルファリンでした。なお登録期間は2011年3月〜2012年10月までの患者さんですので、そこから1年ということは、ダビガトラン発売開始直後から、リバーロキサバン発売1年半後までの期間が含まれることになりますね。

さらに、PT-INRはガイドラインで定められた至適範囲にあった患者さんは、70歳未満では26.5%に過ぎず、逸脱者の大半は2.0より低めに管理されていたとのことです。

そして、やはり衝撃的だったのは、この集団内では抗凝固療法をしてもしなくても、脳卒中と大出血の発現率に差がなかったということですね。
ただし、表2でもあるように、実際は抗凝固療法を受けていない層というのは、低年齢で、心不全や脳卒中の既往のない例が多く、より低リスクの患者さんが多く、患者背景は異なっているということはできます。

それにしてもRELY試験ではダビガトラン150mgの脳卒中発症率は年間1,11%(ワルファリンでも1.71%) ですので、それらのいずれよりも伏見の抗凝固療法群は発症率が多いです。一方、大出血はRELYのダビ110では2,71%、ARISTOTOLEのアピキサバンでは2,13%ですから、本研究の1.4%はかなり低いことになります。

個人的に興味深かったのは、表2で抗凝固療法のインセンティブは男性、年齢、心不全、脳卒中の既往、持続性かどうかが関与しており、高血圧、糖尿病は影響していなかったといことですね。こうしたデータなど、現場の感覚が肌で伝わってきます。

70歳未満でもINR1.6~2くらいを目指してワルファリンを出している。高血圧や糖尿病だけの人にはなかなか手を出さない。この論文を読んでいると私自身も確実に持っている、そういうリスク回避の心象が、はっきり浮かび上がります。

スコアマッチングさせての比較だとどうなるのか。NOAC登場で今後この数値がどうなるのか。興味がつきません。
by dobashinaika | 2014-06-27 23:25 | 抗凝固療法:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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