人気ブログランキング |

長時間モニターすると原因不明の脳卒中の何割に心房細動がみつかるのか?:NEJM誌から2論文

NEJM 6月26日号

Atrial Fibrillation in Patients with Cryptogenic Stroke
David J. Gladstone et al
N Engl J Med 2014; 370:2467-2477


疑問:原因不明の脳卒中のうちどのくらいが心原性なのか?

P:55歳以上で心房細動がなく、過去6ヶ月以内の原因不明(ホルター心電図後も)の脳卒中/TIA患者

E:30日間のイベントレコーダー(介入群)

C:従来のホルター心電図(対照群)

O:一次エンドポイント:新たな心房細動の同定(30秒以上、登録90日以内)、二次エンドポイント:2.5分以上の心房細動と90日後における抗凝固療法

結果:
1)30秒以上の心房細動;介入群16.1%(45/280)vs. 対照群3.2%:絶対リスク差12.9%;P<0.001、NNS(number neeeded to screen)=8
2)2.5分以上の心房細動;介入群9.9%(28/280)vs. 対照群2.5%:絶対リスク差7.4%;P<0.001
3)90日までに抗凝固薬を処方された例;介入群18.6%(52/280)vs. 対照群11.1%:絶対リスク差7.5%;P=0.01
a0119856_1857174.png


結論;55歳以上の原因不明の脳卒中においては、発作性心房細動は普通。30日間の非侵襲的なホルター心電図は、通常の24時間ホルター心電図に比べ5倍の心房細動を同定死、抗凝固薬処方を2倍増やした。

### 今週号のNEJMは、昨日の当ブログに呼応するかのように心房細動の診断に関するペーパーが2題掲載されています。

まずはEMBRASE試験から
30日間イベント・モニターはBraemar社のER910AF Cardiac Event Monitorという1チャネルモニターを使用していますね。上半身2ヶ所に電極を装着して、RR間隔が不整の時をセンスして、遠隔転送されるシステムのようです。こちらを参照ください。
http://www.davismedical.com/Braemar-ER910-Cardiac-Event-Monitor---1-Channel634745048942864134

これを使うと、従来の24時間ホルターよりも5倍の16%の頻度で心房細動が見つかるとのことです。
この研究の臨床的意義は大変大きいです。なぜなら脳卒中語の抗血栓療法は通常なら抗血小板薬ですが、心原性脳梗塞であれば抗凝固薬でないと再発は防ぎきれないからです。ということで、特に心原性脳塞栓を疑わせるような、急発症で比較的大梗塞の場合は、何が何でも心房細動を同定したいところだと思います。

実際には、臨床的に心原性脳塞栓を疑わせれば心房細動の記録がなくても抗凝固薬が処方されるケースも多いと思いますが、しっかりと証拠があるに越したことはありません。

デバイスが簡便であれば、これから実用化されるものと期待されます。ただし正確な心房細動の持続時間までは検討していませんし、30分秒以上が1回でも記録されれば、試験はそこで終了と思われますので、そこはlimitationかと思われます。

もう一つのCRYSTAL AF試験の方は、メドトロニック社の植込み型モニターを皮膚の下に植えこんで記録するというものです。これは心房細動の記録はほぼ完璧かと思われます。これを12ヶ月植えこんで30秒以上の心房細動を同定するというものです。
http://www.medtronicdiagnostics.com/us/cardiac-monitors/Reveal-XT-ICM-Device/index.htm
a0119856_18581992.png


こちらは6ヶ月までで植え込み群は8.9%(対照群1.4%)、12ヶ月までで植込群12,4%(対照群2.0%)に心房細動が見つかっています。対象は40歳以上の90日以内に生じた原因不明の脳卒中/TIA症例です。

両試験とも対照群を置いたところが、これまで研究とは格段の信頼性があるわけですが、両者の発見率の違いが気になりますね。
Editorialでは、年齢の違いに由来するのではと言っています。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe1405046

ただし、侵襲性やコストの面から、実際には植込み型モニターは普及しないだろうと思います。
また、Editorialによれば、CRYSTAL AFの方で3年まで見た場合の同定率でも3割位とのことですから、原因不明の脳卒中は、体の中にモニターを植えこんでさえ多くの人で原因がわからないことになります。
もっと別なマーカーが必要のように思われます。

もうひとつ,この2論文を読んで再考が必要と思うのは、カテーテルアブレーション後のフォローアップです。実は24時間心電図だけでは全然甘いのではないかと思わせられます。

これまでの脳卒中後の心房細動同定に関するシステマチックレビューはこちら
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24385275?dopt=Abstract

無症候性心房細動のスクリーニングデバイスの総説はこちら
http://dobashin.exblog.jp/14712190/

植え込み型モニターの論文
http://dobashin.exblog.jp/14712190/
by dobashinaika | 2014-06-26 18:59 | 心房細動:診断 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

カテゴリ

全体
インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
未分類

タグ

(40)
(35)
(35)
(27)
(27)
(26)
(25)
(24)
(21)
(20)
(20)
(19)
(18)
(16)
(14)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)

ブログパーツ

ライフログ

著作

もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌]

最近読んだ本

ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

最新の記事

【Apple Heart S..
at 2019-11-26 07:35
心房細動合併透析患者において..
at 2019-11-21 06:49
日本の心房細動患者の死因の半..
at 2019-11-11 07:22
CHA2DS2-VAScスコ..
at 2019-10-30 17:36
中高年開業医におけるヤブ化防..
at 2019-10-18 07:27
日経メディカルオンライン:第..
at 2019-10-15 06:26
新規発症心房細動では服薬アド..
at 2019-10-06 10:47
心房細動診断においてスマホに..
at 2019-09-19 06:30
第17回どばし健康カフェ「心..
at 2019-09-05 08:51
強い症状のない血行動態の安定..
at 2019-09-04 06:36

検索

記事ランキング

最新のコメント

いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
取り上げていただきありが..
by 大塚俊哉 at 09:53
> 11さん ありがと..
by dobashinaika at 03:12
「とつぜんし」が・・・・..
by 11 at 07:29
> 山川玲子さん 山川..
by dobashinaika at 23:14
運慶展を観た方にWEB小..
by omachi at 19:45
> terryさん ご..
by dobashinaika at 08:38
簡潔なまとめ、有り難うご..
by 櫻井啓一郎 at 23:16
いつも大変勉強になります..
by n kagiyama at 14:39

以前の記事

2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月

ブログジャンル

健康・医療
病気・闘病

画像一覧

ファン