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アピキサバンは、年齢にかかわらずワルファリンより有効性安全性とも優れる:EHJ誌

EHJ 2月20日付オンライン版より

Efficacy and safety of apixaban compared with warfarin according to age for stroke prevention in atrial fibrillation: observations from the ARISTOTLE trial
doi: 10.1093/eurheartj/ehu046


【疑問】年齢別に見たアピキサバンの対ワルファリンの有効性と安全性はどうか?

【方法】
・ARISTOTLE試験参加者18201名対象
・3群比較:65歳未満(30%)、65〜74歳(39%)、75歳以上(31%)

【結果】
1)脳卒中、全死亡、大出血は高齢者群で高い(P<0.001,対全体)

2)脳卒中減少効果、予後改善効果:全年齢層でアピキサバンはワルファリンより効果あり

3)大出血、全出血、頭蓋内出血:全年齢層でアピキサバンはワルファリンより少ない

4)2,3)の交互作用:P>0.11、対全体

5)この結果は80歳以上(全体の13%)でも同様
アピキサバンは、年齢にかかわらずワルファリンより有効性安全性とも優れる:EHJ誌_a0119856_0274699.gif


【結論】アピキサバンの対ワルファリンベネフィットは年齢にかかわらず同様。高齢者層では高リスクのため、アピキサバンの絶対的ベネフィットがより高くなる。

### 確認事項ですが、ARISTOTOLEでは80歳以上、体重60kg以下、血清クレアチニン1.5以上の3要件のうち2つ以上を満たすと低用量の2.5mgを選択するプロトコールとなっていて、2.5mgは831人に投与され、75歳以上の群の13.9%、80歳以上では31%が低用量投与だったとのことです。

高齢者群で出血が少ない理由のひとつとして考えられるかもしれません。

考察で述べられていますが、ダビガトランの場合は大出血に関しては75歳以上と未満とで交互作用あり、つまり高齢者での安全性はワルファリンと有意差なしでした。
http://circ.ahajournals.org/content/123/21/2363.abstract?ijkey=cdc7c234b742ae3d845555ead5adee32294ad7f3&keytype2=tf_ipsecsha

一方リバーロキサバンはアピキサバンと同様交互作用なしで、年齢にかかわらず安全性はワルファリンを上回っていました。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1009638

ダビと、リバーロ、アピとの違いはやはり腎排泄の要素があるのだろうと思われます。

その意味ではアピキサバンは高齢者に使いやすいということがこの論文からある程度読み取れます。ただし80歳以上は全体の13%で少数ですので、この層では、たとえアピキサバンであっても明確な優位性があるかどうかはもっと症例を積み重ねる必要はあると思われます。

蛇足ですが、このようにサブグループの差を複数の研究間で比較することは間接比較をするのと同じであり、高いリスクを伴うことがJAMAユーザーズガイドでも諭されています。

上記の結果をもって、75歳以上のサブグループではダビガトランより他の2剤のほうが安全であるということには注意が必要と思われます。
これを証明するには、75歳以上の人のみを対象としてNOAC3剤の無作為割付試験をしなればなりません(可能かどうかは別として)。

最近NOAC3剤の使い分け、比較に関する関心が高くよく聞かれるのですが、私は、基本的には3剤(4剤?)のエビデンスとしての優劣を論じることは各のhead-to-head比較試験が存在しない以上不可能と考えます。ですので、使い分けはあくまで薬理作用や患者の好みも十分加味して考える。サブ解析の優劣はあくまで参考程度と考えることにしています。
by dobashinaika | 2014-02-22 00:28 | 抗凝固療法:アピキサバン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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