「その医者ごと」から「そのひとごと」の管理・治療へ:EHRAの心房細動治療 に関するコンセンサス
Europace 11月号より
Personalized management of atrial fibrillation: Proceedings from the fourth Atrial Fibrillation competence NETwork/European Heart Rhythm Association consensus conference
Europace (2013) 15 (11): 1540-1556.
ヨーロッパ不整脈学会(EHRA)から心房細動に関するコンセンサスカンファランスの議事録がでています。
これがすごくまとまっていて、近年の心房細動診療をどう捉えたらよいかという基本コンセプトが一網打尽でわかるような素晴らしい内容になっています。
基本思想は”Personalized management"。つまり「そのひとごとの管理」「個別的管理」ということです。
パーソナライズというのは、ネット世界では、アマゾンのように、その人の属性や履歴に応じてサービスを提供することを指すようです(以下参照)が、
http://e-words.jp/w/E38391E383BCE382BDE3838AE383A9E382A4E382BA.html
こと医療の世界では、そんなこと当たり前といえば当たり前なわけで、「そのひとごと」にしか医療というのはできないに決まっているわけです。
そこをあえて”Personalized”と掲げるのは、例えば20年前に比べて心房細動患者さんの評価法が格段に進歩して、より詳細で個別的な情報収集と対応ができるようになったためと思われます。何と言っても、少し前まではどんな人にワーファリンを処方したらよいか、どこまでリズム治療を引っ張ればよいか、手探り状態だったと行っても良い状況でしたから。で、結局は「その医者ごと」に治療が決まっていたように思います。
まずイントロで、こうした「個別化」に役立つ5つのドメインとし
1)臨床症状とリスク因子
2)道具としての心電図
3)脳イメージング
4)心臓イメージング
5)バイオマーカ
が挙げられています。

で、「臨床症状とリスク因子」における現代的アプローチ法として以下の様な心房細動患者のステップワイズ意思決定の概念が提唱されています。すなわち
1)緊急性を要する状態か?:緊急除細動Yes/No
2)初期評価:治療を規定するような背景因子
3)脳卒中リスク、抗凝固療法:抗凝固療法の決定、禁忌の評価、薬剤選択(患者の好み、治療計画、腎機能など)
4)レートコントロール:レートコントロール必要性の評価、適切な薬剤選択
5)リズムコントロール:リズムコントロールの決定、戦略(症状)、初期治療の選択(心臓専門医)

心房細動診療のコンセプトとしてスッキリしてわかりやすいストリームですね。
各論はまた別にアップするとして、最後のサマリーに各種モダリティーを用いての「そのひとごとの」心房細動管理モデルがシェーマ化されています。ゲノムから症状、合併心疾患、全身性因子、に至るまでを多角的に評価し管理せよということですねー。

この考え方は納得なのですが、私としましては、この矢印の中に"Patient preference"とか”Patient narative”なども入れて欲しいし、引いては”Patient's family""Patient's work environment"なども考慮したいところですが。。。
まあ今回のコンセンサス(というかこうした専門家集団のコンセンサスというの)は、あくまで病態生理&エビデンスからみた「そのひとごと」というコンセプトだと思われますので、そこは場違いかもしれませんが。
最後に、心房細動の臨床分類が以下のように提示されています。
特徴的心房細動
・単一遺伝子心房細動:チャネル異常を含む遺伝的心筋症に合併したもの
・巣状誘発性心房細動:反復性のショートランや頻発制で短時間の発作性心房細動。症状強く若年者に多い
・術後心房細動:
複雑型心房細動
・弁膜症性心房細動
・高齢者の心房細動:80歳以上
・多源性心房細動:早期から発症する遺伝子変異によるもの
・分類不能心房細動
主に病態生理に基づいたものですが、新しい分類法ですね。
これから各論も読み込みたいと思います。
Personalized management of atrial fibrillation: Proceedings from the fourth Atrial Fibrillation competence NETwork/European Heart Rhythm Association consensus conference
Europace (2013) 15 (11): 1540-1556.
ヨーロッパ不整脈学会(EHRA)から心房細動に関するコンセンサスカンファランスの議事録がでています。
これがすごくまとまっていて、近年の心房細動診療をどう捉えたらよいかという基本コンセプトが一網打尽でわかるような素晴らしい内容になっています。
基本思想は”Personalized management"。つまり「そのひとごとの管理」「個別的管理」ということです。
パーソナライズというのは、ネット世界では、アマゾンのように、その人の属性や履歴に応じてサービスを提供することを指すようです(以下参照)が、
http://e-words.jp/w/E38391E383BCE382BDE3838AE383A9E382A4E382BA.html
こと医療の世界では、そんなこと当たり前といえば当たり前なわけで、「そのひとごと」にしか医療というのはできないに決まっているわけです。
そこをあえて”Personalized”と掲げるのは、例えば20年前に比べて心房細動患者さんの評価法が格段に進歩して、より詳細で個別的な情報収集と対応ができるようになったためと思われます。何と言っても、少し前まではどんな人にワーファリンを処方したらよいか、どこまでリズム治療を引っ張ればよいか、手探り状態だったと行っても良い状況でしたから。で、結局は「その医者ごと」に治療が決まっていたように思います。
まずイントロで、こうした「個別化」に役立つ5つのドメインとし
1)臨床症状とリスク因子
2)道具としての心電図
3)脳イメージング
4)心臓イメージング
5)バイオマーカ
が挙げられています。

で、「臨床症状とリスク因子」における現代的アプローチ法として以下の様な心房細動患者のステップワイズ意思決定の概念が提唱されています。すなわち
1)緊急性を要する状態か?:緊急除細動Yes/No
2)初期評価:治療を規定するような背景因子
3)脳卒中リスク、抗凝固療法:抗凝固療法の決定、禁忌の評価、薬剤選択(患者の好み、治療計画、腎機能など)
4)レートコントロール:レートコントロール必要性の評価、適切な薬剤選択
5)リズムコントロール:リズムコントロールの決定、戦略(症状)、初期治療の選択(心臓専門医)

心房細動診療のコンセプトとしてスッキリしてわかりやすいストリームですね。
各論はまた別にアップするとして、最後のサマリーに各種モダリティーを用いての「そのひとごとの」心房細動管理モデルがシェーマ化されています。ゲノムから症状、合併心疾患、全身性因子、に至るまでを多角的に評価し管理せよということですねー。

この考え方は納得なのですが、私としましては、この矢印の中に"Patient preference"とか”Patient narative”なども入れて欲しいし、引いては”Patient's family""Patient's work environment"なども考慮したいところですが。。。
まあ今回のコンセンサス(というかこうした専門家集団のコンセンサスというの)は、あくまで病態生理&エビデンスからみた「そのひとごと」というコンセプトだと思われますので、そこは場違いかもしれませんが。
最後に、心房細動の臨床分類が以下のように提示されています。
特徴的心房細動
・単一遺伝子心房細動:チャネル異常を含む遺伝的心筋症に合併したもの
・巣状誘発性心房細動:反復性のショートランや頻発制で短時間の発作性心房細動。症状強く若年者に多い
・術後心房細動:
複雑型心房細動
・弁膜症性心房細動
・高齢者の心房細動:80歳以上
・多源性心房細動:早期から発症する遺伝子変異によるもの
・分類不能心房細動
主に病態生理に基づいたものですが、新しい分類法ですね。
これから各論も読み込みたいと思います。
by dobashinaika
| 2013-11-15 23:19
| 心房細動診療:根本原理
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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