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心房細動は心筋梗塞のリスク因子である:JAMA Internal Medicineより

JAMA internal Medicine 11月4日付オンライン版より

Atrial Fibrillation and the Risk of Myocardial Infarction
doi:10.1001/jamainternmed.2013.11912


【疑問】心房細動は心筋梗塞のリスク因子なのか?

P:米国の冠動脈疾患のない一般住民23928人のコホート:REGARDSコホートへの2003〜2007年の登録患者:2009年12月まで追跡

E/C:心房細動の有無

O:心筋梗塞イベント(専門家診断)

【結果】
1)心筋梗塞:648イベント:6.9年以上追跡(平均4.5年)

2)心房細動患者は心房細動なしの人の2倍の心筋梗塞発症率:ハザード比1.96 [95% CI, 1.52-2.52]
心房細動は心筋梗塞のリスク因子である:JAMA Internal Medicineより_a0119856_22472987.png


3)各種因子で補正後ハザード比.1.70(総コレステロール、HDLコレステロール、喫煙、収縮期血圧、降圧薬、BMI、糖尿病、ワルファリン使用、アスピリン使用、スタチン使用、脳卒中、血管疾患の既往、eGFR、アルブミンクレアチニン比、CRP)

4)この傾向は女性(ハザード比2.16)で男性(1.39)より高い

5)黒人(2.53)は白人(1.26)より高い
心房細動は心筋梗塞のリスク因子である:JAMA Internal Medicineより_a0119856_22475936.png

6)若年者(75歳未満)と高齢者(75歳以上)では差なし

【結論】心房細動は心筋梗塞発症の独立危険因子である。特に女性と黒人で顕著。この知見は公共健康にとっての脅威としての心房細動をより深く考えされるものである。これまでよく知られている脳卒中のリスク因子に加え、心房細動は心筋梗塞のリスク因子でもある。

### 大規模コホートで心房細動と心筋梗塞の関係を明らかにした最初の研究と思われます。その意味では大変重要な論文と言えます。

心房細動が心筋梗塞のリスクであり、心筋梗塞も心房細動のリスクとなる。このような「双方向性の関係」は、ほかにも心房細動ーCKD、心房細動ー心不全等が挙げられます。

どうして心房細動が心筋梗塞のリスク因子になるのか。著者らの説明としては
1)双方向性の関係は、両者共通のリスク因子を共有する、もしくは似たような病態生理を有する
2)心房細動により炎症性あるいは催血栓性が高まるため
3)冠動脈塞栓
4)頻拍誘発性の心筋虚血
が挙げられています。

これを受けて、Editorialでは”AF begets AF"になぞり、"AF begets MI"つまり「心房細動が心筋梗塞を招来する」と名づけています。
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1764004

一番の限界点は、ワルファリン使用です。心房細動患者はワルファリンを使用していますが、ワルファリンは心筋梗塞も予防します。Editorのメタ解析によるとワルファリンは心筋梗塞25%減らすとされています。一応ワルファリン使用も補正因子に入っており、補正されていますが、ワルファリン使用の程度までは考慮されていません。ただ、これは心房細動の心筋梗塞リスクを過小評価するものですので、これがなければもっとリスクが大きくなる可能性があるかもしれません。
心房細動は心筋梗塞のリスク因子である:JAMA Internal Medicineより_a0119856_22463213.png


黒人が多いとのことですが、日本人はどうでしょうか?あまり心筋梗塞が多い印象は受けません。やはりワルファリンを飲んでいるからか、人種の違いか。
by dobashinaika | 2013-11-06 22:50 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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