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心房細動のfinal common pathwayとしての左心耳を消滅させるという発想:左心耳切除術の講演を聴く

17日(木)は、私が世話人をしております「心房細動を考える会」の第11回"Meet the expert"を仙台市内で開催させていただきました。

講師はかねてからこのブログでも取り上げさせていただいております、都立多摩総合医療センター心房血管外科の大塚俊哉先生です。
大塚先生は非弁膜症性心房細動に対する低侵襲完全内視鏡下手術(WOLF−OHTSUKA法)を開発され、既に200例以上の症例を経験され非常に良好な成績を収められています。
その概要は、ことしのJACCに掲載されていますので、以下を参照下さい。
http://dobashin.exblog.jp/17381555/

講演で特に印象に残ったポイントを挙げさせていただきます。
・完全内視鏡下左心耳切除術(のみ)と、完全内視鏡下アブレーション兼用左心耳切除術の2方法がある
・術前のチームワークスクリーニングが重要:糖尿病の有無、左心耳血栓、器質化血栓の評価
・特に糖尿病の管理不良例は心内膜の障害も強くCHADS2スコア1点と一律に扱えないのでは?
・左心耳血栓を認めたときは抗凝固療法を強化し消失するまで待つ
・左心耳の形状はCTで4タイプに分ける論文もあるが実際には4つに分類できない
・経食道エコー下で切り残しなく切除する
・切り取った左心耳はしばらく細動が続いてて、ピクピク動いている!
・左心耳切除のみの平均手術時間38分
・術後MRIでの小塞栓は今のところ認めていない
・術後ANPは25%程度減少する。ANPが左心耳からだけ産生されているのかは不明
・左心耳切除で貧血が改善する
・抗凝固療法への不安の解消、普段の活動性の改善などQOLの明らかな改善が見られる
・Ganglion plexusアブレーションはrenervationしてしまうので無効との意見もあるが、renervationの仕方が違うのかもしれない

安全性、有効性とも非常に魅力的な成績であり、今後ランダム化試験などでより確立されたものになることが期待されます。

その後参加者を交えての情報交換会になりましたが、心房細動談義は尽きず非常に楽しいディスカッションをさせていただきました。

私が特に、面白いと感じたのは、とにかく「左心耳を体内からなくしてしまう」という発想です。
左心耳は神様の残したいたづら(いやげ物)と以前書きましたが、ANP産生機能などの可能性はありますが、基本的に左心耳は心原性脳塞栓の発生部位として人間にとって非常に厄介なものです。
http://dobashin.exblog.jp/14704894/

これまた最近、心房細動は複雑系と最近のブログに書きましたが、原因は複雑カオス的ではあっても、血栓が生成される場所は「左心耳」しかありません。上流はいろいろごちゃごちゃあるけれど”final common pathwayは一箇所です。そこを消滅させてしまう治療法というのは、究極でないか、そう思えてきます。
http://dobashin.exblog.jp/18723912/

これも最近のブログからですが、古川哲史先生は、動物が海から陸に上がって肺呼吸をはじめた時から心房細動の発生は約束されていた、と述べています。
そもそも生物として心臓がまず必要で、脊椎動物が陸に上がった時点で肺ができ、同時に肺と心臓とを結ぶ血管系が必要になった。血管は細く、心臓(心房)は大きいため形態学的なミスマッチやストレッチが生じ肺静脈の接合部付近に電気的解剖学的なストレスが生じた、これが心房細動のそもそもの誕生秘話?かもしれません。
http://dobashin.exblog.jp/pg/blog_view.asp?srl=18723912&nid=dobashin

ここから考えると、要するに「心房がなくなれば心房細動」は起きないという考えが生じてきます。肺静脈とミスマッチを起こす心房がなければ心房細動も起きない。至極乱暴な発想ですが、原理的にはそういうこともできます。しかし、心臓のポンプ機能上全部なくすことはできない。そこで左心耳のみを取ってしまうことが改めて有効性を帯びてくる。そんなふうにも考えられます。

Final common pathwayとしての左心耳の切除、、、よりエビデンスが整い、普及することが期待されます。
by dobashinaika | 2013-10-20 15:41 | 心房細動:左心耳デバイス | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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