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新規抗凝固薬をどう使い分けるか:エビデンスはコンビニエンス、プリファランスを上回れるか?

BIO Clinica 10月号特集「新規抗凝固薬」に”新規抗凝固薬をどう使い分けるか-循環器実地医家の立場から-”と題する拙文を掲載させていただきました。
東北大学加齢医学研究所の堀内久徳先生からご推薦です。

http://hokuryukan-ns.co.jp/magazines/archives/2013/09/bio_clinica2013_11.html

新規抗凝固薬の使い分けについては、業界では最も注目を集める話題ではあろうかと思いますが、個人的にはそれほど大きな問題ではないと考えています。現時点では、当院では未だにワルファリンを服用している患者さんが半数以上おられますし。

巷では、新規抗凝固薬第1選択で「ワルファリンは人工弁などに限定」のような雰囲気が醸成される気配ですが、”ワルファリンか新規抗凝固薬か”のほうが、現時点ではまだまだ大きな問題だろうと思われます。その意味で後藤信哉先生の言説はいつもながら興味深く拝読させていただきました。NOACでなくDirect oral AntiCoagulant:DOACという言葉を提示されつつこれらの略語を使うことを戒めておられます。

新規抗凝固薬の使い分けを問われれば、毎度のことながら、この意思決定のフレームワークで考えます。
a0119856_23443772.jpg


すなわち薬剤特性(禁忌)を大前提として考え、その後エビデンス、患者の好み、医師の専門性の3要素のどれをどのように優先させるかを患者とともに考えていくという姿勢です。

そして私の新規抗凝固薬使い分けの各論的スタンスは以下です。
1)まず薬剤特性の前提として腎機能を真っ先に考える。CCr30以上に用いる。(使い慣れていない医師は50以上から)

2)医師としては、クリニカルエビデンスをやはり第一に考えたい。なぜなら予防医学であり、先人のデータを未来予測につなげて考えられるのは、まず第一に医師であるから。特にサロゲートマーカーのない新規抗凝固薬を使う場合は頼りはエビデンスしか存在しない。

3)しかしながらエビデンス、とくに3剤比較のエビデンスは希薄。直接比較が存在せず。間接比較は媒介となるワルファリン群の背景やINR管理状況が大きく異なっており、解釈が難しい

4)その上で、3剤各試験の有効性、安全性の評価を、ワルファリン群との相対比較及び絶対比較で考える。

5)出血リスク、腎機能などをキーワードに細かな使い分けを考える

6)おおまかに出血リスクの低いひとはダビ150、高いひとはダビ110かアピ、CCr30~50はアピが考えられる。

7)医者の使用経験やモニタリングを重視するならダビを考える

8)上記のように考えて患者に勧めるが、1日1回のメリットが強い患者、例えば飲み忘れやすいひとや、そのほうが飲みやすいと希望する人にそれを覆してまで推していくだけのエビデンス構築は、今のところない。そのような人にはリバーロを選ぶ。

たとえばカルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARB間の使い分けを有効性のエビデンスで行っている医師は少ないと思われます。医師の使いやすさ、1日1回か2回か、あるいは薬剤特性などを最優先で選ぶはずです。CCB間、ACE間、ARB間の比較エビデンスはNOAC同様少ないです。あったとしても患者の好み、医師の専門性を覆すパワーはないでしょう。それだけどの薬もあまり差異はないといえます。NOACのほうがその点、ワルファリンという媒介によりある程度の間接比較はできるのではないかと思われます。
しかしそれとて、「飲みやすさ、使いやすさ」=コンビニエンスにまさる地位が保証されているとは言いがたい。現時点では比較のエビデンスはコンビニエンス、プリファランスに劣るとも勝らないと言えるかもしれません。

なお本文後半で、「75歳未満の患者ではダビガトラン150mg」とありますが、添付文書によれば「70歳未満の患者」です。この場で訂正いたします。
by dobashinaika | 2013-09-25 23:54 | 抗凝固療法:比較、使い分け | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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