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超高齢者の方にとって、納豆を食べることと抗凝固薬を飲むことはどちらが幸せなのだろう?

12日はある製薬会社主催のインターネットシンポジウムに参加しました。

ブログで新規抗凝固薬のことを好き勝手に書いているのが目にとまるのか、最近このような講演会の講師の依頼をときに受けます。
私自身は特定の薬剤の宣伝をするつもりは全くなく、本来の適応症例の50%前後とも言われる抗凝固薬のあまりのアンダーユーズな現状が少しでも改善されればとの希望と、講師となることでその分野について大変勉強になること、そしてなにより全国の著名な先生方とつながりができることが楽しくて今日のようにお引き受けすることもあるのですが、取り立てて特定の薬剤の長所だけの紹介はしない、講演料は受け取らないことを原則としています(このことは後日まとめて書く予定にしています)。

きょうは、有名なFUSHIMI AFレジストリーの立役者である京都医療センターの赤尾昌治先生とご一緒させていただきました。赤尾先生からFUSHIMI レジストリーの1年後のアウトカムが報告され、非常に興味深いものがありました。お人柄も素晴らしく、またも良い出会いがありました。

日本の抗凝固薬使用はアンダーコントロール、アンダーユーズであり、諸試験に比べて脳卒中が多く、また抗凝固薬投与例に出血が少なかった、という点は非常に重要な知見だと思います。

また心房細動の人の死亡が、脳卒中ではなくその他の原因が多いということもたいへん示唆に富む所見です。ちょうど同じような趣旨の報告がCirculationからでていて、これも読まねばなりませんが。
http://circ.ahajournals.org/content/early/2013/09/09/CIRCULATIONAHA.112.000491.abstract.html?
papetoc


私の発表は「高齢者の抗凝固療法」という拙いもので、うまく伝わったかどうかわかりません。

上記2つの発表内容とその感想は後日ゆっくりアップさせていただきます。

発表の後のネット経由の質問に以下の様なものがありました。
「90歳以上にも30例程度にワーファリンを投与し、ほとんどの例で経過良好なのだが、97歳のワーファリン服用の方が、納豆を食べたいとのことなので、新規抗凝固薬に変えたいがどうか?」

私は、それまでの話の流れから「NOACで超高齢者のエビデンスはなく、これまでワーファリンでうまくいっているのであれば、腎機能も懸念されるので、ご本人家族と話し合ってなるべく変えずにワーファリンで行くべきでは」というようなことを咄嗟に答えたかと思います。
ただシンポのあと、赤尾先生との雑談の中でも出てきたのですが、納豆食べたければ食べてもいい、と言ってあげるのも十分ひとつの選択肢ではないか。97歳の方の納豆への愛着度をよく聞いてあげて、食べることが幸福なのであれば、抗凝固薬をやめて納豆を食べて良い、というのもありなのでは、と思い直し、自分のまだまだ凝り固まった”エビデンス脳”を深く反省したのでした。

所詮、エビデンスと言ったって、97歳の方が抗凝固薬を施行せずにいた場合の塞栓症と出血リスクバランスについてなんて、レベルの高いエビデンスは存在しません。高齢者はCHADS2スコアとイベント発症率が必ずしも相関しないとのデータも有ります。
http://dobashin.exblog.jp/13024151/

私の今日の講演の趣旨は、高齢者抗凝固療法の是非に関する意思決定は「クリニカルエビデンス」「患者の問題」「医師の専門性」の3者を総合的に考える。というものでした。であればなおのこと、90代の方とそのご家族にとっての最も良いこと、最も幸せなことはなにかを考えてさしあげるべきでしょう。

超高齢者に取っては抗凝固療法をしない、あるいはやめるというのも十分一つの選択肢である。

もし上記のご質問をされた先生が、このブログをご覧になっておられれば、これが私の追加の解答でございます。
きょうは、FUSHIMI AF Registyを始めインスパイヤされることの多い1日でした。
by dobashinaika | 2013-09-13 00:47 | 抗凝固療法:全般 | Comments(2)
Commented by 大塚 at 2013-09-13 09:28 x
AFでも97歳まで生きられるならアブレーションはいらないともいえますね。高齢者と一口にいっても、BIOLOGICALな一面だけでなく、SOCIALな多要素がより重要になっていると思います。東北地方は特にいえると思いますが、高齢化、過疎化で一人暮らしであまり病院にもいけない孤独なAF老人が急増すると思います。先日、特に認知症というほどではない80歳の男性が、某抗凝固薬をうっかり飲みすぎて、主治医から見放されて私のところにいらっしゃいました。患者の生活・医療環境、QOLを総合的に判断する必要があると思ってます。
Commented by dobashinaika at 2013-09-13 23:45
コメントありがとうございます。おっしゃるとおりで、一般の診療所では一人暮らしで認知症、CHADS2スコア高スコアという方はもはや多数派と言って良い状況です。広い視野を求められると思います。


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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