われわれはディオバン問題の教えをDPP4阻害薬処方に活かせるのか?
現在アムステルダムで欧州心臓病学会が開催され、NEJMにその速報が連日論文化されています。
その中でDPP4阻害薬のプラゼホ対照RCTが2本発表されていて、非常に大切と思われますのでご紹介いたします。
ひとつはsaxagliptin(オングリザ:協和発酵)で、「2.1年の追跡で心血管イベントを増やさず、減らさず。心不全は1.27倍に増やした」というもの
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1307684?query=featured_home#t=article
もうひとつはalogliprin(ネシーナ」武田薬品)で「中央値18ケ月の非劣性RCTで、心血管イベントを増やさなかった」というもの
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1305889?query=OF#t=article
どちらもHbA1cは0.3くらい下がっていますが、エンドポイントに差がないという結果でした。
追跡期間が短い、下がりが悪い場合併用薬が許されているなどのlimitationがあります。しかしながら、なおかつこの2試験はかなり重要な問題を我々につきつけるように思われます。
DPP4阻害薬は、今や患者ベースでシェア5割を超え新規患者の6割以上に処方されるとも言われています。
https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/44370/Default.aspx
各製薬会社のセールス、講演会その他プロパガンダが非常に目立つことは医療従事者であれば誰もが実感していることと思います。
しかしながら、これまでメタ解析やサブ解析では心血管イベント抑制のアウトカムは認められていたものの、プラセボ対照の前向き試験でのアウトカムはほとんどありませんでした。
今回追跡期間は短いながら、「非劣性しか証明できなかった」「心不全を増やすというadverse effectの可能性が示唆された」ことは、広く医療者が知るべきだと思われます。
確かにDPP4阻害薬は、効果と安全性のバランスは一見取れており、1日1回のものは使いやすく、糖尿病治療においては一定の利用価値はあるのかもしれません。
それでもなお今回のペーパーを読むにつけ、シェア第1位、第1選択薬の地位に値するような信頼性と妥当性を獲得している薬なのかということに関してはもう少し十分な知見の蓄積と時間が必要のように思われます。
DPP4阻害薬について、その一見した使いやすさ、安全なイメージから一歩引いて、われわれはもう少し待ちの姿勢を意識してもいいのではないかと思います。
イメージに惑わされない。広告に惑わされず、自分の頭で考える。
これはつい最近のディオバン問題、あるいはプラザキサのブルーレターの時に我々が学んだばかりのことだと思います。
その教訓を生かしたいものです。
その中でDPP4阻害薬のプラゼホ対照RCTが2本発表されていて、非常に大切と思われますのでご紹介いたします。
ひとつはsaxagliptin(オングリザ:協和発酵)で、「2.1年の追跡で心血管イベントを増やさず、減らさず。心不全は1.27倍に増やした」というもの
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1307684?query=featured_home#t=article
もうひとつはalogliprin(ネシーナ」武田薬品)で「中央値18ケ月の非劣性RCTで、心血管イベントを増やさなかった」というもの
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1305889?query=OF#t=article
どちらもHbA1cは0.3くらい下がっていますが、エンドポイントに差がないという結果でした。
追跡期間が短い、下がりが悪い場合併用薬が許されているなどのlimitationがあります。しかしながら、なおかつこの2試験はかなり重要な問題を我々につきつけるように思われます。
DPP4阻害薬は、今や患者ベースでシェア5割を超え新規患者の6割以上に処方されるとも言われています。
https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/44370/Default.aspx
各製薬会社のセールス、講演会その他プロパガンダが非常に目立つことは医療従事者であれば誰もが実感していることと思います。
しかしながら、これまでメタ解析やサブ解析では心血管イベント抑制のアウトカムは認められていたものの、プラセボ対照の前向き試験でのアウトカムはほとんどありませんでした。
今回追跡期間は短いながら、「非劣性しか証明できなかった」「心不全を増やすというadverse effectの可能性が示唆された」ことは、広く医療者が知るべきだと思われます。
確かにDPP4阻害薬は、効果と安全性のバランスは一見取れており、1日1回のものは使いやすく、糖尿病治療においては一定の利用価値はあるのかもしれません。
それでもなお今回のペーパーを読むにつけ、シェア第1位、第1選択薬の地位に値するような信頼性と妥当性を獲得している薬なのかということに関してはもう少し十分な知見の蓄積と時間が必要のように思われます。
DPP4阻害薬について、その一見した使いやすさ、安全なイメージから一歩引いて、われわれはもう少し待ちの姿勢を意識してもいいのではないかと思います。
イメージに惑わされない。広告に惑わされず、自分の頭で考える。
これはつい最近のディオバン問題、あるいはプラザキサのブルーレターの時に我々が学んだばかりのことだと思います。
その教訓を生かしたいものです。
by dobashinaika
| 2013-09-03 22:57
| EBM
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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