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ディオバン錠を服用されている方のために、今回の問題についての説明用パンフレットを作りました

ディオバン錠を服用されている方からの問い合わせを多く受けるようになりました
当院では、基本的にアンジオテンシン変換酵素阻害薬をよく処方するため、ディオバン錠を内服する方は比較的少ないです。
しかしそれでも、かなり不安があるという声や、経緯につきもっと知りたいという声がよく聞かれます。
当院では、そうした患者さんのために説明用のパンフを作りました。
ご参考になれば幸いです。また内容や表現に疑問がある場合はご指摘ご批判いただければ幸いです。

追記;ARBとACE阻害薬についてのUpToDateの記載をまとめましたので合わせてご参照下さい。
http://dobashin.exblog.jp/18083317/

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ディオバン錠を服用されている方へ

既に新聞・テレビなどで高血圧の薬、ディオバンについての多くの報道により、服薬することにご不安を感じている方もおられるかと思います。今回のいきさつや、服薬についてパンフレットを作りましたので、ご参考になれば幸いです。

Q1. ディオバンとはどんな薬ですか?

A1.ディオバンは高血圧の薬です。高血圧の薬をなぜ飲むかというと、血圧を下げるためです。しかしそれだけが目的ではありません。高血圧の薬を飲む最終の目的は血圧を下げることで、脳卒中や心臓病を予防することです。

高血圧の薬を飲む→血圧が下がる→脳卒中、心臓病が予防できる

当面の目標としては血圧を下げること、最終目標は脳卒中、心臓病を予防すること、このことをまず理解して下さい。

Q2.今回の報道ではなにが問題となっているのですか?

A2.当面の目標である血圧を下げる働きについて、ディオバンに問題があったわけではありません。世界的な研究からみても、また当院の患者さんで服用している方の血圧をみても、ディオバンを飲むと血圧は下がります。またディオバンは高血圧の薬の中でもARBといって、アンジオテンシンという血圧を上げるホルモンを抑える薬ですが、ARBにより血圧が下がることで脳卒中や心臓病が予防できることも確認されています。
 今回問題となった、京都府立医大や慈恵医大の論文では、ディオバンが、他の薬と比べた時に、脳卒中や心臓病の予防効果がより高かったというデータが発表されました。しかしその後の調査で、こうしたディオバンのほうが良いというデータが、作られたものである疑いが強まったのです。海外では、このようにディオバンが他の薬よりも良いというデータは今のところほとんど存在しません。

まとめますと、ディオバンの血圧を下げる効果に問題はない。脳卒中や心臓病を予防する効果もある。ただしその効果は他の薬と同等であり、他の薬と比べてより予防効果が高いというデータは作られたものであった、ということです。


Q3.ディオバンは安全な薬なのでしょうか?

A3.今回の問題で、ディオバンが薬害の出た薬だということではありません。高血圧の薬としての安全性は今まで通り変わりはありません。

Q4.それでも服用することに不安があるのですが?

A4.ディオバンと同じような働きを持つARBは他にも何種類かあります。また類似の働きを持つアンジオテンシン変換酵素阻害薬や他の血圧の薬も同等の効果を持っています。今回の問題で、ディオバンに対し不信感やご不安を持たれ、薬剤を変えて欲しいというご希望がある場合は、遠慮なくご相談ください。
 ただし、ご自分で服薬をやめてしまうことはしないようにして下さい。


今回の問題をきっかけとして、薬の効果を調べる試験のあり方について、われわれ医療従事者はもう一度考え直すべきであると思います。今後とも、できるだけ適正な情報をもとにお薬を処方できるよう努力いたしたいと思います。

土橋内科医院
by dobashinaika | 2013-08-02 19:46 | 患者さん向けパンフレット | Comments(2)
Commented at 2013-08-16 12:13 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by dobashinaika at 2013-08-16 21:42
どうぞお使いください。


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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