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心房細動のレートコントロールvs.リズムコントロールに関するAHRQのレビュー

米国の保健福祉省保健医療研究品質局(AHRQ)から心房細動のリズムコントロールとレートコントロールに関するレビューが出ています。

Treatment of Atrial Fibrillation
AHRQ Publication No. 13-EHC095-EF


アブストラクトだけ要約します。
http://effectivehealthcare.ahrq.gov/ehc/products/358/1521/Atrial-fibrillation-prepublication-draft.pdf

【目的】心房細動管理の1つの戦略—レートコントロールとリズムコントロールについてはさまざまなアプローチ法がありその安全性、有効性は、未だに不明

【方法】PubMed®, Embase®, and the Cochrane Databaseをリソースとするシステマティックレビュー。ランダム効果モデル採用

【結果】
1)182論文レビュ−:
・レートコントロール:14研究。
・レートコントロールを厳格か緩徐か:3研究。
・初回リズムコントロール不良患者へのレートコントロールvsリズムコントロール:6研究。
・抗不整脈薬+電気的除細動:42研究
・リズムコントロール:83研究
・レートコントロール、リズムコントロール比較:14研究

2)レートコントロールのキークエスチョンを引き出す論文は限定的:カルシウム拮抗薬(ベラパミル、ジルチアゼム)がジゴキシンより有効との強いエビデンスあり

3)電気的除細動:二相性波形のほうが単相波形より効果的(オッズ比4.39)
  200J二相性のほうが360J単相性より効果が低い(オッズ比0.16)

4)抗不整脈薬下の電気的除細動のほうが、無投薬下より効果的(中度エビデンス強度)。ただどの抗不整脈薬型よりよいかは結論なし

5)肺静脈隔離術の抗不整脈薬に対する優位性は選ばれたサブセットの患者(若年で器質的心疾患のない発作性心房細動)において高エビデンス強度(オッズ比6.51)

6)他の心臓手術に追加したMaze手術の僧帽弁膜症のみの手術に対する優位性は中エビデンス強度(オッズ比5.80)

7)レートコントロールvs.リズムコントロール:いずれも中エビデンス強度
全死亡(OR 1.34; 95% CI, 0.89 to 2.02)
心血管死(OR 0.96; 95% CI, 0.77 to 1.20)
脳卒中(OR 0.99; 95% CI, 0.76 to 1.30)
出血イベント(OR 1.10; 95% CI, 0.87 to 1.38)
心血管疾患による入院のみ高強度でレートコントロールがよい(OR 0.25; 95% CI, 0.14 to 0.43)

8)サブ解析が少ないため、患者特性による効果の違いを結論付けることはできなかった

【結論】今回のレビューでは、以前のレビュー同様、両戦略間でわずかのアウトカムの差しか示すことはできなかった。特定の特性の患者におけるアウトカムに対も依然として不確実だった。特に死亡率、脳卒中、心血管入院については特に追加研究が必要

### 6つのキークエスチョンが設定されています
KQ1. レートコントロールの安全性、有効性は何か?
KQ2. 厳格なレートコントロールか緩徐レートコントロールか?
KQ3. 非薬物療法の安全性、有効性は何か?
KQ4. 抗不整脈薬+電気的除細動の安全性、有効性は何か?
KQ5. 非薬物療法と薬物療法、それぞれ単独と併用の安全性、有効性は何か?
KQ6. レートコントロールかリズムコントロールか?

それぞれにレビューされた研究のエビデンス強度が記されていますが、高強度の項目は大変少ないです。限定された患者での肺静脈隔離術はレベルが高いです。それ以外のレートvs.リズムのエビデンスなどは”low”や”insufficient”が多いのが目立ちます。

まだまだこの分野若っていないことが多いようです。かなり分量が多いので、今後少しずつ読んでいくことにします。
by dobashinaika | 2013-06-19 13:36 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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