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心電図QTc時間が長くても短くても心房細動になりやすい:コペンハーゲンECG研究

JACC  6月25日号より

J-Shaped Association Between QTc Interval Duration and the Risk of Atrial Fibrillation
Results From the Copenhagen ECG Study
J Am Coll Cardiol. 2013;61(25):2557-2564


【疑問】QT時間と心房細動の発症には関係があるのか?

P:コペンハーゲン一般医に通院する患者281277人(コペンハーゲンの人口の1/3).2001年〜2010年まで心電図をフォローできた人

E/C:心電図のQTc、パーセンタイル別

O:心房細動罹患率

【結果】
1)心房細動発症:10,766例(5.7年)。1467例14%は孤立性

2)第1パーセンタイル以下のQTc(372msec以下)群は対照群(411~419msec)に比べて発症率が高い:ハザード比1.45(1.14〜1.84;p=0.002)

3)対照群以上のQTcを示す例では発症率はQTc間隔に依存して増大

4)第99パーセンタイル(464msec以上)群は対照群に比べて発症率が高い;ハザード比1.44(1.24〜1.66;p<0.001)

5)QTc延長と発症率の相関は、孤立性心房細動のほうが強い:ハザード比2.32
心電図QTc時間が長くても短くても心房細動になりやすい:コペンハーゲンECG研究_a0119856_22192569.png


【結論】
QTc間隔と心房細動発症率はJ型の関係あり。その関係は孤立性ほど強い

### なぜでしょうか?筆者らは心室筋と心房筋の活動電位持続時間は同じような振る舞いを見せる可能性がある、つまりQTcが伸びているということは心室筋細胞の活動電位持続時間が延長しており、同様に心房筋細胞のそれも延長している。よって、心房筋でも“atrial torsades de pointes”と呼べるような不規則なりエントリーが起きやすくなっている、としています。

また活動電位持続時間の極端な短縮は、心房筋の不応期が短くなり非常に早いタイミングで出る期外収縮が伝導しやすくなり、これまた心房細動が起きやすくなるということになります。

後ろ向きコホートですので、心房細動の診断、QTcの測定法などのばらつきはありえます。また様々な交絡因子、体格、血圧、喫煙その他未知の因子はたとえ多変量解析しても、定義し得ない交絡因子は否定出来ないと思われます。QTc延長例は、様々な危険因子、例えば電解質異常、器質的心疾患なども持っていると思われます。

臨床的にQTc短縮例は大変少ないですので、QTcが延長している症例では心房細動発症にも、まあ留意するというメッセージとして捉えます。
by dobashinaika | 2013-06-18 22:21 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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