携帯心電計による心房細動スクリーニング:「リスク化されるひと」
BMC Cardiovascular Disorders 6月付オンライン版より
Screening for atrial fibrillation with baseline and intermittent ECG recording in an out-of-hospital population
BMC Cardiovascular Disorders 2013, 13:41 doi:10.1186/1471-2261-13-41
【疑問】携帯型心電計で心房細動はどの程度スクリーニングできるか?
P:8つの家庭医療施設と2つの病院外来(スウェーデン)における心房細動が認められていないCHADS2スコア1点以上の患者989名
E:一日2回10秒間、または動悸時に携帯心電計を記録。28日間。
O:10秒以上の心房細動の記録
【結果】
1)928名完全登録。心房細動記録:35例3.8%(2.7-5.2)
2)35例の平均年齢70.7歳。平均CHADS2スコア2(1〜4)点
【結論】1日2回4週間の携帯心電計記録での心房細動同定率は3.8%。携帯心電計は抗凝固薬の適応になるようなリスク症例の同定に有効
### ツイッターでいつも参考にさせていただいている、宇津貴史さん@Office_iからの情報です。
1ヶ月で3.8%も新規の心房細動が見つかるというのは高率な感じです。ただし10秒間の発作を含みます。数秒間だけの発作がどの程度混じっているかは不明のようですし2日以上14日以内記録される例が50%とのことで、頻回に出現する例が多いようです。こうして無症候性で携帯で捕まった心房細動のうち、どの程度のひとが脳塞栓を発症するのでしょうか?このような人にも抗凝固療法が必ず必要なのでしょうか?
RE-LYを始めとする抗凝固薬のRCTは、試験開始前の一定期間に心電図で心房細動が確認された例です。10秒という短時間ではなく、まとまった時間発作が続いていたと思われるケースです。携帯による短時間心房細動を抗凝固療法の視野にいれると、オーバーインディケーションが増える気もします。
我々は目に見えるもの、数値化されうるリスクだけを「リスク因子」という1つのモノとして捉え、スコア化してその人の将来を予測しています。デバイスを使うことで、そのリスク化される対象を増やす作業をしているとも言えます。それはもしかしたら、管理強化とか、囲い込みとか、営利とかといった営みと本質的に結びつきやすい作業とも言えます。
どんな人が真のリスクがあるのか。無症候性心房細動で時に脳塞栓リスクのある人はどんな人なのか。非常に大切な問題だと思います。
それにしてもツイッターやフェイスブックで論文情報得ることが最近大変多くなりました。SNS上での情報は玉石混交ですが、そんな中でも長くやっているとこの人は信頼出来るという情報源がでいてくるものです。そういうリソースの貯金は”強み”になりますね。
関連ブログ
http://dobashin.exblog.jp/17049937/
Screening for atrial fibrillation with baseline and intermittent ECG recording in an out-of-hospital population
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【疑問】携帯型心電計で心房細動はどの程度スクリーニングできるか?
P:8つの家庭医療施設と2つの病院外来(スウェーデン)における心房細動が認められていないCHADS2スコア1点以上の患者989名
E:一日2回10秒間、または動悸時に携帯心電計を記録。28日間。
O:10秒以上の心房細動の記録
【結果】
1)928名完全登録。心房細動記録:35例3.8%(2.7-5.2)
2)35例の平均年齢70.7歳。平均CHADS2スコア2(1〜4)点
【結論】1日2回4週間の携帯心電計記録での心房細動同定率は3.8%。携帯心電計は抗凝固薬の適応になるようなリスク症例の同定に有効
### ツイッターでいつも参考にさせていただいている、宇津貴史さん@Office_iからの情報です。
1ヶ月で3.8%も新規の心房細動が見つかるというのは高率な感じです。ただし10秒間の発作を含みます。数秒間だけの発作がどの程度混じっているかは不明のようですし2日以上14日以内記録される例が50%とのことで、頻回に出現する例が多いようです。こうして無症候性で携帯で捕まった心房細動のうち、どの程度のひとが脳塞栓を発症するのでしょうか?このような人にも抗凝固療法が必ず必要なのでしょうか?
RE-LYを始めとする抗凝固薬のRCTは、試験開始前の一定期間に心電図で心房細動が確認された例です。10秒という短時間ではなく、まとまった時間発作が続いていたと思われるケースです。携帯による短時間心房細動を抗凝固療法の視野にいれると、オーバーインディケーションが増える気もします。
我々は目に見えるもの、数値化されうるリスクだけを「リスク因子」という1つのモノとして捉え、スコア化してその人の将来を予測しています。デバイスを使うことで、そのリスク化される対象を増やす作業をしているとも言えます。それはもしかしたら、管理強化とか、囲い込みとか、営利とかといった営みと本質的に結びつきやすい作業とも言えます。
どんな人が真のリスクがあるのか。無症候性心房細動で時に脳塞栓リスクのある人はどんな人なのか。非常に大切な問題だと思います。
それにしてもツイッターやフェイスブックで論文情報得ることが最近大変多くなりました。SNS上での情報は玉石混交ですが、そんな中でも長くやっているとこの人は信頼出来るという情報源がでいてくるものです。そういうリソースの貯金は”強み”になりますね。
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by dobashinaika
| 2013-06-13 23:15
| 心房細動:診断
|
Comments(0)
土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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