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アジア人と非アジア人とではダビガトランの効果と安全性に違いがあるのか?:RE-LYサブ解析

Stroke 6月6日オンライン版、Epub ahead of printより

Dabigatran Versus Warfarin: Effects on Ischemic and Hemorrhagic Strokes and Bleeding in Asians and Non-Asians With Atrial Fibrillation.
DOI: 10.1161/STROKEAHA.113.000990


【疑問】アジア人と非アジア人とではダビガトランの効果と安全性に違いがあるのか?

P:RE-LY試験登録患者

E/C:アジア人2782人15% (10カ国)/非アジア人15331人(34カ国)

O:脳卒中/全身性塞栓症、出血性脳卒中

結果】
1)脳卒中/全身性塞栓症:
アジア人:ワーファリン3.06% vs.ダビガトラン110mgx2 2.50% vs. ダビガトラン150mgx2 1.39%
非アジア人;ワーファリン1.48% vs.ダビガトラン110mgx2 1.37% vs. ダビガトラン150mgx2 1.06%
交互作用なし

2)出血性脳卒中:
ワーファリン投与例:アジア人で有意に多い(ハザード比2.4:1.3−4.7:P=0.007)
ダビガトラン投与例:アジア人、非アジア人共にダビガトランで有意に減少
アジア人:ハザード比0.15(110mg)、0.22(150mg)非アジア人;ハザード比0.37(110mg)、0.28(150mg)

3)大出血:
アジア人;ダビガトランで有意に少ない:ワーファリン3.82%、ダビガトラン110mg2,22%、150mg2.17%

【結論】出血性脳卒中率は、血圧が同じで、より若年、INR低め管理にもかかわらずアジア人が非アジア人に比べ高率だった。出血性脳卒中はアジア人、非アジア人ともダビガトランで明らかに減少した。ダビガトランの有効性はアジア人と非アジア人のサブグループで同一だった。

### 既に学会等で発表されているRE-LY試験のアジア人対象のサブ解析です。

結論はワーファリン服用者では、アジア人で出血性脳卒中が多いとなっていますが、本文の方をよく見ますと、アジア人0.75%/年に対し非アジア人0.32%/年です。どちらもそれほど多くないです。それと同じくらいの比率で虚血性脳卒中もアジア人2.02%、非アジア人0.98%とやはりアジア人のほうが多い事がわかります。絶対数としてはこちらのほうが多いようです。INRが低めだからかもしれませんが。

他にもよく表を眺めると、消化管出血が非アジア人ではダビガトラン150mgでワーファリンの1.67倍に増加するのに対し、ワーファリンは逆に0.68倍に減っています。RE~LYの本解析ではダビガトランで下部消化管出血を多く認めていましたが、アジア人はまた違った出血様式を取るのかもしれません。

頭蓋内出血が、とにかくアジア人、非アジア人とも非常に少ないというのが、改めて感じるポイントです。ダビガトラン110mgだと年間0.2%です。ワーファリンの1/5。これはやはり見逃せない感じです。

以上雑感ですが、言うまでもなくあくまでもサブ解析。nがかなり違います。患者背景も、年齢、心筋梗塞の既往、INR管理など違っています。ワーファリンナイーブもアジアで多いようです。ここでの有意差はあくまで名目上の有意差であることは踏まえる必要があります。
by dobashinaika | 2013-06-10 19:26 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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