日本不整脈学会からの特殊場面におけるダビガトランの使用実態調査結果速報
日本不整脈学会のホームページに「特殊場面における新規抗凝固薬の使用実態調査」の結果報告が速報版で出ています。
http://jhrs.or.jp
http://jhrs.or.jp/pdf/com_academic201303_01.pdf
「特殊場面」とはアブレーション周術期、侵襲的手技(抜歯、白内障手術、体表小手術、内視鏡生検)です。
対象は不整脈専門医研修施設(299施設)
調査機関は2012年12月〜2013年1月です。
「まとめ」を転載します。
1)アブレーション
91%の施設で休薬しており、その時期は前日夕>当日朝>前日朝の順に多く、休薬期間が長い施設ほどヘパ リンブリッジの実施が多かった。再開時期は当日夕>翌日朝が多く、翌朝以降の場合にはヘパリンブリッジを 過半数の施設で行っていた。
2)侵襲的手技
継続可能とのガイドラインにも関らず、休薬していた施設が白内障 20%、抜歯 28%、体表小手術 54%、内視 鏡下生検 82%存在し、 後者では前日朝から中止して当日夕か翌日朝に再開する施設が多かった。
3)電気的除細動
78%の症例で 3 週間以上の投与を実施、その後に 9 割の症例が経食道エコーで血栓否定後に電気的除細動 を実施している。経食道エコー実施例中 9 例、4.5%に血栓を認め、中 4 例は継続か増量で消失した。電気的除 細動後に 2 例、0.9%で脳梗塞の合併を認めた。
### アブレーションではほとんどの施設がダビガトランを中止して施行されていますが、ヘパリンブリッジ市内施設の方が68%と多かったです。それはわかりますが、前日の朝から中止するのにへパリンブリッジをしない施設が44施設の31.8%に認められます。
また抜歯でも中止する(!)という施設が28%もありました。生検も、アンケートの段階で日本消化器内視鏡学会の新ガイドラインがすでに出ている時期ですが、中止するという施設が82%と大半でした。調査対象は不整脈専門医研修施設ですので、当然不整脈専門医ガが在籍する施設と思われますが、にも関わらず抜歯でダビガトラン中止する施設が30%近くもあるとは。。。ある意味ショックです。どうして中止するのか、その事情を知りたいですね。
先日の日本循環器学会でも、アブレーション時や内視鏡時に中止したために塞栓症を生じた例が報告されていました。
これを見ますと、まだ「出血リスク過大評価」の認知バイアスが見て取れる気がします。
また除細動時の所見では、経食道心エコーで199例中9例で左房内血栓が認められ、再度施行した6例中5例で消失、1例で縮小したとのことです。消失5例のうち2例はダビそのまま、2例は増量、1例はワルファリンに変更しています。縮小1例はワルファリンへの変更です。左心耳血栓というのはおそらくできては消えできては消えを繰り返すものと思われますので、薬剤の効果は厳密に言うと評価が難しいかもしれませんが、今後の除細動施行時、参考になるデータと思います。
ちょうどリバーロキサバンでもROCKET—AFのサブ解析で同様テーマのペーパーが出ていました。あとで読みます。
http://content.onlinejacc.org/article.aspx?articleid=1667419
http://jhrs.or.jp
http://jhrs.or.jp/pdf/com_academic201303_01.pdf
「特殊場面」とはアブレーション周術期、侵襲的手技(抜歯、白内障手術、体表小手術、内視鏡生検)です。
対象は不整脈専門医研修施設(299施設)
調査機関は2012年12月〜2013年1月です。
「まとめ」を転載します。
1)アブレーション
91%の施設で休薬しており、その時期は前日夕>当日朝>前日朝の順に多く、休薬期間が長い施設ほどヘパ リンブリッジの実施が多かった。再開時期は当日夕>翌日朝が多く、翌朝以降の場合にはヘパリンブリッジを 過半数の施設で行っていた。
2)侵襲的手技
継続可能とのガイドラインにも関らず、休薬していた施設が白内障 20%、抜歯 28%、体表小手術 54%、内視 鏡下生検 82%存在し、 後者では前日朝から中止して当日夕か翌日朝に再開する施設が多かった。
3)電気的除細動
78%の症例で 3 週間以上の投与を実施、その後に 9 割の症例が経食道エコーで血栓否定後に電気的除細動 を実施している。経食道エコー実施例中 9 例、4.5%に血栓を認め、中 4 例は継続か増量で消失した。電気的除 細動後に 2 例、0.9%で脳梗塞の合併を認めた。
### アブレーションではほとんどの施設がダビガトランを中止して施行されていますが、ヘパリンブリッジ市内施設の方が68%と多かったです。それはわかりますが、前日の朝から中止するのにへパリンブリッジをしない施設が44施設の31.8%に認められます。
また抜歯でも中止する(!)という施設が28%もありました。生検も、アンケートの段階で日本消化器内視鏡学会の新ガイドラインがすでに出ている時期ですが、中止するという施設が82%と大半でした。調査対象は不整脈専門医研修施設ですので、当然不整脈専門医ガが在籍する施設と思われますが、にも関わらず抜歯でダビガトラン中止する施設が30%近くもあるとは。。。ある意味ショックです。どうして中止するのか、その事情を知りたいですね。
先日の日本循環器学会でも、アブレーション時や内視鏡時に中止したために塞栓症を生じた例が報告されていました。
これを見ますと、まだ「出血リスク過大評価」の認知バイアスが見て取れる気がします。
また除細動時の所見では、経食道心エコーで199例中9例で左房内血栓が認められ、再度施行した6例中5例で消失、1例で縮小したとのことです。消失5例のうち2例はダビそのまま、2例は増量、1例はワルファリンに変更しています。縮小1例はワルファリンへの変更です。左心耳血栓というのはおそらくできては消えできては消えを繰り返すものと思われますので、薬剤の効果は厳密に言うと評価が難しいかもしれませんが、今後の除細動施行時、参考になるデータと思います。
ちょうどリバーロキサバンでもROCKET—AFのサブ解析で同様テーマのペーパーが出ていました。あとで読みます。
http://content.onlinejacc.org/article.aspx?articleid=1667419
by dobashinaika
| 2013-03-19 20:15
| 抗凝固療法:ダビガトラン
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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