第77回日本循環器学会学術集会1日目見聞記(1)プラザキサ使用経験、J-RHYTHMレジストリーなど
第77回日本循環器学会学術集会の報告第1弾です。
午前中は「一般口述3:血栓塞栓症、抗血栓療法、血栓溶解」のセッションを聞きました。
明日から役に立つ情報の観点から、箇条書きでまとめます。
関連する午後のFeatured Research セッション(静岡赤十字病院)とプレナリ―セッション(心臓血管研究所)からの報告も合わせてまとめました。
なお以下の内容は、小田倉が受け取った情報を記すもので、文責はすべて小田倉にあります。内容の誤りはご指摘いただければ幸いです。
***PTINR2.0以上は70歳以下にも適しているか(OJ013:静岡市立静岡病院から)・480人の心房細動例の解析では、70歳以下の人で塞栓症3人(うち2人はINR1.6未満)、出血1人INR1.6~2.0) であり、イベント自体少ない。
・INR管理状況は70歳以上と以下で同じなので、年齢によらず2.0位を目指してもイベント発症率は同じ
***ダビガトラン服用下のaPTT上昇と患者背景の関係(OJ014:心臓血管研究所から)・404例中午前中aPTT測定の195例において、aPTT60秒(施設正常域の中央値の2倍)でみた場合、60秒以上になった例は20~30%。
・年齢56歳以上、体重68kg未満、Cr1.0/0.7(男/女)の3因子が多いほど、aPTT高値
・反対に因子数ゼロならaPTT低値
***Jリズムレジストリーで抗血小板薬併用群での心血管イベントリスク(OJ015;藤田保健衛生大学から)
・Jリズムレジストリーではワーファリン単独73%、抗血小板薬単独8%、併用16%
・ワーファリン単独群を1とすると、脳血栓/全身性塞栓は抗血小板群2.38、併用群0.94
・出血は抗血小板群0.78、併用群1.65
・併用群では出血の既往例、CHADS2スコア高値例で出血多い
・併用群は梗塞は同じで、出血だけ増えた
***日本の発作性心房細動患者で脳梗塞のリスク層別化は妥当か(OJ016岩手医科大から)・未治療332例対象でCHADS2スコア0点35%、1点23%
・心不全が年間発症率4.4%、脳卒中/TIAの既往が10%と高リスク
***出血リスクの新しいスコア;AKBスコア(OJ017:藤田保健衛生大学から)・抗血小板薬併用(A)、腎機能CCr30未満(K)、出血の既往(B)の3因子でのリスク層別化はC統計量0.71でATRIAスコアやHAS-BLEDスコアより良好
***CHADS2スコア低値例での左心耳血栓を生じるリスク因子(OJ018筑波大学から)・406例の心房細動中アブレーション前の経食道エコーで左心耳血栓は38例
・CHADS2スコア0,1点は246例60%で、そのうち12例で左心耳血栓あり
・左室EF55%未満、左房径45mm以上が左心耳血栓形成と関連あり
***ブルーレターはダビガトランの処方にどう影響を及ぼしたか(午後のプレナリ―セッション5:心臓血管研究所から)・上記同様404例のダビガトランの使用経験から
・ブルーレターの出血例は”too aggressive”、ブルーレターにより”guarded!が”more guarded!になった
・ブルーレター前(I期)、ブルーレター後から発売1年まで(II期)、発売1年からそ現在(III期)とすると、II期で高齢者、心不全例への投与が減ったがIII期で増加した
・塞栓症は1例(I期)、出血は1例(III期、直腸潰瘍、80歳)、頭蓋内出血なし
***aPTT低値はダビガトラン内服例での虚血性脳卒中と関係あり(FRS-028静岡赤十字病院)・129例で投与2週間後、内服150±7分で測定
・虚血性脳卒中の4例ともaPTT35秒以下
・出血の6例はaPTTに関連なし
###いろいろと知りたいことが分かったセッションでした。全体として感じたのがは、リスクをいかにとらえるかです。とくにCHADS2スコアについては、さんざん言われているように、簡便さ優先の指標がゆえに、粗雑さも併せ持っている。同じスコアでもたとえば心不全と高血圧ではその重みが違う、ということを改めて感じます。
心臓血管研究所の膨大なaPTTデータは参考になります。とくにCCr30~50の例でも最近は処方されているのが、目を引きました。aPTT低値については、測定ポイントが少なく,
交絡因子もあるため何とも言えない感じもありますが、このようなデータの積み重ねは大切と思いました。
しかし、この午前中のセッションの裏でリバーロキサバンの市販後調査の中間解析が発表されていて、ホットな議論が交わされたようですが、今回は学習優先で一般演題を聞きましたので、聞けませんでした。昨年より心房細動のセッションが多くなっているため仕方ありません。Ustとかであとで見ることができたらいいのにと思いますが、学会参加者減少につながることは絶対やられないでしょうし。

展示会場へと向かう集団。スーツネクタイ率99%。プライマリーケア系学会とは対極をなす光景ですね。黒系スーツが圧倒的に多くカラスの大群を連想してしまいました(失礼)。
午前中は「一般口述3:血栓塞栓症、抗血栓療法、血栓溶解」のセッションを聞きました。
明日から役に立つ情報の観点から、箇条書きでまとめます。
関連する午後のFeatured Research セッション(静岡赤十字病院)とプレナリ―セッション(心臓血管研究所)からの報告も合わせてまとめました。
なお以下の内容は、小田倉が受け取った情報を記すもので、文責はすべて小田倉にあります。内容の誤りはご指摘いただければ幸いです。
***PTINR2.0以上は70歳以下にも適しているか(OJ013:静岡市立静岡病院から)・480人の心房細動例の解析では、70歳以下の人で塞栓症3人(うち2人はINR1.6未満)、出血1人INR1.6~2.0) であり、イベント自体少ない。
・INR管理状況は70歳以上と以下で同じなので、年齢によらず2.0位を目指してもイベント発症率は同じ
***ダビガトラン服用下のaPTT上昇と患者背景の関係(OJ014:心臓血管研究所から)・404例中午前中aPTT測定の195例において、aPTT60秒(施設正常域の中央値の2倍)でみた場合、60秒以上になった例は20~30%。
・年齢56歳以上、体重68kg未満、Cr1.0/0.7(男/女)の3因子が多いほど、aPTT高値
・反対に因子数ゼロならaPTT低値
***Jリズムレジストリーで抗血小板薬併用群での心血管イベントリスク(OJ015;藤田保健衛生大学から)
・Jリズムレジストリーではワーファリン単独73%、抗血小板薬単独8%、併用16%
・ワーファリン単独群を1とすると、脳血栓/全身性塞栓は抗血小板群2.38、併用群0.94
・出血は抗血小板群0.78、併用群1.65
・併用群では出血の既往例、CHADS2スコア高値例で出血多い
・併用群は梗塞は同じで、出血だけ増えた
***日本の発作性心房細動患者で脳梗塞のリスク層別化は妥当か(OJ016岩手医科大から)・未治療332例対象でCHADS2スコア0点35%、1点23%
・心不全が年間発症率4.4%、脳卒中/TIAの既往が10%と高リスク
***出血リスクの新しいスコア;AKBスコア(OJ017:藤田保健衛生大学から)・抗血小板薬併用(A)、腎機能CCr30未満(K)、出血の既往(B)の3因子でのリスク層別化はC統計量0.71でATRIAスコアやHAS-BLEDスコアより良好
***CHADS2スコア低値例での左心耳血栓を生じるリスク因子(OJ018筑波大学から)・406例の心房細動中アブレーション前の経食道エコーで左心耳血栓は38例
・CHADS2スコア0,1点は246例60%で、そのうち12例で左心耳血栓あり
・左室EF55%未満、左房径45mm以上が左心耳血栓形成と関連あり
***ブルーレターはダビガトランの処方にどう影響を及ぼしたか(午後のプレナリ―セッション5:心臓血管研究所から)・上記同様404例のダビガトランの使用経験から
・ブルーレターの出血例は”too aggressive”、ブルーレターにより”guarded!が”more guarded!になった
・ブルーレター前(I期)、ブルーレター後から発売1年まで(II期)、発売1年からそ現在(III期)とすると、II期で高齢者、心不全例への投与が減ったがIII期で増加した
・塞栓症は1例(I期)、出血は1例(III期、直腸潰瘍、80歳)、頭蓋内出血なし
***aPTT低値はダビガトラン内服例での虚血性脳卒中と関係あり(FRS-028静岡赤十字病院)・129例で投与2週間後、内服150±7分で測定
・虚血性脳卒中の4例ともaPTT35秒以下
・出血の6例はaPTTに関連なし
###いろいろと知りたいことが分かったセッションでした。全体として感じたのがは、リスクをいかにとらえるかです。とくにCHADS2スコアについては、さんざん言われているように、簡便さ優先の指標がゆえに、粗雑さも併せ持っている。同じスコアでもたとえば心不全と高血圧ではその重みが違う、ということを改めて感じます。
心臓血管研究所の膨大なaPTTデータは参考になります。とくにCCr30~50の例でも最近は処方されているのが、目を引きました。aPTT低値については、測定ポイントが少なく,
交絡因子もあるため何とも言えない感じもありますが、このようなデータの積み重ねは大切と思いました。
しかし、この午前中のセッションの裏でリバーロキサバンの市販後調査の中間解析が発表されていて、ホットな議論が交わされたようですが、今回は学習優先で一般演題を聞きましたので、聞けませんでした。昨年より心房細動のセッションが多くなっているため仕方ありません。Ustとかであとで見ることができたらいいのにと思いますが、学会参加者減少につながることは絶対やられないでしょうし。

展示会場へと向かう集団。スーツネクタイ率99%。プライマリーケア系学会とは対極をなす光景ですね。黒系スーツが圧倒的に多くカラスの大群を連想してしまいました(失礼)。
by dobashinaika
| 2013-03-15 21:34
| 抗凝固療法:全般
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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