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米国でのダビガトラン市販後の出血に関するNEJM誌のperspective

明日(もう今日になりましたが)からの第77回日本循環器学会「観戦」のために、横浜に来ています。
あすからのフル稼働のために英気を養おうと思いましたが、気になるステートメントがNEJMから出ていたので、読んでから寝ることにします。
簡単に箇条書きでのまとめです。

Dabigatran and Postmarketing Reports of Bleeding
DOI: 10.1056/NEJMp1302834


・2010年10月のダビガトラン承認後、FDAはFDA Adverse Event Reporting System (FAERS)を通じて、重大で致死的な出血事象の報告を受けていた。その出現率は、ワルファリンの出血率よりも多い。

・RE-LYでは以下のことが確認されている
脳卒中/全身性塞栓予防効果:ダビ150>ワルファリン(1.1vs.1.7/100人年)
死亡率:ダビ<ワルファリン(1.1vs. 1.7;傾向)
大出血」ダビ150=ワルファリン(3.3vs.3.6)
消化管出血:ダビ>ワーファリン(1.6vs.1.1)
頭蓋内出血:ダビ<ワーファリン(0.3vs. 0.8)

・RE-LYの結果から予想されてはいたが、市販後調査での出血イベントがあまりにも多かったので、FDAはFAERSによるレビューを急いだ。

・市販後調査では、RELYのような腎機能などが適正化された集団とは対象が違う。

・今回のレポートでは、出血症例の背景は不明。少人数ながら腎機能低下者でも減量がなされていなかったとのこと。

・われわれは疫学上の現象である、Weber effect(Weber JCP. Epidemiology of adverse reactions to nonsteroidal anti-inflammatory drugs. Adv Inflamm Res 1984;6:1-7、すなわち新薬登場時、急激に副作用報告が増加し、その後急減する現象の可能性も考慮している。ワルファリンは発売後約60年たつが、新規抗凝固薬より副作用報告が極端に少ないのはこの理由による。しかしながら、FDAの標準プラクティスに従い、2011年12月に薬剤安全性情報が出された。

・ダビガトランの場合、市販後調査の出血イベントの多さが、真の出血リスク増大を反省しているのか見極めたいと考えた。保険クレームやFDA Mini-Sentinel databaseからの2010年8月~2011年12月までのデータでは、ダビガトランによる出血はワルファリン関連出血より多いというわけではない。

・この解析は、交絡因子や詳細なカルテデータが欠如している点が欠点。これを克服すための2つのプロトコールに基づく評価を立案中。

### 市販後調査で多数の出血事象が報告されたが、それはいわゆるWeber効果(新薬ということだけで報告が触発されたため)であり、別なデータではそれほど顕著な増加はなかった。という趣旨です。Mini-Sentinel Distributed Databaseの内容をみますと頭蓋内出血はダビが1.6人/10万人に対しワルファリンは3.1~3.5人とのことです。まあワルファリンの母数はかなり多いわけではあります。

日本で2011年8月に出ました市販後調査は、腎機能低下例や超高齢者が多数含まれており
単なるWeber効果だけのものではないと思われますが、ただし、対母集団の比率でみた場合、果たしてワルファリンに比べて明らかに出血率が多かったとはいえないだろうとも思われます。ワルファリンの大出血例は市販後50年のこの時期には厚生省に上がっているのは一部かもしれません。

間違ったケースに絶対使わないこと。はじめて使う場合はリスクの少ないケースから。とりあえず、よく言われる原則論を言って寝ます。

明日からは日循ネタをブログ、ツイッター、フェイスブックを通じて発信しまくりたいと思いますので。
by dobashinaika | 2013-03-15 00:07 | 抗凝固療法:ダビガトラン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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