リバーロキサバンにより巨大左心耳血栓が消失した1例の報告
Thrombosis and Haemostasis 1月24日付けオンライン版
Resolution of giant left atrial appendage thrombus with rivaroxaban
http://dx.doi.org/10.1160/TH12-11-0821
・64歳男性
・持続性心房細動の除細動目的で入院
・入院時NYHA III
・虚血性心疾患、虚血性心筋症、CKDステージ3B〜4(CCr29)
・CHA2DS2-VAScスコア6点。ワルファリン服用中、INR管理不良
・経食道エコーで左心耳尖端に11x12mmの小血栓有り(A)
・除細動を6週間延期し、ワルファリンをINR2.5~3.5(実際は2.1~4.2、平均3.2)になるようにコントロール
・6週後のエコーでむしろ血栓は増大(12x45mm)し左心耳からが飛び出そうになっていた(B)
・ワルファリンの効力発揮は遅く、ビタミンKに依存する
・大血栓の溶解能力には乏しいとのエビデンスは増えつつある
・そこでリバーロキサバン15mg1日1回経口投与に変更
・4週間の経食道エコーで血栓は退縮傾向を認め(C)、6週後には完全に消失した(D)
・電気的除細動は成功し、患者は退院となった
・このレポートはリバーロキサバンの血栓溶解を示した初のレポートであり、新規FXa阻害薬のいくつかの重要な特徴を明示している
・第一に、ワルファリンと異なりFXa阻害薬はその場での新たな血栓増大を抑制し、さらに重要なことに形成された血栓を溶解するポテンシャルを持つ
・そのため、血栓誘発性のフィブリノペプタイドA生成をヒルジン同様に抑制する
・第二に、腎不全患者では低用量リバーロキサバンが心—塞栓リスクを十分減らすものと思われる
・第三に、リバーロキサバンは限られた時間内での血栓溶解が可能であった。それゆえ同様のケースにおける治療オプションとして期待できる
・特に左心耳血栓はワルファリン投与者の40%では残存しており、予後不良に関連していると言われている。
・大規模試験が待たれる。
### ワルファリンでむしろ左心耳血栓が増大し、リバーロキサバンで退縮したという症例です。平均INR3.2と厳しく管理していながらワルファリンで血栓が大きくなったのはなぜなのか?
この方の腎機能はかなり低く、普段からINR管理が不良であったことから、じつはINRは日々かなり変動していたのではないかと思われます。また急にワルファリン投与を厳しくしたために、一時的にプロテインC,Sなどが抑制され過凝固に陥ったのか、、、
このような例では低用量リバーロキサバンであれば、むしろワルファリンより安定した血中濃度が得られ、血栓溶解能が優れているのかも知れません。その意味ではアピキサバンも期待ができるかもしれません。
1例報告ですので、多数例での報告が待たれるところ。
Resolution of giant left atrial appendage thrombus with rivaroxaban
http://dx.doi.org/10.1160/TH12-11-0821
・64歳男性
・持続性心房細動の除細動目的で入院
・入院時NYHA III
・虚血性心疾患、虚血性心筋症、CKDステージ3B〜4(CCr29)
・CHA2DS2-VAScスコア6点。ワルファリン服用中、INR管理不良
・経食道エコーで左心耳尖端に11x12mmの小血栓有り(A)
・除細動を6週間延期し、ワルファリンをINR2.5~3.5(実際は2.1~4.2、平均3.2)になるようにコントロール
・6週後のエコーでむしろ血栓は増大(12x45mm)し左心耳からが飛び出そうになっていた(B)
・ワルファリンの効力発揮は遅く、ビタミンKに依存する
・大血栓の溶解能力には乏しいとのエビデンスは増えつつある
・そこでリバーロキサバン15mg1日1回経口投与に変更
・4週間の経食道エコーで血栓は退縮傾向を認め(C)、6週後には完全に消失した(D)
・電気的除細動は成功し、患者は退院となった
・このレポートはリバーロキサバンの血栓溶解を示した初のレポートであり、新規FXa阻害薬のいくつかの重要な特徴を明示している
・第一に、ワルファリンと異なりFXa阻害薬はその場での新たな血栓増大を抑制し、さらに重要なことに形成された血栓を溶解するポテンシャルを持つ
・そのため、血栓誘発性のフィブリノペプタイドA生成をヒルジン同様に抑制する
・第二に、腎不全患者では低用量リバーロキサバンが心—塞栓リスクを十分減らすものと思われる
・第三に、リバーロキサバンは限られた時間内での血栓溶解が可能であった。それゆえ同様のケースにおける治療オプションとして期待できる
・特に左心耳血栓はワルファリン投与者の40%では残存しており、予後不良に関連していると言われている。
・大規模試験が待たれる。
### ワルファリンでむしろ左心耳血栓が増大し、リバーロキサバンで退縮したという症例です。平均INR3.2と厳しく管理していながらワルファリンで血栓が大きくなったのはなぜなのか?
この方の腎機能はかなり低く、普段からINR管理が不良であったことから、じつはINRは日々かなり変動していたのではないかと思われます。また急にワルファリン投与を厳しくしたために、一時的にプロテインC,Sなどが抑制され過凝固に陥ったのか、、、
このような例では低用量リバーロキサバンであれば、むしろワルファリンより安定した血中濃度が得られ、血栓溶解能が優れているのかも知れません。その意味ではアピキサバンも期待ができるかもしれません。
1例報告ですので、多数例での報告が待たれるところ。
by dobashinaika
| 2013-02-07 23:50
| 抗凝固療法:リバーロキサバン
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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