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新規抗凝固薬からワルファリンへ切り替え時の塞栓症に注意:ROCKET-AF試験後付け解析

JACC 2月12日号より

Outcomes of Discontinuing Rivaroxaban Compared With Warfarin in Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation
Analysis From the ROCKET AF Trial (Rivaroxaban Once-Daily, Oral, Direct Factor Xa Inhibition Compared With Vitamin K Antagonism for Prevention of Stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation)
J Am Coll Cardiol. 2013;61(6):651-658.


【疑問】リバーロキサバンを中止した場合、ワルファリンに比べて脳塞栓などのアウトカムに違いはあるのか?

P:ROCKET-AF試験対象例(post-hoc解析)

E:リバーロキサバン群(一時的または永久使用中止例)

C:ワルファリン群(一時的または永久使用中止例)

O:3日以上の一時的中止後30日以内または永久中止後早期(3日〜30日)、または試験終了後にオープンラベル試験に移行する時期(3日〜30日)での脳卒中または全身性塞栓症

結果:
1)一時的中止後の脳卒中または全身性塞栓症;リバーロ群6.20/100人年vs. ワルファリン群5.05/人年、p=0.62

2)永久中止後早期:リバーロ群25.60/100人年vs. ワルファリン群23.28/人年、p=0.66

3)オープンラベルへの移行期:リバーロ群6.42/100人年vs. ワルファリン群1.73/人年、p=0.0044

4)至適INRへの回復時間:リバーロ群の方が遅い

5)塞栓症イベント(脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、血管死):有意差なし

結論:一時的中止あるいは永久中止後の早期においては両群でイベント差はなし。試験終了後のオープンラベルへの移行期において,リバーロ群の方がワルファリン群よりイベントが多い。この時期の抗凝固療法のカバーの重要性が強調されるべき。

### 一時的中止とは、手術その他の理由による3日以上(論文では平均6日間)の短期の中止のことです。一方大出血等の何らかの理由による永続的な中止およびオープンラベルへの移行期は、終了後3〜30日間のイベントを比べています。以前から指摘されているようにROCKET-AF試験は試験終了後にワルファリンを再開する際に前薬とのオーバーラップ期間を設けておりません。リバーロはすぐ体からはけますが、ワルファリンは至適INRになるまで2−4週くらいかかります(ワルファリンを以前服用していて至適用量がわかっている人は別ですが)。この論文でも30日後にINRが2以上になっているのは48.8%!にすぎません。これでは塞栓症を起こすのも当然ですね。

この論文は以前から言われていた、この試験の弱点というか、他の試験の新規経口抗凝固薬(NOAC)に比べリバーロがワルファリンより優位性を持たなかった理由の一つを、改めて論文化したものと言えます。

この欠点を受けて次のアピキサバンのARISTOTOLE試験ではオーバーラップ期間を3日間も受けたのですね(3日間でも足りない気もしますが)。

まあ試験のやり方の議論は専門の先生に任せるとして、わたしもNOACについてこれまでいろいろ経験してきたなかで、このNOACからワルファリンへ切り替える際が最も気を使うと言うか、トラブルが多いことを痛感しています。

逆はいいです。ワルファリン→NOACはそれほどトラブルはありません。ワルファリンは意外と速やかに体からはけます。

その逆は大変です。ワルファリンが至適INRに到達する時間は、本当に個人差が大きいです。1週間1mg/日ですぐINR2以上になる人もいれば、4週かかる人もいます。VKORC1の発限度の差が最も出る期間です。この個体差があるため、オーバーラップの時期も一律には決めがたいのが実情と思います.

この間、頻回に外来に来てもらい採血することになりますが、患者さんは大変です。できることなら一度NOACを始めたなら、ワルファリンに戻したくない。これが使用経験のある医師皆のホンネではないかと思います.
by dobashinaika | 2013-02-06 19:09 | 抗凝固療法:リバーロキサバン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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