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2012年心房細動関連論文ベスト5+α

今年も恒例の「今年の心房細動関連論文ベスト5」をお届けいたします。
じつは、すでにNikkei Medical Cadetto2012年冬号の「2012冬論文コレクション」で同様記事を掲載させていただいておりますが、同誌では一部昨年の論文も含まれておりますので若干手を加えてみたいと思います。
選択基準は,いつも通り「自分の診療において行動変容を促されたか」です。

第5位:抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン.日本消化器内視鏡学会雑誌
Vol. 54 (2012) No. 7 p. 2075-2102
7月に出た、日本消化器内視鏡学会の抗血栓薬服用者に対する内視鏡のガイドライン。ワーファリン休薬なしで生検は可能としたところが画期的でした。既に仙台市内の大きな病院の消化器科からは、ガイドライン通りにします旨の案内が届いています。ヘパリンブリッジや、2回胃カメラを受ける必要がないことは、患者さんにとって福音ですが、一方、エビデンズレベル、推奨レベルとも低く、コンセンサス重視のガイドラインであることはふまえるべきです。

第4位:Dabigatran in Clinical Practice for Atrial Fibrillation With Special Reference to Activated Partial Thromboplastin Time.
山下先生のグループのダビガトランにおけるaPTTチェックの妥当性を検証した論文。これによって、ダビガトランの使い方に一応一定の安心を持つことができました。今後の知の集積の礎になる知見と思います。

第3位:The value of the CHA2DS2-VASc score for refining stroke risk stratification in patients with atrial fibrillation with a CHADS2 score 0–1: A nationwide cohort study. Thrombosis and Haemostasis 2012: 107/6 (June) 1172-1179
コペンハーゲンのグループの大規模コホート研究。ESCガイドラインのネタ。CHA2DS2-VAScスコアの低スコアの取り扱いを比較的明確に示した論文です。個人的には60代後半女性というだけでワーファリンを出すのは未だに気後れする気もしますけれども。例えば65歳と、74歳ではかなり違うかとも思いますが.そこはスコアリングの限界ということで理解しています。

第2位:Nurse-led care vs. usual care for patients with atrial fibrillation: results of a randomized trial of integrated chronic care vs. routine clinical care in ambulatory patients with atrial fibrillation. Eur Heart J (2012) 33 (21): 2692-2699.
看護師主導ケアによるワーファリン管理で、心血管イベントなどアウトカムが改善したという研究.これほんとそうですよね。結局チャズだCHA2DS2だバスクだリライだなんだと言ったって、きちんと飲むこと、きちんと生活習慣病を管理することをしてなんぼですので。それも多職種共同でしないといけません.これからは。

第1位:2012 focused update of the ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation
An update of the 2010 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation
Developed with the special contribution of the European Heart Rhythm Association
Eur Heart J (2012) 33 (21): 2719-2747.

月並みな結果ですが、やはりESCのガイドラインです.65歳以上では皆脈を取れ、CHA2DS2-VAScスコア0点は抗凝固療法をするな。アスピリンはもう要らない。。。非常に明快でストレートなメッセージです。新規抗凝固薬礼賛なのは気になりますが、リアルワールドをガイドラインは牽引する,そんなパワーを感じました。

この他にも
抗凝固薬は高齢者の転倒リスクを増加させないとの研究
左心耳の形状と脳塞栓率の関係を検討した研究
大規模コホートでリズムコントロールの優位性を示した研究
心房細動カテーテルアブレーション6年間の長期追跡研究
ジギタリスが予後悪化に関連ありとするAFFIRMのサブ解析

等が印象に残りました。
今年は、新規抗凝固薬が2種類となり、それなりに知の集積がなされてきつつも、いまだ過渡期であることを皆が改めて実感してきた時代の前半、くらいの位置づけなのかという感じです。私としては、今後次の2つのことが心房細動治療のミッションになって行く気がしています。
1.無症候性(患者医療者ともに認知していない)あるいは“隠れ“(患者は認知しているが医療者に認知されていない)心房細動へのアプローチ研究
2.80歳以上高齢者への抗凝固療法

特に2は、最近再三ブログで述べていますが、今後数年でとてつもなく増える超高齢者のことを考えないでどうする、という思いがあります。この層をカバーし得る新規抗凝固薬は出てくるのでしょうか?やっぱりワーファリンは生き残るのでしょうか?

と問題提起しつつ、今年も一応締めとさせていただきます(あしたも論文紹介するかもしれませんがw)。個人的にはオンラインサイトの連載、雑誌の抗凝固療法の企画、web講演会、教科書等の執筆等々公に露出する機会が増えましたが、じぶんとしては、本ブログでだいたいコンスタントに1日1000アクセス以上いただけるようになったことが最もうれしいことです。ずれていることも多々書き散らしたかと思いますが、今後とも皆様、ご批判ご愛顧のほどなにとぞよろしくお願い申し上げます。
by dobashinaika | 2012-12-27 22:42 | 心房細動診療:根本原理 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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