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「現代医療は、今となっては過剰となった各システムに対するインヒビター医療である」:ある講演会より

本日は「“なぜCHADSが悪いのか?”:その凝血 学的意味」という演題名で鹿児島大学大学院医歯学総合研究科システム血栓制御学講座特任教授の丸山征郎先生のおはなしを拝聴することができました。

丸山先生は、私のブログが先生の目に止まったのがきっかけで、これまで折にふれてご指導を頂いたりしておりました。

本日は仙台にお越しいただけるとのことで、数カ月前から待ちに待っておりましたが、ご講演は期待に違わぬスケールの大きな感動的とも言える内容でした。

以下箇条書きで内容をご紹介いたします。走り書きで、かつ理解力不足のため、誤った内容があるかもしれませんが、ブログの上ということでお許しください。


【1.人の止血血栓メカニズム】
・人類の生存戦略は外敵からの攻撃による怪我、出血対策が主眼
・止血系は最も原理的な生存線
・しかし現代においてはこれがアダとなった。

・動物の循環系の進化は無循環系(節足動物)→開放循環系(節足動物)→閉鎖循環系(哺乳類)
・ 開放循環系は持続力に欠ける。閉鎖循環系はその点克服したが破綻時に血栓形成をきたすという弱点を持った。
・ 閉鎖循環系の恒常性は通常時非血栓性、血管破綻時即時的血栓形成の二面で支えられる。

・人間の出血防御システムとして第一は強い血管壁
・第二はカスケード型止血系で、増幅真空管型 、瞬間接着剤型という特性を持つ
・ 血中止血系(血小板、凝固因子類)は必要最低濃度より大幅に多く、「大過剰の状態」となっている
・ 血小板膜上は[増幅真空管型]であるカスケード反応により凝固因子活性は30〜50万倍に増幅される
・ 止血増幅加速装置としてビタミンK依存性凝固因子と血小板膜が大小様々な怪我と出血でも同じように迅速に反応でくるようになった
・本来凝固作用をPT,APTTで評価するのは不可能。本当はフィビリンの固まり量で評価すべき

・ 血管内皮細胞は抗血栓性である。血管内での凝固系の作動を血管内皮細動が防いでいる
・ 内皮細胞は抗血栓性ーシールドが剥がれるとスイッチはいる
トロンビンはトロンボモジュリンと結合することでベクトルを180度換えトロンビンートロンボモジュリン複合体として、プロテインCを活性化し抗凝固作用を発揮する
・ 我々はストレス、運動などでつねに内部から血管を損傷している。止血系は四六時中持続的に止血してくれるのである。
・糖尿病、高血圧等がもともとあると血管は損傷されやすい。PT PTTだけの評価だと最初からのそうした血管損傷が見過ごされる
・ 善玉血栓(止血目的)、悪玉血栓(血管を塞ぐ)の2つがある。ものは同じ。誰が打つかで決まる
・ 悪玉を打つ人はCRP,DAMPs,aubumin低値などをもつ
「飢餓に対する血糖維機構」「怪我に対する即時型止血系」「感染に対する免疫系」「乏塩に対するRAS系」などのカスケード型反応は、飽食時代の今となってはアダとなる
現代医療はインヒビター医療

【2・CHADS2解体新書】
・凝固に対する修復系は2つしかないーATIIIとプロテインC
・ 加齢によりーATIII,PCそしてトロンボモジュリンが下がる
・ DM、脂質異常症ではTMがダウンレギュレーションされる
血管拡張物質NO低下
・うっ血性心不全→うっ血肝でATIII低下、ずり応力低下によるTM低下(TM合成に関わる酵素類の発現低下)
・人間の寿命にして10倍生きると言われるはだかねずみではNO産生能が非常に高い

【3.心が小さい人は脳も小さい】
・心拍出量が低い人は脳容積が小さい
・正常範囲内の心係数であっても心機能低下は脳老化促進と関連する
・肝うっ血→脾うっ血→血管内をパトローリングしている単球減少→微小脳梗塞の修復能低下、により脳塞栓がますます起きやすくなる
・脳は自分で守ろうとしている。小血栓ならそれを吐き出す(extravasation)機能あり
・脳はリンパ組織のない唯一の臓器だが“洗脳“システムとしてのglymphatic systemがある
・骨髄で止血、免疫に関するいろんな細胞が一式産生ーリンパで循環され必要な部位に配達される
凝固系ー負荷試験できない

【4.ダビガトランの効果】
・T-TASという装置により血管内の血栓形成を可視化できるようになった。
・VII 阻害がワルファリンにおける問題。組織破綻時動員されるVIIがワーファリンで抑えられる。このため出血が多くなる。VIIは脳に特に多い
・ダビガトランによりフィブリン網目構造が疎になる→吐き出せる
・ワーファリンではフィブリンは小さくなるが密になってしまう

・心房細動になったら、以上のようなパトロールシステムやTM動員では間に合わない→神様は心房細動がおこるところまで人間が長生きするように想定していなかったのかもしれない

### まさに目からうろこ、目もくらむばかりの壮大な生命システム論です。「現代の医学は過剰なシステムに対するインヒビター医療」というのはまさに至言だろうとおもいます。

ここまで長命、ここまで飽食になることまで設計図には書いていなかったため、あらゆるシステムが過剰に働いてしまう現代人。現代医学はそれら、はからずも過剰との扱いを受けることになったシステムを抑制することに精力を注ぐことになったわけです。

心房細動においては、この過剰作動が左心耳血栓であり、インヒビター医療が抗凝固療法ということです。

何回でも丸山先生のお話をお聞きしたい、そういう気持ちにさせられました。
by dobashinaika | 2012-10-04 00:33 | 抗凝固療法:凝固系基礎知識 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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