Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes　9月4日オンライン版より

National Trends in Oral Anticoagulant Use in the United States, 2007 to 2011
doi: 10.1161/​CIRCOUTCOMES.112.967299

2007年から2011年までの米国における経口抗凝固薬使用の傾向

【方法】
・米国国内の代表的な報告書である米国処方データ統計書解析(NDTI)を使用

【結果】
１）ワーファリン治療による受診：四半期210万回から160万回に減少

２）ダビガトラン治療による受診：四半期62,000回から3,630,000回に増加。経口抗凝固薬にしめるシェアも3.1％から18.9％に増加

３）ワーファリンと対照的にダビガトランでの受診の大多数は心房細動であるが、2010年下四半期と2011年下四半期では、（心房細動への使用は）92％から63％に減少。適応外使用の増加のため

４）心房細動受診者の中では、ワーファリン使用率は55.8％から44.4％に減少。

５）一方ダビガトラン使用率は4.0％から16.9％に増加

６）心房細動受診者のうち、抗凝固薬非服薬者の割合は約40％で変りなし

７）ダビガトラン関連の医療費は、1600万ドル（2010年下四半期）から1億6,600万ドル（2011年下四半期）に急増し。ワーファリンの1億4400万ドルを抜いた

結論：ダビガトランは米国の外来診療、特に心房細動治療で急速に浸透しつつある。しかし適応外使用が増加している。心房細動での抗凝固療法全体の増加のエビデンスは見つけられなかった。

###　きわめて興味深いデータです。ダビガトランは、医療費の点でワーファリンを抜いたにもかかわらず抗凝固療法全体の底上げにはなっていない。その理由として適応外使用の増加をあげていますが、おそらく深部静脈血栓症等かと思われます。また、ワーファリンの使用率が減っていることから、やはり新規投薬よりワーファリンからの切り替えが多いのだろうと思われます。

日本で同じ調査をしたらどうでしょうか。おそらく似たような結果になるのではないかという気がします。
確かにプラザキサを処方する医師は多くなりましたが、やはりこれまでワーファリンの使用をルーチンで行なっていた循環器専門医や神経内科専門医、あるいはワーファリン処方に慣れている開業医の先生などからの処方が主なのではないかという気がします。
ブルーレターの影響、あるいはモニタリングその他の知の集積が発展途上段階であることから、「市場開拓」という意味での現象としてのパラダイムシフトは起きていないという気がします（空気感だけでの“感想”ですが）。

上記の非服用者40％を減らしていくには、やはりプライマリケア医が、本来適応ながら出し控えていた患者さんに、躊躇なく処方していくことが不可欠かと思います。

その点どうでしょうか。モニタリングや投与方法の知見がいくら開拓され、啓発されても、事新規抗凝固薬に関する限り「出血への恐れ」という暗黙知が消えない以上、そう劇的なシェア拡大やパラダイムシフトはやっぱり、これからも当分起きないのではないか、という気がします。

米国でなぜ40％が減らないのか、ぜひ知りたいところです。