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心房細動リズムコントロールの優位性を示したコホート研究への専門家の見解:heart wireより

先日ブログで取り上げましたカナダ、ケベックのリズムコントロール優位だった大規模コホート試験に対して医学サイトの"heart wire"から、専門家の論評が掲載されています。
http://www.theheart.org/article/1409513.do

モントリオールMcGill UniversityのDr Louise Piloteの見解
・この知見は、レートコントロールを意思決定する前に、その患者が実際リズムコントロールの俎上に上げるべきかどうか、また少なくともリスムコントロールに耐えうる患者かどうかを見ようとすべきである、ということの示唆である。

・AFFIMR前はリズムコントロールはレートコントロールより優位であり、洞調律の維持は心不全、脳塞栓を減らし、死亡率低下に寄与すると考えられていた。しかしAFFIR以降は専門家はどちらも同等と考えるようになった。

・現在我々は、優良なるリズムコントロール薬を持ち合わせていない。それが本当の問題だ。AFFIRMでさえ、リズムコントロール群では慢性化は遅れた(それは脳卒中をより増加した)

・もし可能な限り洞調律を維持出来れば、死亡率は減るかもしれない。しかしそれは我々が良いリズムコントロール薬を持ち合わせていないためであり、それは偶発的なことではない

・我々はリズムコントロールに忍容性があれば、洞調律を維持でき、結局は死亡率を減らすことのできる患者群のいることを知っている

・このことは脳卒中に限ったことではなく、心不全や不整脈にまつわる合併症を減らし、死亡を減らすことも可能であろう

University of CalgaryのDr Anne Gillisの見解
・この研究におけるリズムコントロール群の優位は、ベースラインの差に起因し、薬剤の効果の差ではない

・リズムコントロール群はレートコントロール群より若く(77歳vs.80歳)、ワーファリン使用者が多い(60.1%vs.54.4%)

・心房細動の症状の重症度の記載なし(これによってどちらにするか変わってくる)

・リスムコントロール群の40%にジゴシンが処方されていた

・データとしては面白く、今後への期待はあるが、住民ベース研究としての限界があり心房細動のアプローチ法を変えるべきではない

・リスムコントロールを決定するには患者の症状を書き留めねばならない。抗不整脈薬の有害作用があるからである

・レートコントロールがうまく行かなくてもさらなる最適化を図ることが症状緩和につながる

Editorialの2人はDr Gillに賛成
・リズムコントロールは医学的問題の少ない若年者に偏る、という交絡に陥りがち

・今回の知見は挑発的だが、一般化するには不十分

・より安全で効果的な洞調律維持戦略が考えられ、現代的な抗凝固療法と結びつけば明らかな効果が出るであろう

・CRBANA試験によりアブレーションがリズムコントロールをうわ回る結果が期待される

・しかしながら、再発のことを考えるとアブレーション後早期の抗凝固療法中止は勧められないだろう

### Pilote先生、Gills先生どちらも一理ありです。もちろんコホート研究ですからバイアスがあるのは当然で、リズムコントロール群のほうが「軽い」症例が多いことは否めません。

しかし、AFFIRMでも予後に影響を与えた因子として「洞調律維持できたこと」が統計的に有意であったことが挙げられていますし、途中で抗凝固療法をやめていなければもう少し良い結果が出たことはよく言われています。

Pilote先生の期待もよくわかるし、理論的には陰性変力作用や催不整脈作用のない心房細動予防薬があればそれがベストであることはわかりますが、今現在そんな都合の良いdream drugはありません(心房特異的Kチャネル阻害薬が治験終了段階ですが)。

いまのところ最善のアプローチはまず、レートコントロールが基本。その上で心房細動は「早期発見」を旨とし、なるべく「早期介入」に心がける。プライマリケア医としては、dream drugが出るまで、地道に血圧、血糖コントロールし、症状に応じてアブレーションや抗不整脈薬を考える、ということしかないです。ありきたりですが。
by dobashinaika | 2012-06-11 23:35 | 心房細動:ダウンストリーム治療 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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