4段階層別化で考える「プラザキサが適する患者像」
本日「抗凝固療法の適切な普及のために」と題するディスカッションにパネリストとして参加いたしました。
私は「プラザキサが適する患者像とは」について主に述べさせていただきました。
時間等で割愛した点も含めて、現時点での抗凝固薬選択について、私の言いたかったことをまとめました。
1)抗凝固療法は「リスク」「ベネフット」「コスト(または患者の負担burden)」の3つの側面から考えるべき。現時点ではその中でも、「リスク」を最も重視すべき。プラザキサのリスクにおいて一番考えなければならないことは「腎機能=クレアチニンクリアランス」である。クレアチニンクリアランス低値(当院では40未満)ならプラザキサは投与しないというのを、まず最低基本ラインとして抑えるべき
2)その上で「プラザキサを投与すべき例」「どちらかと言えばプラザキサが良い例」「どちらかと言えばワーファリンが良い例」「ワーファリンを投与すべき例」の4段階くらいに分けて考えている。この4段階は各症例の「リスク」「ベネフィット」「コスト」を考えあわせて決める
3)現時点の当院のおおまかな方針
・プラザキサを投与すべき例=ワーファリンのコントロール不良(不適患者)、納豆をどうしても食べたい方
・どちらかと言えばプラザキサが良い例=新患の方。75歳未満、CHADS2スコア1点以下、コストを気にしない方、夕方の飲み忘れのない方。アブレーション前後、侵襲的手技前後の方
・どちらかと言えばワーファリンが良い例=75歳以上、CHADS2スコア2点以上、コストが気になる方、夕方飲み忘れる方。抗血小板薬2剤の方
・ワーファリンを投与すべき例=CCr低下例。ワーファリンでINRが大変安定している方
もちろん実際は、いろいろ患者さんとの間には数々の機微があって、一律には決められませんが、だいたいこんな感じです。
現在リスク重視の立場ですが、経験値が蓄積されてくれば、リスクの閾値はより低くなり、上記4段階の区別も変わってくると思われます。
それとイグザレルトが普及してくれば、また別の象限を考える必要があります。
基本的に高齢者ほどワーファリン、というが私の考えなのですが、ワーファリンに慣れ親しんできたものの意見であり、これから抗凝固療法を始めようとする循環器非専門医の先生にとっては参考にならないかもしれません。
現実的には75歳以上であっても、腎機能がしっかり安定している場合は、プラザキサで良いと思われます。ただしやはり腎機能、APTTをしっかりモニターすることが大切と思います。そしてやはり80歳以上では出来るだけワーファリンを、と思います。
なお、既に学会発表はされていますが、リバーロキサバンの日本人対象、J-ROCKET AF試験がCirculation Journalに論文化されました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/advpub/0/advpub_CJ-12-0454/_article
早くここにアップしたいのですが、これは大切な論文ですのできちんと読み込んでからにします。しばらくお待ち下さい。
私は「プラザキサが適する患者像とは」について主に述べさせていただきました。
時間等で割愛した点も含めて、現時点での抗凝固薬選択について、私の言いたかったことをまとめました。
1)抗凝固療法は「リスク」「ベネフット」「コスト(または患者の負担burden)」の3つの側面から考えるべき。現時点ではその中でも、「リスク」を最も重視すべき。プラザキサのリスクにおいて一番考えなければならないことは「腎機能=クレアチニンクリアランス」である。クレアチニンクリアランス低値(当院では40未満)ならプラザキサは投与しないというのを、まず最低基本ラインとして抑えるべき
2)その上で「プラザキサを投与すべき例」「どちらかと言えばプラザキサが良い例」「どちらかと言えばワーファリンが良い例」「ワーファリンを投与すべき例」の4段階くらいに分けて考えている。この4段階は各症例の「リスク」「ベネフィット」「コスト」を考えあわせて決める
3)現時点の当院のおおまかな方針
・プラザキサを投与すべき例=ワーファリンのコントロール不良(不適患者)、納豆をどうしても食べたい方
・どちらかと言えばプラザキサが良い例=新患の方。75歳未満、CHADS2スコア1点以下、コストを気にしない方、夕方の飲み忘れのない方。アブレーション前後、侵襲的手技前後の方
・どちらかと言えばワーファリンが良い例=75歳以上、CHADS2スコア2点以上、コストが気になる方、夕方飲み忘れる方。抗血小板薬2剤の方
・ワーファリンを投与すべき例=CCr低下例。ワーファリンでINRが大変安定している方
もちろん実際は、いろいろ患者さんとの間には数々の機微があって、一律には決められませんが、だいたいこんな感じです。
現在リスク重視の立場ですが、経験値が蓄積されてくれば、リスクの閾値はより低くなり、上記4段階の区別も変わってくると思われます。
それとイグザレルトが普及してくれば、また別の象限を考える必要があります。
基本的に高齢者ほどワーファリン、というが私の考えなのですが、ワーファリンに慣れ親しんできたものの意見であり、これから抗凝固療法を始めようとする循環器非専門医の先生にとっては参考にならないかもしれません。
現実的には75歳以上であっても、腎機能がしっかり安定している場合は、プラザキサで良いと思われます。ただしやはり腎機能、APTTをしっかりモニターすることが大切と思います。そしてやはり80歳以上では出来るだけワーファリンを、と思います。
なお、既に学会発表はされていますが、リバーロキサバンの日本人対象、J-ROCKET AF試験がCirculation Journalに論文化されました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/advpub/0/advpub_CJ-12-0454/_article
早くここにアップしたいのですが、これは大切な論文ですのできちんと読み込んでからにします。しばらくお待ち下さい。
by dobashinaika
| 2012-06-06 23:43
| 抗凝固療法:ダビガトラン
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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