人気ブログランキング |

カナダの心房細動ガイドラインアップデート:脳卒中予防がよりクリアカットに

カナダ心血管協会のガイドラインが脳卒中予防とリズム・レートコントロールに焦点を当ててアップデートされました。
脳卒中予防の部分のみ紹介いたします。

Focused 2012 Update of the Canadian Cardiovascular Society Atrial Fibrillation Guidelines: Recommendations for Stroke Prevention and Rate/Rhythm Control
Canadian Journal of Cardiology
Volume 28, Issue 2 , Pages 125-136, March 2012


Figure1. CHADS2スコアに基づく抗血栓薬推奨
a0119856_0132587.jpg


・すべての心房細動または心房粗動でCHADS2スコア、HAS-BLEDスコアを評価する(推奨度:強、エビデンスの質:高)
・殆どの患者に抗凝固薬またはアスピリン(推奨度:強、エビデンスの質:高)
・抗凝固薬にはワーファリンよりもダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン(推奨度:条件付き、エビデンスの質:高)

・高リスク=CHDAS2スコア2点以上は抗凝固療法(推奨度:強、エビデンスの質:高)
・中等度リスク=CHADS2スコア1点は抗凝固療法(推奨度:強、エビデンスの質:高)
・個々のリスク・ベネフィットに基づくアスピリン使用は抗凝固薬の代替薬として合理的(推奨度:条件付き、エビデンスの質:中等度)
・低リスク=CHADS2スコア0点は、追加リスク(65−74歳、女性、併存血管疾患)を考慮(推奨度:条件付き、エビデンスの質:中等度)
・低リスク=CHADS2スコア0点では、年齢65歳以上または女性かつ併存血管疾患ありで抗凝固薬、女性あるいは併存血管疾患でアスピリン、追加リスクゼロで抗血栓薬なし(推奨度:条件付き、エビデンスの質:低)

Figure2. 冠動脈疾患合併例での抗血栓薬推奨
a0119856_0152691.jpg

・安定狭心症(推奨度:条件付き、エビデンスの質:中等度)
 CHADS2スコア0点:アスピリン
 CHADS2スコア1点以上;抗凝固薬
・急性冠症候群またはPCI (推奨度:条件付き、エビデンスの質:低)
 CHADS2スコア1点以下;アスピリン+クロピドグレル
 CHADS2スコア2点以上:抗凝固薬+アスピリン+クロピドグレル

###まとめると
1)CHADS2スコア1点以上は抗凝固薬(1点はケースによりアスピリン)
2)CHADS2スコア0点は「65歳−74歳」または「女性かつ血管疾患」なら抗凝固薬、「女性」または「血管疾患」ならアスピリン、
3)CHA2DS-VAScスコア0点は抗血栓薬なし
4)抗凝固薬はワーファリンよりダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン


ということで、非常にクリアカットになっています。
この方法はESCガイドラインに似ていますが、CHADS2CAScスコアのVAScの部分のうち65−74歳を他の2つより上位においているのが特徴です。
実質的には65−74歳はCHADS2スコアの1点と同等となっています。
私は「65歳ー74歳」「血管疾患」をCHADS2スコア1点と同等とみなしていましたので、ほぼ賛成の内容と思います。

日本ではアスピリンがガイドラインから消えているため、上記を適応するならCHADS2スコア1点以上はすべて抗凝固薬となります。となると「Stroke/TIA」は2点にしておく価値はあまりなくなり、一方65歳以上を全て1点にして良いことになります。なおかつ「女性かつ血管疾患」を1点としてCHAD-VSc(チャドバスク)スコアにしたほうがすっきりするのではと言う気もします。あるいはFemaleのFをとってCHAD-VFスコアとかのほうが覚えやすいかもしれません。(ScがSex categoryというのは覚えにくいので)

近い将来日本でも改定される(べき)ことは必至でしょう。昨年8月のステートメントではダビガトランしか推奨されていませんので、他の新規抗凝固薬も入れる必要もありますし、65歳以上がクローズアップされてきていますし。
日本ではJAST研究の結果からアスピリン排除されていますが、上記のように細かにカテゴリー分けした場合、全然出番が無いことはないようにも思います。低リスクのサブグループでアスピリンの効果がどうかについては日本でもわかっていないように思います。
by dobashinaika | 2012-03-24 00:22 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


by dobashinaika

プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

カテゴリ

全体
インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
未分類

タグ

(40)
(34)
(34)
(27)
(27)
(26)
(25)
(24)
(21)
(20)
(19)
(18)
(17)
(16)
(14)
(13)
(13)
(13)
(13)
(13)

ブログパーツ

ライフログ

著作

もう怖くない 心房細動の抗凝固療法


プライマリ・ケア医のための心房細動入門

編集

治療 2015年 04 月号 [雑誌]

最近読んだ本

ケアの本質―生きることの意味


ケアリング―倫理と道徳の教育 女性の観点から


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)


健康格差社会への処方箋


神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性 (Ν´υξ叢書)

最新の記事

心房細動診断においてスマホに..
at 2019-09-19 06:30
第17回どばし健康カフェ「心..
at 2019-09-05 08:51
強い症状のない血行動態の安定..
at 2019-09-04 06:36
冠動脈疾患合併心房細動におけ..
at 2019-09-03 07:29
製薬企業をスポンサーとするD..
at 2019-08-30 08:29
心房細動に対する経皮的頸動脈..
at 2019-08-22 06:42
フレイルと心房細動,抗凝固療..
at 2019-08-21 07:00
オープンダイアローグと診療所診療
at 2019-08-13 07:00
周術期ヘパリンブリッジなしで..
at 2019-08-09 06:28
日経メディカルオンライン更新..
at 2019-08-06 07:30

検索

記事ランキング

最新のコメント

いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
いつもブログ拝見しており..
by さすらい at 16:25
取り上げていただきありが..
by 大塚俊哉 at 09:53
> 11さん ありがと..
by dobashinaika at 03:12
「とつぜんし」が・・・・..
by 11 at 07:29
> 山川玲子さん 山川..
by dobashinaika at 23:14
運慶展を観た方にWEB小..
by omachi at 19:45
> terryさん ご..
by dobashinaika at 08:38
簡潔なまとめ、有り難うご..
by 櫻井啓一郎 at 23:16
いつも大変勉強になります..
by n kagiyama at 14:39

以前の記事

2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月

ブログジャンル

健康・医療
病気・闘病

画像一覧

ファン