日本循環器学会2日目:「心房細動管理における抗凝固療法の最新の話題」のまとめ #nichijun
日本循環器学会2日目ランチョンセミナー「心房細動管理における抗凝固療法の最新の話題」のまとめです。
得られた知見を私の目を通した形で箇条書きいたしました。走り書きメモが元ですので、誤りが含まれている可能性があることをご勘案ください。本記事の文責はすべて小田倉にあることを述べさせていただきます。
[CHADS2の解体新書(丸山征郎先生、鹿児島大学)]
・われわれ人類は、外敵からの攻撃で外傷を受けた場合にそなえて止血システムが備わっている
・止血は血管破綻部位のみに、爆発的に起こり、自動的にシャットオフされる
・止血系は中枢指令のない自己組織性を持った反応系である
・凝固系は凝固促進系であり、カスケード反応により反応が増幅する。
・血小板膜上の「増幅真空管型」である
・IX→IXaで50万倍、X→Xaで30万倍の活性増幅があり、全体で1億倍の増幅がある「増幅真空管型」である
・血管内皮細胞は抗血栓的である。トロンビンはトロンボモデュリンの作用で作用ベクトルを180度変換される
・止血系は血管の破綻のその場で作用する「オンデマンド型」である
・生体はけがとアテロームを識別できないため、アテロームに対して誤作動を起こし血栓が形成される
・CHADS2スコアの加齢、心不全、糖尿病、高血圧のそれぞれに各種サイトカインや凝固因子が活性化される背景を持つ
・これまでのPTINRやaPTTは出血傾向の指標であり、血栓形成の指標はこれまでなかった
・T-TASと呼ばれる血栓形成測定装置を開発し、抗血小板薬や新規抗凝固薬への反応や抵抗性を評価できる可能性がある
・多病多死時代を迎え、人類が長い間に培ってきた生体防御システムが過剰になってきた、そのひとつが止血系。これをうまくコントロールする必要がある
[ダビガトラン処方のコツー使用経験からの考察(山下武志先生、心臓血管研究所)]
・ブルーレターでみられたダビガトランによる大出血を全く経験しない。なぜか
・RE-LY試験をよく見ると、75歳未満およびCHADS2スコア0-1点でワーファリンよりダビガトランで出血が少ないのである。一方効果は同等かそれ以上である。
・実臨床では75歳未満、CHADS2スコア1点未満の人に多く投与されているため出血が少ない
・ワーファリンは継続的な「モニタリング」、ダビガトランは投与初期の「チェック」という概念
・ダビガトラン投与前、2週間後、そのまた2週間後にaPTT、腎機能、ヘモグロビンをチェック。最初安定していれば以後は2-3カ月に1回
・CCR40以下は出さない
・おおむね110mgx2。若年者で腎機能良好、合併症なし場合150x2
・65-74歳はCHADS2スコア1点と考えたい
###丸山先生はのレクチャーはまさにわれわれ循環器医の暗きを啓いてくれる内容です。循環器学会にとっても貴重な存在と思います。こういうコラボは大変大切と思われます。
山下先生のお話も、多くの経験に根差した説得力の強い戦略と思います。この戦略は広く広まるのではないでしょうか。apTTの保険適応が気になりますが。
だんだんに新規抗凝固薬の「専門知」が集積されつつあることを感じます。
得られた知見を私の目を通した形で箇条書きいたしました。走り書きメモが元ですので、誤りが含まれている可能性があることをご勘案ください。本記事の文責はすべて小田倉にあることを述べさせていただきます。
[CHADS2の解体新書(丸山征郎先生、鹿児島大学)]
・われわれ人類は、外敵からの攻撃で外傷を受けた場合にそなえて止血システムが備わっている
・止血は血管破綻部位のみに、爆発的に起こり、自動的にシャットオフされる
・止血系は中枢指令のない自己組織性を持った反応系である
・凝固系は凝固促進系であり、カスケード反応により反応が増幅する。
・血小板膜上の「増幅真空管型」である
・IX→IXaで50万倍、X→Xaで30万倍の活性増幅があり、全体で1億倍の増幅がある「増幅真空管型」である
・血管内皮細胞は抗血栓的である。トロンビンはトロンボモデュリンの作用で作用ベクトルを180度変換される
・止血系は血管の破綻のその場で作用する「オンデマンド型」である
・生体はけがとアテロームを識別できないため、アテロームに対して誤作動を起こし血栓が形成される
・CHADS2スコアの加齢、心不全、糖尿病、高血圧のそれぞれに各種サイトカインや凝固因子が活性化される背景を持つ
・これまでのPTINRやaPTTは出血傾向の指標であり、血栓形成の指標はこれまでなかった
・T-TASと呼ばれる血栓形成測定装置を開発し、抗血小板薬や新規抗凝固薬への反応や抵抗性を評価できる可能性がある
・多病多死時代を迎え、人類が長い間に培ってきた生体防御システムが過剰になってきた、そのひとつが止血系。これをうまくコントロールする必要がある
[ダビガトラン処方のコツー使用経験からの考察(山下武志先生、心臓血管研究所)]
・ブルーレターでみられたダビガトランによる大出血を全く経験しない。なぜか
・RE-LY試験をよく見ると、75歳未満およびCHADS2スコア0-1点でワーファリンよりダビガトランで出血が少ないのである。一方効果は同等かそれ以上である。
・実臨床では75歳未満、CHADS2スコア1点未満の人に多く投与されているため出血が少ない
・ワーファリンは継続的な「モニタリング」、ダビガトランは投与初期の「チェック」という概念
・ダビガトラン投与前、2週間後、そのまた2週間後にaPTT、腎機能、ヘモグロビンをチェック。最初安定していれば以後は2-3カ月に1回
・CCR40以下は出さない
・おおむね110mgx2。若年者で腎機能良好、合併症なし場合150x2
・65-74歳はCHADS2スコア1点と考えたい
###丸山先生はのレクチャーはまさにわれわれ循環器医の暗きを啓いてくれる内容です。循環器学会にとっても貴重な存在と思います。こういうコラボは大変大切と思われます。
山下先生のお話も、多くの経験に根差した説得力の強い戦略と思います。この戦略は広く広まるのではないでしょうか。apTTの保険適応が気になりますが。
だんだんに新規抗凝固薬の「専門知」が集積されつつあることを感じます。
by dobashinaika
| 2012-03-18 08:03
| 抗凝固療法:全般
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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