日本循環器学会1日目「ダビガトランの使い方。私はこう考える」のまとめ #nichijun
日本循環器学会1日目ファイアサイドセミナー「ダビガトランの使い方。私はこう考える」のまとめです。
不整脈、抗凝固療法の第一人者揃いのぜいたくなセッションでした。これもっと時間をとってシンポジウムでよかったと思いました。
それぞれディスカッションの流れの中で浮かび上がったポイントを、私が見聞した範囲で私の視点から挙げました。内容は発表と異なる点もあるかと思いますので、その点はご勘案ください。本記事の文責はすべて小田倉にあることを述べさせていただきます。
<ダビガトラン処方のコツ>
・一次予防ではクレアチニンクリアランス50未満では使用しない。二次予防としては30‐50でもダビガトランを使う
・高齢、腎機能低下、併用注意薬、出血の既往のうち2つ以上あった時は原則ワーファリンあるいは110㎎BIDだが、2つの組み合わせによって、例えば高齢、腎機能低下ならワーファリン。併用注意薬+その他ならダビガトランという選択肢でもよい
・抗血小板薬併用の場合、3剤併用ならワーファリン。アスピリンのみとならダビガトラン110mg BID
・二次予防から言えば、抗血小板薬はワーファリンの代わりにならないが、ワーファリンは抗血小板薬の代わりになるとの発想から、ワーファリンまたはダビガトランのみの選択肢もあり
・75mgx2は、どうしてもワーファリンに戻りたくない人に限って説明と同意の上使用することもあり
・ディスペプシア対策はコップ一杯の水、もしくは制酸薬、粘膜保護薬で解決できる
<モニタリング>
・aPTTをモニターする
・投与前、2週間後、さらに2週間後、それで安定が確認されれば2ー3カ月に1回
・ピークで取るかトラフで取るかは施設による。ピークはばらつきが多い。
・何秒以上でダメというより、施設基準値上限の2倍以上という言い方の方が適切。aPTT70秒以上は投与しないという施設あり
・aPTTが低くても「効かない」とはいえない。あくまで出血の指標であり、効果をみるものではない
・aPTTが不安定な例では利尿薬服用、夏で脱水などの要素も考慮
・凝固脳の指標として可溶性フィブリンモノマー複合体(SFMC)がよいかもしれない
<ダビガトランが適する患者像>
・CHADS2スコアが低い人(0,1点)、クレアチニンクリアランス50以上の人
・年齢については一次予防の立場からは80歳以上は出さない、二次予防の立場からは一律に考えず
・低体重者に注意
・65―74歳はCHADS2スコア1点に入れてもよいかもしれない
・二次予防の点からいってもCHA2DS-VAScスコア0点なら服用必要ない
<質疑応答>
Q:CCr50未満の人はワーファリンでも注意する必要がある。むしろ出血を恐れて150x2でもよい人に慎重投与してしまっているかもしれないがどうか?
A:この薬が市場から消えてしまうことを恐れる。現段階ではCCr50以上とし、30-50はデータの蓄積が必要と考える
Q:70歳以下の人も70歳になったら110mgx2にするのか?
A:腎機能は徐々に低下するのでそうしたほうがよい。ただし二次予防で再発リスクが高い層は150x2も考慮
Q:リバーロキサバンの例もあり1日1回でもよいのでは
A:その可能性はあるが、データなし
Q:薬価を下げる動きは?
A:PPIやプレタールの先例のように臨床医がたくさん使うことくらいしか今のところ方法がない
###非常に興味深いディスカッションでした。このセッションを通じて以下の点がだいたいのコンセンサスであることを学びました
1)ダビガトラン積極投与はCCr50以上、CHADS2スコア1点以上
2)勧められないのは80歳以上、CCr50未満の一次予防
3)65―74歳もCHADS2スコア1点と考える
4)aPTTモニターは投与前、2週後、そのまた2週後、そこで安定していれば2-3カ月に1回
5)施設基準値上限2倍(70秒以上?)を超えたらワーファリン
###熊谷浩一郎先生の「ダビガトラン服用患者さん100人に聞きました」が個人的には考えさせられました。医者が「高いリスクですが飲みますか」というと66%が積極同意、「低いリスクですが。。」と言うとそれが32%に減る。医者の説明の仕方が患者同意を左右するとのことです。
これへの解決策は、やはり地道にリスクとベネフィットを説明することしかないと思われます。この時リスクの高低だけでなくベネフィットもきちんと説明する必票があります。そしてもう一つ、以前から述べているように薬価、飲みやすさ、採血、食事といったことをひっくるめた「コスト」も説明したうえで同意を進めることしかないでしょう(なお熊谷先生のデータでは採血や1日2回服用などはそれほど患者さんの負担ではなかったとのこと)。その中で科学的根拠を出すか、医者としての信頼感だけで同意を得るかは患者さんごと、個々のコミュニケーションごとで一律には扱えないというしかありません。
不整脈、抗凝固療法の第一人者揃いのぜいたくなセッションでした。これもっと時間をとってシンポジウムでよかったと思いました。
それぞれディスカッションの流れの中で浮かび上がったポイントを、私が見聞した範囲で私の視点から挙げました。内容は発表と異なる点もあるかと思いますので、その点はご勘案ください。本記事の文責はすべて小田倉にあることを述べさせていただきます。
<ダビガトラン処方のコツ>
・一次予防ではクレアチニンクリアランス50未満では使用しない。二次予防としては30‐50でもダビガトランを使う
・高齢、腎機能低下、併用注意薬、出血の既往のうち2つ以上あった時は原則ワーファリンあるいは110㎎BIDだが、2つの組み合わせによって、例えば高齢、腎機能低下ならワーファリン。併用注意薬+その他ならダビガトランという選択肢でもよい
・抗血小板薬併用の場合、3剤併用ならワーファリン。アスピリンのみとならダビガトラン110mg BID
・二次予防から言えば、抗血小板薬はワーファリンの代わりにならないが、ワーファリンは抗血小板薬の代わりになるとの発想から、ワーファリンまたはダビガトランのみの選択肢もあり
・75mgx2は、どうしてもワーファリンに戻りたくない人に限って説明と同意の上使用することもあり
・ディスペプシア対策はコップ一杯の水、もしくは制酸薬、粘膜保護薬で解決できる
<モニタリング>
・aPTTをモニターする
・投与前、2週間後、さらに2週間後、それで安定が確認されれば2ー3カ月に1回
・ピークで取るかトラフで取るかは施設による。ピークはばらつきが多い。
・何秒以上でダメというより、施設基準値上限の2倍以上という言い方の方が適切。aPTT70秒以上は投与しないという施設あり
・aPTTが低くても「効かない」とはいえない。あくまで出血の指標であり、効果をみるものではない
・aPTTが不安定な例では利尿薬服用、夏で脱水などの要素も考慮
・凝固脳の指標として可溶性フィブリンモノマー複合体(SFMC)がよいかもしれない
<ダビガトランが適する患者像>
・CHADS2スコアが低い人(0,1点)、クレアチニンクリアランス50以上の人
・年齢については一次予防の立場からは80歳以上は出さない、二次予防の立場からは一律に考えず
・低体重者に注意
・65―74歳はCHADS2スコア1点に入れてもよいかもしれない
・二次予防の点からいってもCHA2DS-VAScスコア0点なら服用必要ない
<質疑応答>
Q:CCr50未満の人はワーファリンでも注意する必要がある。むしろ出血を恐れて150x2でもよい人に慎重投与してしまっているかもしれないがどうか?
A:この薬が市場から消えてしまうことを恐れる。現段階ではCCr50以上とし、30-50はデータの蓄積が必要と考える
Q:70歳以下の人も70歳になったら110mgx2にするのか?
A:腎機能は徐々に低下するのでそうしたほうがよい。ただし二次予防で再発リスクが高い層は150x2も考慮
Q:リバーロキサバンの例もあり1日1回でもよいのでは
A:その可能性はあるが、データなし
Q:薬価を下げる動きは?
A:PPIやプレタールの先例のように臨床医がたくさん使うことくらいしか今のところ方法がない
###非常に興味深いディスカッションでした。このセッションを通じて以下の点がだいたいのコンセンサスであることを学びました
1)ダビガトラン積極投与はCCr50以上、CHADS2スコア1点以上
2)勧められないのは80歳以上、CCr50未満の一次予防
3)65―74歳もCHADS2スコア1点と考える
4)aPTTモニターは投与前、2週後、そのまた2週後、そこで安定していれば2-3カ月に1回
5)施設基準値上限2倍(70秒以上?)を超えたらワーファリン
###熊谷浩一郎先生の「ダビガトラン服用患者さん100人に聞きました」が個人的には考えさせられました。医者が「高いリスクですが飲みますか」というと66%が積極同意、「低いリスクですが。。」と言うとそれが32%に減る。医者の説明の仕方が患者同意を左右するとのことです。
これへの解決策は、やはり地道にリスクとベネフィットを説明することしかないと思われます。この時リスクの高低だけでなくベネフィットもきちんと説明する必票があります。そしてもう一つ、以前から述べているように薬価、飲みやすさ、採血、食事といったことをひっくるめた「コスト」も説明したうえで同意を進めることしかないでしょう(なお熊谷先生のデータでは採血や1日2回服用などはそれほど患者さんの負担ではなかったとのこと)。その中で科学的根拠を出すか、医者としての信頼感だけで同意を得るかは患者さんごと、個々のコミュニケーションごとで一律には扱えないというしかありません。
by dobashinaika
| 2012-03-17 17:56
| 抗凝固療法:ダビガトラン
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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