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日本循環器学会1日目、新規抗凝固薬の2つのセッション報告#nichijun

第76回日本循環器学会出席のため福岡に来ています。
あいにくくもりか雨のぐつついた天気ですが、そのせいかどこへも行かず、一日まじめに参加しました。

今日聞いたセッションは次の4つ
・コメディカル一般演題(ポスター)「薬剤・ダビガトラン」
・ランチョンセミナー「Stroke prevention in atrial fobrillation]
・トピックス4「凝固系線溶治療のupdate」
・ファイアサイドセミナー「新規抗凝固薬の期待と課題『ダビガトランの使い方。私はこう考える』」

全部抗凝固薬のセッションを選んでしまいました(笑)

さすがにホットな話題のため、どこも満員の盛況で、この分野への関心の高さを改めて知らされます。

今日は全2つの見聞した内容を紹介します。

<コメディカルセッション>
コメディカルセッションでありながら、医師の聴衆も多数みられ、黒山の人だかりでした。
各病院の薬剤部門で、腎機能や年齢、併用薬剤に逸脱が見られないか、医師の処方箋をチェックし、疑義紹介をして安全に努めているようです。
ある施設ではすでに200例以上に処方され、中には110mg1日1回。75mg1日2回などの処方もなされていました。
このように、大量処方している医療施設での使用経験は、皆が知りたいところです。今回医師セッションではそういう演題があまりないように思われ、残念です。

<ランチョンセミナー>
McMaster大学(カナダ)のJeffrey Weitz先生の講演です。
Switching(ワーファリンからダビガトランあるいはリバーロキサバン。またはその逆)
Monitoring(モニタリング)
Peri-Procesual management(手術前後の管理)
Reversal(出血時の中和)
の4点に集約される新規抗凝固薬の「知りたいポイント」をきっちり説明していただきました。

以下、知見の列挙
・カナダではINR2.0未満を確認してからワーファリンから変更、ただし高リスク例では2.5未満で変更

・ダビガトランはaPTT、リバーロキサバンはPT-INRをモニターする

・プロトロンビン複合体製剤はダビガトランよりリバーロキサバンの中和に適するとの論文があるが、動物実験ではダビガトランにも効果あり

・現在新規中和薬の第I相試験進行中

・カナダでは抗凝固薬処方の15%が新規抗凝固薬

・カナダでのダビガトランとリバーロキサバンの使い分け
1)脳梗塞/TIAの既往例はリバーロキサバン:ROCKET-AF試験症例の50%は既往例なので
2)1日1回か2回は患者と相談
3)カナダでもダビガトラン処方例の50~60%は110mgx2⇒腎機能を気にするため。腎機能低下例でリバーロキサバンを処方しやすい可能性あり
4)消化器症状があればリバーロキサバン

・弁膜症性心房細動の治験は現在第I相

・CHADS2スコア1点例はROCKET-AF試験には登録なしだが、高リスクで有効であれば低リスクで
も有効と考えるのは合理的

・ワーファリンで脳出血が新規抗凝固薬より多いのは、ワーファリンは作用後トロンビン生成までにタイムラグがあり、ダビガトランと比べトロンビン生成、クロット生成を脳内で生じさせないため

カナダでも110mgx2の処方がどうしても多くなるというのが、どこの国でも同様の傾向があることが分かり興味深い点でした。

残り2つのセッションも非常に興味深く、特に最後のセッションは書きたいこと満載ですが、深夜になってしまったので、明日にします。

なお上記記載内容は、小田倉が自分の視点を通して見聞した記事内容であり、の文責はすべて、小田倉にありますことをお断り申し上げます。

巨大スペースでの医療機器展示
日本循環器学会1日目、新規抗凝固薬の2つのセッション報告#nichijun_a0119856_05219.jpg


あまりに会場が広いのでベロタクシーで移動
日本循環器学会1日目、新規抗凝固薬の2つのセッション報告#nichijun_a0119856_06948.jpg

by dobashinaika | 2012-03-17 00:07 | 抗凝固療法:全般 | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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