HAS-BLEDスコアは出血だけでなく心血管イベントの予測にも有用
Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology 2月7日オンライン版より
Relation of the Has-Bled Bleeding Risk Score to Major Bleeding, Cardiovascular Events and Mortality in Anticoagulated Patients with Atrial Fibrillation
HAS-BLEDスコアが、出血リスクのみならず心血管イベントをも予測しうるか否かに関する研究
P:少なくとも6ヶ月、安定して抗凝固療法(INR2.0-3.0)を施行した永続性または発作性心房細動連続965例
E/C:HAS-BLEDスコアによる層別化
O:出血エピソード、心血管イベント、死亡率:Cox regessionモデルを用いて
結果:
1)平均HAS-BLEDスコア2点(0-6点、3点以上29%)。平均追跡期間861日
2)大出血の独立予測因子:75歳以上(ハザード比1.74、(1.05-2.87); p=0.030)、女性(HR: 1.70 (1.03-2.80); p=0.036)、腎障害[HR 2.12 (1.20-3.73); 0.010]、出血の既往 [HR 6.00 (3.73-9.67); p<0.001]、最近のアルコール多飲 [HR 2.28 (1.03- 5.06); p=0.043]、悪性疾患合併 [HR 2.17 (1.13- 4.18); p=0.020]
3)心血管イベントの独立予測因子:75歳超[HR 2.20 (1.40-3.46); p=0.001]、心不全 [HR 1.78 (1.20-2.86); p=0.001]、脳梗塞の既往 [HR 1.85 (1.20-2.86); p<0.001]
4)HAS-BLEDスコアは大出血 [HR 2.04 (1.68- 2.49); p<0.001]、心血管イベント [HR 1.51 (1.27-1.81); p<0.001]それぞれに高い予測性を示す
5)出血、心血管イベントともHAS=BLEDスコア上昇と共に増加
6)HAS-BLEDスコア3点を上回ると出血イベントが塞栓イベントを上回る
[HR 1.68 (1.40-2.01); p<0.001]7)HAS-BLEDスコアはすべての死亡率を予測し得た
結論:HAS-BLEDスコアは出血リスクだけでなく、心血管イベントや死亡率の予測にも有用。にも関わらずHAS-BLEDスコアそれ自体は塞栓症よりも出血リスクの予測スコアとしてデザインされている。心血管イベントや死亡率の予測にも適応されるべき。
###HAS-BLEDスコアの中身を確認しましょう。高血圧(H)、肝腎障害(A)、脳卒中(S)、出血既往(B)、INR不安定(L)、65歳超(E)、抗血小板薬/NSAIDSまたはアルコール依存(D)です。
INR不安定を除き、ほぼ全て動脈硬化の危険因子であることがわかります。CHADS2スコアでも同じような研究が、多数報告されています。なぜでしょうか?お察しのように結局、塞栓症、出血、心血管イベントは3つとも”動脈硬化”という同じ病態を別の角度から見たにすぎないからです。
あたかも興福寺の阿修羅像を3つの面それぞれから眺めたの如くです。我々が困らせるのは、それぞれの面をなだめすかしたいのにもかかわらず、抗凝固薬で介入した場合、「塞栓面」はなだめられても「出血面」を反対に怒らせるというジレンマです。その上ダビガトランなどはもうひとつの相である「心血管イベント面」に火をつけることも懸念されています。
この3面にそれぞれ機嫌をとってうまくなだめすかす方法を考えねばなりません。本論文から行くとHAS-BLED3点あたりが、その隙間ギリギリかもしれません。
HAS-BLEDスコアの確認はこちら
HAS-BLED スコア発祥の元論文はこちら
http://content.onlinejacc.org/cgi/content/abstract/57/2/173
余談;興福寺の阿修羅像は、今でこそすごい人気ですが、私が仏像マニアとして京都奈良を足しげく訪れた中学時代(30年以上前!)は、興福寺の国宝館など今では考えられないほどおんぼろで、阿修羅像は単なるガラスケースに康弁の竜灯鬼像(私のお気に入り)などの脇に無造作に置かれていました。これだけブレークするとは想像もつきませんでした。国宝館には阿修羅以外にも味わいある仏像がたくさんいるんだけどなあ。。
Relation of the Has-Bled Bleeding Risk Score to Major Bleeding, Cardiovascular Events and Mortality in Anticoagulated Patients with Atrial Fibrillation
HAS-BLEDスコアが、出血リスクのみならず心血管イベントをも予測しうるか否かに関する研究
P:少なくとも6ヶ月、安定して抗凝固療法(INR2.0-3.0)を施行した永続性または発作性心房細動連続965例
E/C:HAS-BLEDスコアによる層別化
O:出血エピソード、心血管イベント、死亡率:Cox regessionモデルを用いて
結果:
1)平均HAS-BLEDスコア2点(0-6点、3点以上29%)。平均追跡期間861日
2)大出血の独立予測因子:75歳以上(ハザード比1.74、(1.05-2.87); p=0.030)、女性(HR: 1.70 (1.03-2.80); p=0.036)、腎障害[HR 2.12 (1.20-3.73); 0.010]、出血の既往 [HR 6.00 (3.73-9.67); p<0.001]、最近のアルコール多飲 [HR 2.28 (1.03- 5.06); p=0.043]、悪性疾患合併 [HR 2.17 (1.13- 4.18); p=0.020]
3)心血管イベントの独立予測因子:75歳超[HR 2.20 (1.40-3.46); p=0.001]、心不全 [HR 1.78 (1.20-2.86); p=0.001]、脳梗塞の既往 [HR 1.85 (1.20-2.86); p<0.001]
4)HAS-BLEDスコアは大出血 [HR 2.04 (1.68- 2.49); p<0.001]、心血管イベント [HR 1.51 (1.27-1.81); p<0.001]それぞれに高い予測性を示す
5)出血、心血管イベントともHAS=BLEDスコア上昇と共に増加
6)HAS-BLEDスコア3点を上回ると出血イベントが塞栓イベントを上回る
[HR 1.68 (1.40-2.01); p<0.001]7)HAS-BLEDスコアはすべての死亡率を予測し得た
結論:HAS-BLEDスコアは出血リスクだけでなく、心血管イベントや死亡率の予測にも有用。にも関わらずHAS-BLEDスコアそれ自体は塞栓症よりも出血リスクの予測スコアとしてデザインされている。心血管イベントや死亡率の予測にも適応されるべき。
###HAS-BLEDスコアの中身を確認しましょう。高血圧(H)、肝腎障害(A)、脳卒中(S)、出血既往(B)、INR不安定(L)、65歳超(E)、抗血小板薬/NSAIDSまたはアルコール依存(D)です。
INR不安定を除き、ほぼ全て動脈硬化の危険因子であることがわかります。CHADS2スコアでも同じような研究が、多数報告されています。なぜでしょうか?お察しのように結局、塞栓症、出血、心血管イベントは3つとも”動脈硬化”という同じ病態を別の角度から見たにすぎないからです。
あたかも興福寺の阿修羅像を3つの面それぞれから眺めたの如くです。我々が困らせるのは、それぞれの面をなだめすかしたいのにもかかわらず、抗凝固薬で介入した場合、「塞栓面」はなだめられても「出血面」を反対に怒らせるというジレンマです。その上ダビガトランなどはもうひとつの相である「心血管イベント面」に火をつけることも懸念されています。
この3面にそれぞれ機嫌をとってうまくなだめすかす方法を考えねばなりません。本論文から行くとHAS-BLED3点あたりが、その隙間ギリギリかもしれません。
HAS-BLEDスコアの確認はこちら
HAS-BLED スコア発祥の元論文はこちら
http://content.onlinejacc.org/cgi/content/abstract/57/2/173
余談;興福寺の阿修羅像は、今でこそすごい人気ですが、私が仏像マニアとして京都奈良を足しげく訪れた中学時代(30年以上前!)は、興福寺の国宝館など今では考えられないほどおんぼろで、阿修羅像は単なるガラスケースに康弁の竜灯鬼像(私のお気に入り)などの脇に無造作に置かれていました。これだけブレークするとは想像もつきませんでした。国宝館には阿修羅以外にも味わいある仏像がたくさんいるんだけどなあ。。
by dobashinaika
| 2012-02-15 22:34
| 抗凝固療法:適応、スコア評価
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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