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心房細動と血圧管理についてまとめてみました。

本日は仙台市内の開業医が、common diseaseについて学ぶ会「プライマリケア ストラテジ−ミーティング」に演者として出席させていただきました。
演題名は「心房細動における血圧管理の重要性 〜リスクマネジメントとしての心房細動治療〜」です。

講演の骨子を以下にまとめました。

1.心房細動発症と血圧管理
・高血圧は心房細動のリスクとして最もポピュラー。そのハザード比は1.5倍

・心房細動の開始は肺静脈ファイアリング、維持には構造的、電気的リモデリングが関係しそのベースに血圧上昇による左室拡張末期圧、左房圧の上昇とそれに伴う左房壁のストレッチがある

・上記いずれの段階にもアンジオテンシンIIが促進因子として絡む

・各種post hoc解析においてARBの心房細動抑制効果が示されてきた

・しかしJ-RHYTHM II, ANTIPAF, GISSI-AF, ACTIVE-Iの4大前向き試験でARBの心房細動新規発症、および慢性化阻止効果は示されなかった

・現時点では心房細動抑制に特異的な降圧薬はなく、血圧を下げるほど抑制できると考えるべきである

2.心原性塞栓と血圧管理
・高血圧だけのCHADS2スコア1点の人に抗凝固療法をすべきか(CHADS2-1点問題)、血圧管理良好な人に抗凝固療法をすべきか(血圧良好問題)は抗凝固療法勉強会の2大FAQである

・血栓形成の原理であるVirchow's triadから考えると、左房内血流、凝固能、左房心内膜障害度をスコアリングすることが、原理的には厳密な血栓形成予測となりうるはず。しかし現実にはこれらのうちどのパラメーターを選んで、そのようなカットオフ値でスコアリングするかの措定はきわめて難しい。しかもそれらをプライマリケア医に普及させるのは無理。

・CHADS2スコアで評価したら、結果的に血栓塞栓症予測能がよかったというにすぎない。しかし簡便性にすぐれており、現時点ではチャンピオン指標であることでコンセンサスはえられている

・CHADS2スコアの元論文を見ると、血圧の既往あり(治療中でも)だけで血栓症リスクの上昇が認められるので、とにかく高血圧なら1点とされている

・現時点ではできるだけCHADS2 1点の人でも抗凝固療法をしたい。それには良好な血圧管理とワーファリンコントロールが必要

・具体的は収縮期血圧140未満、できれば130/81以下に下げたい(SPORTIFIIIあるいはBAT研究などから)
・適切な適応であればダビガトランはCHADS2スコア1点の人に十分使える

3.まとめ
・心房細動、血圧と切り離してみるのでなく、心房細動のリスク因子の一つとしての高血圧(他にもリスクあるよという意味で)、逆に心筋梗塞、脳梗塞、その他動脈硬化疾患等多くの疾患のリスク因子としての高血圧という視点で捉えるべき
・抗凝固療法はリスクとベネフィットのバランスで考える。その際、修飾因子として、患者、医師相互のリスクの捉え方、および心理社会的因子も加味して考える必要がある。

一つのことをまとめるといろいろなことがわかってきます。今回上記以外にも心房細動診療を考える上で、様々なことに気がつきました。今後さらにまとめて行きたいと思います。
by dobashinaika | 2011-12-07 00:15 | 心房細動:リアルワールドデータ | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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