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脳梗塞、脳出血合併心房細動例は非合併例に比べワーファリン調節がうまくいっていない

Thrombosis Research 9月19日オンライン版より

Quality of individual INR control and the risk of stroke and bleeding events in atrial fibrillation patients: A nested case control analysis of the ACTIVE W study

INRのコントロールの質が脳梗塞や脳出血にどう関係するかに関する、ACTIVE W 試験の対象を用いての症例対照研究

・ACTIVEーW試験での脳梗塞32例と脳出血234例に対し、各4倍の対象例をマッチングさせ症例対照研究を行った

・追跡期間:脳梗塞257日、脳出血222日

・TTRは脳梗塞群vs. コントロール=53.9%±25.1 vs 63.4%±24.8; p=0.055、脳出血群vs. コントロール=56.2%±25.4 vs 63.4%±26.8; p<0.001でイベント発生群の方が低い

・脳梗塞群におけるINR目標以下期間および脳出血群における目標以上期間は、期間全体ではなくそのイベントに先行する1ヶ月においてのみより長かった

・むしろ期間全体を通して、出血例ではコントロールより目標以下期間が長かった(26.8%±25.9 vs 20.8%±24.0; p=0.001)

結論:ACTIVE-W試験において背景をマッチングさせた対照群に比べ、脳梗塞例、脳出血例ではTTRは低かった。INRを高からず低からずTTRを高値に保つことが脳梗塞、脳出血予防への適切なゴールである。

###同じACTIVE-Wでは2008年のサブ解析でTTRを65%で区切った場合、65%以下では抗血小板薬と同等の効果しかないことが示されています。今回はケースコントロールの形でTT高値キープの重要性が示されています。
TTR高値キープのためにはきめ細やかなワーファリン調節が必要となります。私自身としては、原則としてINRが2.6(70歳未満は3.0)を上回ったときは0.5mg減、1.6(70歳未満は2.0)を下回ったときは0.25mg増とし、増減の次の回はできれば2週間後来院(特に上回った場合)という自分なりのやり方を決めています。0.25にするか0.5にするかは基準値からの逸脱度やその人の過去のINRの増減から推測して決めます。ただしなかなかこううまい具合に調節できないのも事実です。
しかしながら、この辺りの増減のこつが、ワーファリンによる抗凝固療法の醍醐味とも思います。
それと、日本の医療施設でINRが低い報告が時に出ますが、70歳以上の1.6~2.6が医師の頭から離れない、または70歳未満でもこの範囲と決めている医師が多いからと思われます。
by dobashinaika | 2011-09-22 23:32 | 抗凝固療法:ワーファリン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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