臨床家にワーファリン処方を躊躇させる規定因子とは?
心房細動の抗凝固療法に関する臨床家の意思決定に何が関与するのかに関するシステマティックレビューです。
Attitudes of physicians regarding anticoagulation for atrial fibrillation: a systematic review
これによると臨床家に影響を与える因子(ワーファリン処方を躊躇させる因子)として高齢、出血リスク上昇、出血の既往、転倒リスク、合併症や治療へのコンプライアンスが挙げられています。
一方,先に示された日本の循環器専門医を対象としたJ-RHYTHM Registryでは発作性心房細動であること、および抗血小板薬使用がワーファリン非処方で有意に多かったことが示されました。
国立病院機構九州医療センターの矢坂正弘先生は以下の論文の中で、
1)発作性心房細動は、塞栓症リスクは永続性と同じと言われているが、実際には発作の回数や持続時間による際についての検討が示されていないことが問題
2)抗血小板薬により予防できるのは非心原性塞栓であって、心原性脳梗塞は予防できない
ことを強調されています。
Attitudes of physicians regarding anticoagulation for atrial fibrillation: a systematic review
非常に重要な指摘であり、今後われわれが抗凝固療法を積極的に勧めて行く上で参照すべきポイントと思われます。
私としては、抗血小板薬使用はワーファリンを回避した後の結果であるので、それならなぜ抗血小板薬を処方しているのかの臨床家の深層心理まで考えたくなります(これまでも何度も触れたかもしれませんが)。
以前仙台市内のプライマリケア医(非心臓専門)の先生30名にアンケート調査したところ、ガイドライン上ワーファリン適応例にも関わらずアスピリンを使ってしまう理由として、1位は「出血がこわいから」、2位が「INR管理が面倒または不慣れ」3位「食事制限」が挙げられていました。
想定症例がCHADS2スコア2点以上なので、それだからといってアスピリンを処方する/ワーファリンを処方しない理由にはならないのですが、専門医よりもワーファリン使用に慣れていないPC医は、出血リスクをより怖がるのは事実と思われます。新規抗凝固薬が一挙にその問題を解決に導くのでかもしれません。
そうした問題が新規抗凝固薬で解決方向に向くのとは別に「発作性問題」は厄介かもしれません。1回しか記録されていない発作性心房細動をどう評価するか。われわれはどうしても診察時に洞調律だと、大丈夫と思ってしまいがちです。診察時の時間など、患者さんの生活の中では本の一握りの時間なのにもかかわらずです。
一つのアイディアとしては、携帯心電計をもっと積極的に使うことがあるかもしれません。
こうした研究がさらに出てくるのを期待したいです。
Attitudes of physicians regarding anticoagulation for atrial fibrillation: a systematic review
これによると臨床家に影響を与える因子(ワーファリン処方を躊躇させる因子)として高齢、出血リスク上昇、出血の既往、転倒リスク、合併症や治療へのコンプライアンスが挙げられています。
一方,先に示された日本の循環器専門医を対象としたJ-RHYTHM Registryでは発作性心房細動であること、および抗血小板薬使用がワーファリン非処方で有意に多かったことが示されました。
国立病院機構九州医療センターの矢坂正弘先生は以下の論文の中で、
1)発作性心房細動は、塞栓症リスクは永続性と同じと言われているが、実際には発作の回数や持続時間による際についての検討が示されていないことが問題
2)抗血小板薬により予防できるのは非心原性塞栓であって、心原性脳梗塞は予防できない
ことを強調されています。
Attitudes of physicians regarding anticoagulation for atrial fibrillation: a systematic review
非常に重要な指摘であり、今後われわれが抗凝固療法を積極的に勧めて行く上で参照すべきポイントと思われます。
私としては、抗血小板薬使用はワーファリンを回避した後の結果であるので、それならなぜ抗血小板薬を処方しているのかの臨床家の深層心理まで考えたくなります(これまでも何度も触れたかもしれませんが)。
以前仙台市内のプライマリケア医(非心臓専門)の先生30名にアンケート調査したところ、ガイドライン上ワーファリン適応例にも関わらずアスピリンを使ってしまう理由として、1位は「出血がこわいから」、2位が「INR管理が面倒または不慣れ」3位「食事制限」が挙げられていました。
想定症例がCHADS2スコア2点以上なので、それだからといってアスピリンを処方する/ワーファリンを処方しない理由にはならないのですが、専門医よりもワーファリン使用に慣れていないPC医は、出血リスクをより怖がるのは事実と思われます。新規抗凝固薬が一挙にその問題を解決に導くのでかもしれません。
そうした問題が新規抗凝固薬で解決方向に向くのとは別に「発作性問題」は厄介かもしれません。1回しか記録されていない発作性心房細動をどう評価するか。われわれはどうしても診察時に洞調律だと、大丈夫と思ってしまいがちです。診察時の時間など、患者さんの生活の中では本の一握りの時間なのにもかかわらずです。
一つのアイディアとしては、携帯心電計をもっと積極的に使うことがあるかもしれません。
こうした研究がさらに出てくるのを期待したいです。
by dobashinaika
| 2011-09-10 23:00
| 抗凝固療法:リアルワールド
|
Comments(0)
土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
カテゴリ
全体インフォメーション
医者が患者になった時
患者さん向けパンフレット
心房細動診療:根本原理
心房細動:重要論文リンク集
心房細動:疫学・リスク因子
心房細動:診断
抗凝固療法:全般
抗凝固療法:リアルワールドデータ
抗凝固療法:凝固系基礎知識
抗凝固療法:ガイドライン
抗凝固療法:各スコア一覧
抗凝固療法:抜歯、内視鏡、手術
抗凝固療法:適応、スコア評価
抗凝固療法:比較、使い分け
抗凝固療法:中和方法
抗凝固療法:抗血小板薬併用
脳卒中後
抗凝固療法:患者さん用パンフ
抗凝固療法:ワーファリン
抗凝固療法:ダビガトラン
抗凝固療法:リバーロキサバン
抗凝固療法:アピキサバン
抗凝固療法:エドキサバン
心房細動:アブレーション
心房細動:左心耳デバイス
心房細動:ダウンストリーム治療
心房細動:アップストリーム治療
心室性不整脈
Brugada症候群
心臓突然死
不整脈全般
リスク/意思決定
医療の問題
EBM
開業医生活
心理社会学的アプローチ
土橋内科医院
土橋通り界隈
開業医の勉強
感染症
音楽、美術など
虚血性心疾患
内分泌・甲状腺
循環器疾患その他
土橋EBM教室
寺子屋勉強会
ペースメーカー友の会
新型インフルエンザ
3.11
Covid-19
未分類
タグ
日本人(44)ケアネット(40)
どばし健康カフェ(35)
高齢者(31)
リバーロキサバン(28)
リアルワールド(28)
新規抗凝固薬(25)
ダビガトラン(24)
ガイドライン(24)
アドヒアランス(23)
ワルファリン(21)
CHA2DS2-VAScスコア(21)
共病記(20)
ESC(19)
カテーテルアブレーション(18)
心不全(18)
認知症(14)
無症候性心房細動(14)
頭蓋内出血(13)
消化管出血(13)
ブログパーツ
ライフログ
著作
プライマリ・ケア医のための心房細動入門 全面改訂版
編集
最近読んだ本
最新の記事
ライフスタイルを重視した新し.. |
at 2023-11-06 21:31 |
入院中に心房細動が初めて記録.. |
at 2023-11-05 11:14 |
フレイル高齢心房細動患者では.. |
at 2023-08-30 22:39 |
左心耳閉鎖術に関するコンセン.. |
at 2023-06-10 07:29 |
患者ー医療者間の「心房細動体.. |
at 2023-04-26 07:27 |
心房細動における認知症の評価.. |
at 2023-04-20 07:29 |
AIによる心房細動の診断と発.. |
at 2023-04-14 07:30 |
心房細動診療の新しい"ABC.. |
at 2023-04-10 05:00 |
心房細動早期発見の現状と課題.. |
at 2023-04-09 10:58 |
高齢者へのDOAC。本当に減.. |
at 2023-03-23 19:12 |
検索
記事ランキング
最新のコメント
血栓の生成過程が理解でき.. |
by 河田 at 10:08 |
コメントありがとうござい.. |
by dobashinaika at 06:41 |
突然のコメント失礼致しま.. |
by シマダ at 21:13 |
小田倉先生、はじめまして.. |
by 出口 智基 at 17:11 |
ワーファリンについてのブ.. |
by さすけ at 23:46 |
いつもブログ拝見しており.. |
by さすらい at 16:25 |
いつもブログ拝見しており.. |
by さすらい at 16:25 |
取り上げていただきありが.. |
by 大塚俊哉 at 09:53 |
> 11さん ありがと.. |
by dobashinaika at 03:12 |
「とつぜんし」が・・・・.. |
by 11 at 07:29 |
以前の記事
2023年 11月2023年 08月
2023年 06月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 03月
2007年 03月
2006年 03月
2005年 08月
2005年 02月
2005年 01月