プロトロンビン複合体製剤はダビガトランよりもリバロキサバンの中和に有効の可能性:Circulationより
Circulation 9月6日オンライン版より
Reversal of Rivaroxaban and Dabigatran by Prothrombin Complex ConcentrateA Randomized, Placebo-Controlled, Crossover Study in Healthy Subjects
健常男性対象、プロトロンビン複合体製剤の新規抗凝固薬中和の有効性に関する無作為割り付けクロスオーバー試験
P:12人の健康男性ボランティア
E:リバロキサバン20mg1日2回(n=6)あるいはダビガトラン150mg1日2回(n=6)を2.5日間服用後にプロトロンビン複合体製剤(Cofact)
50IU/kg単回静注。上記2薬の投与は一定ウォシュアウト後に同一人で繰り返し交互に施行された。
C:上記リバロキサバンあるいはダビガトラン服用後同用量の生理食塩水静注
O:プロトロンビン時間、内因性トロンビン産生能endogenous thrombin potential、APTT、ECT、トロンビン時間
結果:
1)リバロキサバンはプロトロンビン時間をベースライン時より有意に延長(15.8±1.3 versus 12.3±0.7 秒; P<0.001)させ、プロトロンビン複合体により速やかに回復された(12.8±1.0; P<0.001)
2)リバロキサバンは内因性トロンビン産生能を ベースライン時より有意に抑制(51±22% versus 92±22%; P=0.002)させ、プロトロンビン複合体により回復された(114±26%; P<0.001)
3)ダビガトランはAPTT、ECT、トロンビン時間を延長させたが、プロトロンビン複合体の投与ではこれらの時間は改善されなかった
結論:プロトロンビン複合体製剤は,健康人においてリバロキサバンの抗凝固効果を迅速かつ完全に阻止した。しかしダビガトランの抗凝固効果は阻止し得なかった。
###大変興味深い知見です。ワーファリンの中和時においてもビタミンKのみでは迅速さに欠けますので、第IX因子複合体製剤(クリスマシン)の併用が用いられることがあります。プロトロンビン複合体製剤は第IX因子を含み活性型第IX因子は第X因子から活性型(Xa)への生成に関与しますので、X阻害薬の効き過ぎの場合よりXa阻害薬の効き過ぎの場合の方の中和に適しているのだと推測します(間違っていたらすみません)。たった12例の第1相試験(と思われる)でもCirculationに掲載される価値がある、タイムリーな論文だと思います。
Reversal of Rivaroxaban and Dabigatran by Prothrombin Complex ConcentrateA Randomized, Placebo-Controlled, Crossover Study in Healthy Subjects
健常男性対象、プロトロンビン複合体製剤の新規抗凝固薬中和の有効性に関する無作為割り付けクロスオーバー試験
P:12人の健康男性ボランティア
E:リバロキサバン20mg1日2回(n=6)あるいはダビガトラン150mg1日2回(n=6)を2.5日間服用後にプロトロンビン複合体製剤(Cofact)
50IU/kg単回静注。上記2薬の投与は一定ウォシュアウト後に同一人で繰り返し交互に施行された。
C:上記リバロキサバンあるいはダビガトラン服用後同用量の生理食塩水静注
O:プロトロンビン時間、内因性トロンビン産生能endogenous thrombin potential、APTT、ECT、トロンビン時間
結果:
1)リバロキサバンはプロトロンビン時間をベースライン時より有意に延長(15.8±1.3 versus 12.3±0.7 秒; P<0.001)させ、プロトロンビン複合体により速やかに回復された(12.8±1.0; P<0.001)
2)リバロキサバンは内因性トロンビン産生能を ベースライン時より有意に抑制(51±22% versus 92±22%; P=0.002)させ、プロトロンビン複合体により回復された(114±26%; P<0.001)
3)ダビガトランはAPTT、ECT、トロンビン時間を延長させたが、プロトロンビン複合体の投与ではこれらの時間は改善されなかった
結論:プロトロンビン複合体製剤は,健康人においてリバロキサバンの抗凝固効果を迅速かつ完全に阻止した。しかしダビガトランの抗凝固効果は阻止し得なかった。
###大変興味深い知見です。ワーファリンの中和時においてもビタミンKのみでは迅速さに欠けますので、第IX因子複合体製剤(クリスマシン)の併用が用いられることがあります。プロトロンビン複合体製剤は第IX因子を含み活性型第IX因子は第X因子から活性型(Xa)への生成に関与しますので、X阻害薬の効き過ぎの場合よりXa阻害薬の効き過ぎの場合の方の中和に適しているのだと推測します(間違っていたらすみません)。たった12例の第1相試験(と思われる)でもCirculationに掲載される価値がある、タイムリーな論文だと思います。
by dobashinaika
| 2011-09-08 21:23
| 抗凝固療法:中和方法
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
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●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
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