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心房細動抗凝固療法のガイドラインをアメリカ、カナダ,ヨーロッパ、そして日本で比較してみました、

Europace 6月28日号より

Management of atrial fibrillation around the world: a comparison of current ACCF/AHA/HRS, CCS, and ESC guidelines

アメリカ(ACCF/AHA/HRS)カナダ(CCS)ヨーロッパ(ESC)の心房細動マネジメントガイドラインの比較に関するレビューです。以前から気になっていたので、全文を入手し、読んでみました。
抗凝固療法のところだけ、抜粋してまとめてみます。

[脳梗塞/脳出血のリスク層別化]
・覚えやすく、評価しやすいので3ガイドラインともCHADS2スコアを推奨している
・低リスク、高リスク層の推奨度はどれも明確だが、中リスク層に関しては不明確:女性、65~74歳の扱いなどで違いあり
・ESCはCHA2DS2-Vascスコアを採用している。これは65-74歳、女性、血管疾患を危険因子としているが、腎機能低下は入っていない

・出血リスクについては、高齢者や抗血小板薬併用の心血管疾患合併例では特に重要だが、ACCF/AHA/HRSではあまり深く論議されていないのに対しCCS,ESCでは重要視されている。後2者においてはHAS-BLEDスコアが採用されている。冠動脈ステント例では特に留意すべきと思われる。

[脳梗塞予防]
・2006ACCF/AHA/HRDはCHADS2スコア2点以上に抗凝固療法,1点にはアスピリンまたは抗凝固。これに対しCCS,ESCは1点以上で抗凝固
・ESCは65歳未満で危険因子は無くてもアスピリンを推奨
・CCS,ESCは特に低リスク(CHA2DS2-VAScスコア0)においてはまったく抗凝固なしも可
・ESCは他の2つよりより多くの患者(例えば65−74歳)に抗凝固療法を推奨

<ダビガトランについて>
・CCSのみ、ダビガトランをワーファリンに代わって明確に推奨している:冠動脈イベント高リスク例以外では150mgダビガトランはワーファリンを上回るとしている

・対照的にESCでは、2011年後半にダビガトランが認可されることを想定して作成されている。
・低出血リスク(HAS-BLED0-2):ワーファリンの代わりとしてダビガトラン150mgが「考慮できるかもしれない」
・高出血リスク(HAS-BLED3点以上):ダビガトラン110mgが「考慮されるかもしれない」
・(脳梗塞の危険因子)1つだけの人はダビガトラン110mgの候補者であると期待される

・ACCF/AHA/HRSガイドラインが最初に出された時はFDAのダビガトランの認可は下りていなかった。認可は2010年10月におりてガイドラインは2011年2月にアップデートされた
・ダビガトランはワーファリンの「有効な代用薬」とされている。
・人工弁、重症弁膜症、重症腎不全、進行した肝臓病はダビガトラン適用から除外
・INRの安定している患者では、1日2回であることや出血以外の副作用が増えることからダビガトランへのスイッチの利益はない、と明確に述べられている。;このことは臨床医にとっては大変重要

・ワーファリン不適合患者にはACCF/AHA/HRS、ESCともにアスピリン、クロピドグレルの併用を勧めている(クラスIIb、レベルB)
・ACTIVE A スタディによるが、脳塞栓予防はワーファリンに劣り、出血は同等である。
・このような人がどれだけいるのか?CCSで述べられているようにこのような人はダビガトランがよい。

<抗凝固療法と抗血小板療法との併用について>
・ACCF/AHA/HRSでは、抗凝固薬、バイアスピリン、クロピドグレルの3者併用は一般的に勧められないとしている
・対照的にESCでは、投与期間とステントの種類に寄って限定的に推奨している。
・CCSでは高リスクの急性冠症候群に限って推奨している。

<周術期の使用>
・ACCF/AHA/HRSでは、人工弁と高リスク例を除いて1週間の休薬を推奨(クラスIIa、レベルC)
・ESCではワーファリンは5日休止し、ヘパリンなし期間48時間まで許容としている(クラスIIa、レベルC)
・48時間と言うのはあまりに厳しく、なかにはオーバーユーズの例も出るかもしれない。
・CCSでは、CHADS2スコア2点未満では、術前5日、術後1日はワーファリンなし、ヘパリンなしを許容している
・ACCF/AHA/HRSの限定アップデートではこの点に関してコメントしていない

###3つのガイドラインは細かい点で微妙にニュアンスが違います。
日本のガイドラインこちらから見られますが、先日ステートメントが出て限定的に改訂されています。
・CHADS2スコア2点以上はダビガトラン、ワーファリンとも推奨レベルI、1点はダビガトランレベルI、ワーファリンIIa
・アスピリンは服薬コンプライアンスがよいのに塞栓症を発症した場合、非塞栓性脳梗塞/TIAの既往、虚血性心疾患、ステント例の時にのみ考慮
・術前3〜5日前のサーファリン休薬とヘパリンへの変更。ダビガトランでは24時間前までの中止、および高リスク例での2日前までの中止を勧めている

CHADS2スコア1点の人の扱いをもう一度まとめます。
ACCF/AHA/HRS:ダビガトラン/ワーファリンまたはアスピリン
CCS:ダビガトラン/ワーファリンまたはアスピリンだがダビガトランがよりよい
ESC:CHA2DS2-VASc1点でダビガトラン/ワーファリンまたはアスピリン。ワーファリン/ダビガトランがよりよい
日本:ダビガトラン(推奨クラスI)、ワーファリン(クラスIIa)、アスピリン(クラスIII)
こう見ると意外なことにCHADS2スコア1点については日本とカナダがはっきりワーファリンよりダビガトランを優位に位置づけているようです。アメリカはINRコントロールが良ければ変えなくてよいと言っているし、ヨーロッパもワーファリンよりもよいとは言っていないのです。日本はこの点でアメリカ、ヨーロッパより先行していると考えてよいのでしょうか?
by dobashinaika | 2011-08-28 23:17 | 抗凝固療法:ガイドライン | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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