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日本の心房細動患者においてワーファリン処方とINRレベルを規定する因子:J-RHYTHMレジストリーサブ解析

Circulation Journal 7月27日早期公開版より

Determinants of Warfarin Use and International Normalized
Ratio Levels in Atrial Fibrillation Patients in Japan
– Subanalysis of the J-RHYTHM Registry –


日本における心房細動患者のワーファリン利用とINRレベルを規定する因子に関するJ-RHYTHMレジストリーのサブ解析

・6324名のCHADS2スコア1点以上の非弁膜症性心房細動の人におけるワーファリンが使用されるうえでの規定因子につき検討
・6932名のワーファリン服用中患者では、INRの規定因子につき検討(70歳以上は目標INR1.6-2.6、70歳未満は2.0-3.0)

・永続性心房細動、心不全、脳卒中/TIA、CHADS2スコア高得点は、ワーフリン服用者で非服用者より多く認められた
・ワーファリン使用を規定する因子としては60歳以上、持続性または永続性、心不全、糖尿病、脳卒中/TIAであった
・抗血小板薬を使用していることはワーファリン使用の負の規定因子であった(抗血小板薬服用者は非服用者よりワーファリン使用が少ない)
・ワーファリン服用者の53%しか至適INRに達していなかった
・至適INR(対低レベルINR)の規定因子(多く見られる場合)は60歳以上、持続性、高血圧、脳卒中/TIAであった
・抗血小板薬使用は至適INR維持の負の規定因子だった

結論:今の日本では、ガイドラインに沿った抗凝固療法に対するアドヒアランスは限定的である

###CHADS2スコア1点以上の人でも88.8%にワーファリンが投与されているのは、専門医集団対象の登録研究ではあることを勘案してもかなり高投与率と思われます。
ただ細かく表を見ると、ワーファリンが使われていない人に55.5%に未だにアスピリンは使われていたり、CHADS2スコア2点以上でも300人以上の人はワーファリンなし(4点以上の人も52人いる!)だったりします。循環器専門医にあって、この人たちはどういう理由でそうなのか、ぜひ知りたいです。

驚くべきなのは至適INRの表において、ガイドライン推奨レベルよりINRが低人が全体の42%にも及んでいる点です。登録時のみのワンポイントデータではありますが、専門医にしてこの低達成率!原因は70歳以上がINRを1.6〜2.6であることは明らかです。低レベルINRの人の74%は74歳以下です。INRが2.6とか2.8になると、たとえ60歳代でもワーファリンを減らすことは、日常的に循環器専門医の間でも行われていることの反映だと思います。これはぜひアウトカムを知りたいところです。つまり70歳未満でも1.6-2.6のつもりでコントロールしている医療機関(あるいは医師)と、2.0−3.0のつもりでコントロールしているところの塞栓率の比較です。当院では全く根拠はありませんが、やはり2.8くらいだと70歳未満でもワーファリンは減量することが多いと思います。日本人は一律に1.6−2.6でもネットベネフィットは良好のような気もします。

最後に余計な一言。そろそろ研究呼称にJ-をつけるとか、論文名に"in Japan"とつけるのはおしまいにしたいなあ。まあこの論文は日本の低INRレベルの特殊性が言いたいのだからしょうがないですけど
by dobashinaika | 2011-08-04 23:35 | 抗凝固療法:リアルワールド | Comments(0)


土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。


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