3.11後、同時改定前のこの時期の日本プライマリケア連合学会参加記 #PCconf2011
皆様には休診などで大変ご迷惑をおかけいたしましたが、札幌で開催された日本プライマリケア連合学会に出席して参りました。文字通り日本のプライマリケアに関する最大の学会で、今回は1,800名の参加を数え盛況のうちに終了しました。
私は日頃、循環器系の専門医の学会によく出席しますが、この学会はそうした専門医学会とはまるで雰囲気が異なります。
まず、夏だとはいえノーネクタイ、軽装の人が非常に多い。なんとTシャツにジーパン、サンダル履きの人も発見しました。また講師のおはようございますの挨拶に大声で答える若い医師をいくつかの会場で見かけました。こんなこと専門医学会ではないことです(笑)。会長の草場先生からして1999年卒でまずかなり若いですし,デイスカッションで時間オーバーもあまり気にしない,ワークショップ形式が多いなど、大変フリーな空気が流れていたのが印象的でした。
しかしそれにも増して感じたのは、日本の医療の大きな潮流です。
猪飼周平氏の「病院の世紀の理論」にあるように、病院中心の医療は20世紀で終焉を迎え、歴史の必然として地域包括ケアへと、医療の中心が大きくパラダイムシフトしつつあります。
学会では、この時代背景に呼応するかのように、さまざまなパラダイムシフト的なキーワードが語られました。
「patient」から「person」へ、「キュア」から「ケア」へ、「問題解決型」から「解釈型へ」、「仮説検証型」から「仮説生成型」へ、「医師主導」から「多職種コラボへ」そして「病院」から「地域」へ。
こうしたコンセプトの重要性はずいぶん早くから気づかれていて、同学会が何年も前から認識し実践してきたことだと思われます。
しかし、3.11以降、医療介護報酬同時改訂前のこの時期に丁度符牒するかのように、プライマリケア医、家庭医の持つ熱気、熱いエネルギーが一定の形を持ってこれほど台頭してきたことに大変な頼もしさと、そして大きな時代のうねりを感じました。
もちろん、まだ例えば家庭医の後期研修プログラムを持っている医療機関は少ないですし(宮城県でようやく一施設で立ち上げが予定されています)、全体としてはスタートラインに立ったばかりかもしれません。既存勢力、特に医師会などとの調整といった障壁もあるでしょう。
しかしながら、3.11を経験してしまい、コミュニティーのつながりがいかに大切かを知ってしまったわれわれは、もはや地域全体を俯瞰する視点の大切さを否定することは到底できないし,そうした俯瞰的視点を持値、なおかつ個別の問題に対処できる医療者の重要性も身を以て知ったと思います。ライフラインがすべて止まったあの日々、一人暮らしの高齢者を支えたのは、ご近所の人の差し入れや民生委員さん、町内会のかたがたの支援でした。避難所では全般的問題を相談できる医療者が何より求められました。在宅患者さんやご家族は、往診のありがたさをこれほど感じられたことはないと口々におっしゃっていました。今後慢性期の地域復興で最も要求される医療リソースはプライマリケアです。
もはやこの潮流はあらがいようがありません。そうした時代の大きな潮流が、目の前にありありと立ち現れたことを北の大地で実感して参りました。
それにしても梅雨のないからっとした風が吹く北海道はよかったです。本気で住みたいと思いました。この時期だけね(笑)。
4日からまた通常診療&心房細動関連のブログ再開します。
私は日頃、循環器系の専門医の学会によく出席しますが、この学会はそうした専門医学会とはまるで雰囲気が異なります。
まず、夏だとはいえノーネクタイ、軽装の人が非常に多い。なんとTシャツにジーパン、サンダル履きの人も発見しました。また講師のおはようございますの挨拶に大声で答える若い医師をいくつかの会場で見かけました。こんなこと専門医学会ではないことです(笑)。会長の草場先生からして1999年卒でまずかなり若いですし,デイスカッションで時間オーバーもあまり気にしない,ワークショップ形式が多いなど、大変フリーな空気が流れていたのが印象的でした。
しかしそれにも増して感じたのは、日本の医療の大きな潮流です。
猪飼周平氏の「病院の世紀の理論」にあるように、病院中心の医療は20世紀で終焉を迎え、歴史の必然として地域包括ケアへと、医療の中心が大きくパラダイムシフトしつつあります。
学会では、この時代背景に呼応するかのように、さまざまなパラダイムシフト的なキーワードが語られました。
「patient」から「person」へ、「キュア」から「ケア」へ、「問題解決型」から「解釈型へ」、「仮説検証型」から「仮説生成型」へ、「医師主導」から「多職種コラボへ」そして「病院」から「地域」へ。
こうしたコンセプトの重要性はずいぶん早くから気づかれていて、同学会が何年も前から認識し実践してきたことだと思われます。
しかし、3.11以降、医療介護報酬同時改訂前のこの時期に丁度符牒するかのように、プライマリケア医、家庭医の持つ熱気、熱いエネルギーが一定の形を持ってこれほど台頭してきたことに大変な頼もしさと、そして大きな時代のうねりを感じました。
もちろん、まだ例えば家庭医の後期研修プログラムを持っている医療機関は少ないですし(宮城県でようやく一施設で立ち上げが予定されています)、全体としてはスタートラインに立ったばかりかもしれません。既存勢力、特に医師会などとの調整といった障壁もあるでしょう。
しかしながら、3.11を経験してしまい、コミュニティーのつながりがいかに大切かを知ってしまったわれわれは、もはや地域全体を俯瞰する視点の大切さを否定することは到底できないし,そうした俯瞰的視点を持値、なおかつ個別の問題に対処できる医療者の重要性も身を以て知ったと思います。ライフラインがすべて止まったあの日々、一人暮らしの高齢者を支えたのは、ご近所の人の差し入れや民生委員さん、町内会のかたがたの支援でした。避難所では全般的問題を相談できる医療者が何より求められました。在宅患者さんやご家族は、往診のありがたさをこれほど感じられたことはないと口々におっしゃっていました。今後慢性期の地域復興で最も要求される医療リソースはプライマリケアです。
もはやこの潮流はあらがいようがありません。そうした時代の大きな潮流が、目の前にありありと立ち現れたことを北の大地で実感して参りました。
それにしても梅雨のないからっとした風が吹く北海道はよかったです。本気で住みたいと思いました。この時期だけね(笑)。
4日からまた通常診療&心房細動関連のブログ再開します。
by dobashinaika
| 2011-07-04 00:31
| 開業医の勉強
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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