大腸がん検診のエビデンスに基づくリスク情報伝達がインフォームドチョイスに及ぼす効果:BMJより
BMJ 6月2日号より
Effect of evidence based risk information on “informed choice” in colorectal cancer screening: randomised controlled trial
大腸がん検診においてインフォームドチョイスをする上でエビデンスに基づくリスク情報の伝達と、従来からの標準的な情報伝達とを比較検討
P:50〜75歳の大腸がんの既往のない1577名。ドイツの公的保険内での取り組み
E:大腸がんに関するエビデンスに基づくリスクを記載したパンフレットと、オプションとしてリスクと診断に関する2つの双方向性インターネットモデュールを使った情報伝達
*伝達法はUK Medical Research Councilのフレームワークを用いた。例えばスクリーニングを受けることによる相対危険率の変化よりは、自然頻度の変化を提示した。このフォーマットはパイロットスタディを経て2008年に改訂された
C:ドイツの公的なパンフレット:2003年発行。便潜血検査と大腸スコピーーについての概説のみで数的なリスクベネフィットの情報はなし
O:一次エンドポイント:「知識」「態度」の概念を含んだ「インフォームドチョイス」*。現実的で計画的な受診の組み合わせ
二次エンドポイント:「知識」。現実的で計画的な受診の組み合わせ
知識と態度はスクリーニング6週後に評価された。現実的で計画的な受診の組み合わせ、は6ヶ月後に評価された
*Marteauらの方法による。「知識」については大腸がん検診に関する8つの質問を行い4つ以上正答の時「good knowledge」とした。「態度」については健診に対して前向きかどうかの4つの質問を行い2.5未満を「positive attitude」とした。good knowledgeかつpositive attitudeで健診を受けた時、およびgood knowledge、negative attitudeで健診を受けなかったとき「インフォームドチョイス」と定義した。「現実的で計画的な受診の組み合わせ」はドイツの長いスパンにわたるスクリーニングの時間枠(10年ごとの大腸スコピーと1,2年ごとの便検査)」に沿った検診を受診したかどうかで判断した
結果:
1)アンケート回収率:92.4%
2)「インフォームドチョイス」は介入群で44.0%(345/785)、対照群で12.8%(1014/792)だった。(difference 31.2%, 99% CI 25.7% to 36.7%; P<0.001)
3)good knowledgeは介入群59.6%、対照群16.2%(difference 43.5%, 37.8% to 49.1%; P<0.001)
4)positive attitudeは両群とも多かったが、介入群でより少なかった(93.4% (733) v 96.5% (764); difference −3.1%, −5.9% to −0.3%; P<0.01)
5)「現実的で計画的な受診の組み合わせ」については差なし(72.4% (568) v 72.9% (577); P=0.87)
結論:大腸がん検診においてエビデンスに基づくリスク情報の伝達は、「インフォームドチョイス」を増加させ「知識」を改善させたが、「態度」についてはあまり改善しなかった。現実的で計画的な受診については介入効果はなかった。
###Table 3を見ると、大腸がん検診の疫学的な質問が並んでいますので、EBM的情報を提供されている介入群で知識スコアが高いのは当然です。態度については、相対危険でなく絶対危険(自然頻度)で数字を示されていると、以前のブログで紹介した研究の通りnegativeな意思決定になりやすいことは既に指摘されています。エビデンスの伝達が検診のインセンティブに寄与しなかったのは、今回のpolulationが元々受診率が高いことも上げられますが、やはり、一般市民が思った以上にがん検診の効果が少ない(と感じられる)ことが原因ではないかと推察されます。
Table3の質問を見れば、一般市民にとっては検診のEBMは「少ない効果」「重篤な副作用(大腸スコピー)」を想起させるに十分と思われます。検診は「pupulation strategy」なのでNNTが低くても意義があることまで一般市民に理解させることは難しいのではないでしょうか?診療所や病院に通院する動脈硬化ハイリスクな人にスタチンの効果をエビデンスーベーストで伝えるのとはまた違った伝え方が必要かもしれません。
なお同じ大腸がん検診のインフォームドチョイスを扱った論文はこちら
Effect of evidence based risk information on “informed choice” in colorectal cancer screening: randomised controlled trial
大腸がん検診においてインフォームドチョイスをする上でエビデンスに基づくリスク情報の伝達と、従来からの標準的な情報伝達とを比較検討
P:50〜75歳の大腸がんの既往のない1577名。ドイツの公的保険内での取り組み
E:大腸がんに関するエビデンスに基づくリスクを記載したパンフレットと、オプションとしてリスクと診断に関する2つの双方向性インターネットモデュールを使った情報伝達
*伝達法はUK Medical Research Councilのフレームワークを用いた。例えばスクリーニングを受けることによる相対危険率の変化よりは、自然頻度の変化を提示した。このフォーマットはパイロットスタディを経て2008年に改訂された
C:ドイツの公的なパンフレット:2003年発行。便潜血検査と大腸スコピーーについての概説のみで数的なリスクベネフィットの情報はなし
O:一次エンドポイント:「知識」「態度」の概念を含んだ「インフォームドチョイス」*。現実的で計画的な受診の組み合わせ
二次エンドポイント:「知識」。現実的で計画的な受診の組み合わせ
知識と態度はスクリーニング6週後に評価された。現実的で計画的な受診の組み合わせ、は6ヶ月後に評価された
*Marteauらの方法による。「知識」については大腸がん検診に関する8つの質問を行い4つ以上正答の時「good knowledge」とした。「態度」については健診に対して前向きかどうかの4つの質問を行い2.5未満を「positive attitude」とした。good knowledgeかつpositive attitudeで健診を受けた時、およびgood knowledge、negative attitudeで健診を受けなかったとき「インフォームドチョイス」と定義した。「現実的で計画的な受診の組み合わせ」はドイツの長いスパンにわたるスクリーニングの時間枠(10年ごとの大腸スコピーと1,2年ごとの便検査)」に沿った検診を受診したかどうかで判断した
結果:
1)アンケート回収率:92.4%
2)「インフォームドチョイス」は介入群で44.0%(345/785)、対照群で12.8%(1014/792)だった。(difference 31.2%, 99% CI 25.7% to 36.7%; P<0.001)
3)good knowledgeは介入群59.6%、対照群16.2%(difference 43.5%, 37.8% to 49.1%; P<0.001)
4)positive attitudeは両群とも多かったが、介入群でより少なかった(93.4% (733) v 96.5% (764); difference −3.1%, −5.9% to −0.3%; P<0.01)
5)「現実的で計画的な受診の組み合わせ」については差なし(72.4% (568) v 72.9% (577); P=0.87)
結論:大腸がん検診においてエビデンスに基づくリスク情報の伝達は、「インフォームドチョイス」を増加させ「知識」を改善させたが、「態度」についてはあまり改善しなかった。現実的で計画的な受診については介入効果はなかった。
###Table 3を見ると、大腸がん検診の疫学的な質問が並んでいますので、EBM的情報を提供されている介入群で知識スコアが高いのは当然です。態度については、相対危険でなく絶対危険(自然頻度)で数字を示されていると、以前のブログで紹介した研究の通りnegativeな意思決定になりやすいことは既に指摘されています。エビデンスの伝達が検診のインセンティブに寄与しなかったのは、今回のpolulationが元々受診率が高いことも上げられますが、やはり、一般市民が思った以上にがん検診の効果が少ない(と感じられる)ことが原因ではないかと推察されます。
Table3の質問を見れば、一般市民にとっては検診のEBMは「少ない効果」「重篤な副作用(大腸スコピー)」を想起させるに十分と思われます。検診は「pupulation strategy」なのでNNTが低くても意義があることまで一般市民に理解させることは難しいのではないでしょうか?診療所や病院に通院する動脈硬化ハイリスクな人にスタチンの効果をエビデンスーベーストで伝えるのとはまた違った伝え方が必要かもしれません。
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by dobashinaika
| 2011-06-06 21:59
| リスク/意思決定
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
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