東北大学大学院理学系の出前講座「3.11地震と放射性物質の拡散について」を聴きました(5月19日)
昨日東北大学大学院理学研究科出前講座−3.11地震と放射性物質の拡散についてーが仙台市のフォレスト仙台で開催され,聴きに行って参りました。
多数参加者が予想されていましたが、1つの会議室では入りきれず、もう一つの大きな会議室へのモニター中継もおこなわれての大変な盛会でした。仙台市民のこの件に関する関心が非常に高いことが伺われます。質問もたくさん出ました。
演題は以下の通りです。
「2011年東北地方太平洋沖地震について」
地震・噴火予知研究観測センター 教授 松澤楊先生
「仙台に降った放射能とそのリスク」
物理学専攻 教授 田村裕和先生
「大気による放射性物質拡散」
地球物理学専攻 教授 岩崎俊樹先生
「放射性物質を含んだ水(汚染水)の海洋における拡散」
地球物理学専攻 教授 花輪公雄先生
あらゆる情報、とくに政府筋の情報の信憑性が問われていますが、その中で大学から発信される情報は比較的信頼がおけると考えます。もちろん大学から情報発信といえども様々なバイアスはかかる訳ですが、科学的データに関する限り、われわれはそのバイアスを検証することができます。検証し反証することが可能である、このことが科学的知識の特徴であり、強みであり、弱みでもあります。その意味で、昨日の講演はどれもそうした検証、反証可能性に大部分耐えうる内容であり、現時点で頼りになると考えました。
情報の中身もこれまでネット上で私が収集したことのないものが多数あり、収穫大でした。私のレポートでは誤解が生じますので、後日web公開される予定の当日のPPTを参照していただきたいのですが、各先生の講義で2、3印象に残った言葉がありましたので、備忘録のつもりで書いておきます(内容に関しては誤りもあるかも知れませんのでご注意ください)。
松澤先生講演
・ プレート境界型地震のプレートは厚さ100km、年間8cm移動する(髪の毛ののびる速度と同じ)
・ 東北地方は年間2cm横に縮んでいるが今回の震災で4m(200年分)海側に戻った
・ わからないこと:なぜM9が発生できたのか、大津波のメカニズム、内陸部誘発地震のメカニズム
・ 宮城県沖地震が今後あるか否かには、諸説あり
田村先生講演
・ 放射能はなくせない、分解できない、移動させられるだけ
・ 3号機ベントのニュースの直後から大学周辺で放射線量測定を開始した。直後は0.7μSvだったがその後急上昇し、現在まで下降している
・ リスクとベネフィットを良く考えることが大切
岩崎先生講演
・ 3月15日は低気圧が北東気流に乗って太平洋に移動し、日本の北西に前線があった。午前は関東に風が吹き、午後は北東へと変わった
・ 予測システムとしてSPEEDIは精度は高いが範囲が狭い。EER, IAEA/WMOは解像度が粗い。この中間が望ましい
・ 仙台で今後注意が必要な場合;多量の放射性物質の放出+西から低気圧が近づく+南高北低の気圧配置+雨が降る
花輪先生講演
・ 海洋シミュレーションは渦の大きさが大気より小さく多い、検証データが少ないといった理由で難しい
・ 文科省モデルとフランス、トゥールーズ大学のモデルはあわない
・ サンプリングが少なくどの程度の物質がどの速度で出たか不明な点が多い。
・ がれきは太平洋を移動し、北米大陸西海岸に到達し、4年後にはハワイ北東の太平洋に集まる予測
田村先生の測定は、私、事故後毎日参照しておりました。文科省、政府の発表以外のデータとして、個人的に最も信頼を寄せていたからです。
今後とも、私たちに信頼性のある情報を提供していただければ、仙台在住のものとして大変心強いです。
多数参加者が予想されていましたが、1つの会議室では入りきれず、もう一つの大きな会議室へのモニター中継もおこなわれての大変な盛会でした。仙台市民のこの件に関する関心が非常に高いことが伺われます。質問もたくさん出ました。
演題は以下の通りです。
「2011年東北地方太平洋沖地震について」
地震・噴火予知研究観測センター 教授 松澤楊先生
「仙台に降った放射能とそのリスク」
物理学専攻 教授 田村裕和先生
「大気による放射性物質拡散」
地球物理学専攻 教授 岩崎俊樹先生
「放射性物質を含んだ水(汚染水)の海洋における拡散」
地球物理学専攻 教授 花輪公雄先生
あらゆる情報、とくに政府筋の情報の信憑性が問われていますが、その中で大学から発信される情報は比較的信頼がおけると考えます。もちろん大学から情報発信といえども様々なバイアスはかかる訳ですが、科学的データに関する限り、われわれはそのバイアスを検証することができます。検証し反証することが可能である、このことが科学的知識の特徴であり、強みであり、弱みでもあります。その意味で、昨日の講演はどれもそうした検証、反証可能性に大部分耐えうる内容であり、現時点で頼りになると考えました。
情報の中身もこれまでネット上で私が収集したことのないものが多数あり、収穫大でした。私のレポートでは誤解が生じますので、後日web公開される予定の当日のPPTを参照していただきたいのですが、各先生の講義で2、3印象に残った言葉がありましたので、備忘録のつもりで書いておきます(内容に関しては誤りもあるかも知れませんのでご注意ください)。
松澤先生講演
・ プレート境界型地震のプレートは厚さ100km、年間8cm移動する(髪の毛ののびる速度と同じ)
・ 東北地方は年間2cm横に縮んでいるが今回の震災で4m(200年分)海側に戻った
・ わからないこと:なぜM9が発生できたのか、大津波のメカニズム、内陸部誘発地震のメカニズム
・ 宮城県沖地震が今後あるか否かには、諸説あり
田村先生講演
・ 放射能はなくせない、分解できない、移動させられるだけ
・ 3号機ベントのニュースの直後から大学周辺で放射線量測定を開始した。直後は0.7μSvだったがその後急上昇し、現在まで下降している
・ リスクとベネフィットを良く考えることが大切
岩崎先生講演
・ 3月15日は低気圧が北東気流に乗って太平洋に移動し、日本の北西に前線があった。午前は関東に風が吹き、午後は北東へと変わった
・ 予測システムとしてSPEEDIは精度は高いが範囲が狭い。EER, IAEA/WMOは解像度が粗い。この中間が望ましい
・ 仙台で今後注意が必要な場合;多量の放射性物質の放出+西から低気圧が近づく+南高北低の気圧配置+雨が降る
花輪先生講演
・ 海洋シミュレーションは渦の大きさが大気より小さく多い、検証データが少ないといった理由で難しい
・ 文科省モデルとフランス、トゥールーズ大学のモデルはあわない
・ サンプリングが少なくどの程度の物質がどの速度で出たか不明な点が多い。
・ がれきは太平洋を移動し、北米大陸西海岸に到達し、4年後にはハワイ北東の太平洋に集まる予測
田村先生の測定は、私、事故後毎日参照しておりました。文科省、政府の発表以外のデータとして、個人的に最も信頼を寄せていたからです。
今後とも、私たちに信頼性のある情報を提供していただければ、仙台在住のものとして大変心強いです。
by dobashinaika
| 2011-05-20 23:15
| 3.11
|
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土橋内科医院の院長ブログです。心房細動やプライマリ・ケアに関連する医学論文の紹介もしくは知識整理を主な目的とします。時々日頃思うこともつぶやきます。
by dobashinaika
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筆者は、2013年4月以降、ブログ内容に関連して開示すべき利益相反関係にある製薬企業はありません
●医療法人土橋内科医院
●日経メディカルオンライン連載「プライマリケア医のための心房細動入門リターンズ」
●ケアネット連載「Dr,小田倉の心房細動な日々〜ダイジェスト版〜」
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